第29話 パンさんのおうちガイド
◇◆SIDE:リパンニェル◆◇
はー、失敗した。
『狩人連れてダンジョン行くから、お前は魔導具の見学会やってくれ』
なんてユウから頼まれてさ、まあそんくらいならいいかなって気軽に承諾したらさあ……ルーちゃんはダンジョンに行くっていうじゃないの。
そりゃさあ、ルーちゃんはダンジョンコアだからさあ、それも仕方がないなってわかるわよ。
でもさ、アシスタントがモル助だけってどう言うことよ!
せめてウサ族にしなさいよ!
ていうか、そうするべきよって思ってさ、メイドを呼びに行ったら、なんか私の神殿で忙しそうに働いててさ……。
なんかもう、邪魔しちゃいけないなって……。
まあ、ぶっちゃけそこまで大変な仕事じゃないからねー。
じゃあ行くわよーと、三人を連れて、我が家へとやってきたわけ……なんだけど、来て早々に面倒なことになっちゃったのよねえ……。
「この間、使ったのより凄いわね……火力の調節ができるなんて……」
「お母さん、これ凄いよ! ここ触るとお水が出るよ!」
「いや、これお湯も出るぞ! デカい家にあった、フロに使われていたのと同じ仕組みかな?」
……台所に連れてったら一歩も動かなくなっちゃったのよ。
すぐに飽きるかと思ったんだけど、なんかもう、夢中になっちゃって、さっきからずっと、ああでもない、こうでもないと話しっぱなしなのよねえ。
あ、そうだ。
どうせ動かないんだったら、このまま使わせてみたら良いのよ。
そうよ、それがいいわね。
涼みに寄った量販店なんかでさあ、暇つぶしにタブレットとか触ってるとさ、じわじわと欲しくなっちゃう現象あるじゃない?
ネットとかで「あ、これいいなあ」って見るよりも、実際に触ったほうが物欲が刺激されるのよ。
キッチン周りなんて、てきめんよね。
一度使ったら、絶対に元の生活に戻れなくなるわ。
ようし、マーサとリットちゃんに簡単なお料理を作ってもらいましょうか。
材料は……今のうちにボックスから冷蔵庫に少し移しておきましょう……よし、これでオッケー。
そろそろお昼になるし、ちょうど良かったわ。
「お気に召していただけましたか?」
営業スマイルでにっこり語りかけると、はっと我に返ったように三人がこちらを振り向いた。
「ええ……家の中で煮炊きできるなんて……最高ね」
「お水をくまなくて良いって凄いね……」
「ううん……これは一体どういう仕組で……」
「せっかくだから、マーサとリットちゃんの二人には調理体験でもしてもらおうかな?」
「ほんと!? ありがとう、パンさん。このコンロもっと触ってみたかったのよー」
「やったー! 広場でお肉焼くの、楽しかったから、またやりたかったんだー」
「お、俺にもやらしてください! 料理は……できねえけど……触ってみたいんっす!」
うーん……残念ながらザックくん。君はだめなのよね。
あんたはあんたで、別のことをやってもらうんだから。
「ザックくんには別のこと頼むからだめ。そっちで待ってなさい」
「ええ……俺もコンロ触りたいっす……」
「待ってなさいね?」
「……はい」
マーサ達がウッキウキで使っているのが、上位グレードの魔導コンロ。
お店のプレゼンをやった時に、広場で肉を焼いたやつの大型版で、三口のコンロがついていて、それぞれに火力調整バーが付いている本格的なやつね。
地球で言う所のIHって奴に良く似てるっていうか、まんまなのよねこれ。
ユウのやつがさあ、前に【製作】のリストが見辛いと文句をつけてきたけど、アレが自分の知識を元に構築された物だって理解してないからそんなこと言えるのよ。
服のカラバリ細かすぎる? そりゃあんたのせいだっつーの!
趣味で絵なんか書いてるから色の拘りがあるんだろうけど、それがレシピにまで適応されるなんて私も予想してなかったわよ。
まあ……確かに、使いにくいなって思ったから、改良してやったけど、あれはほぼほぼユウのせいなんだからね。
まあ、そのおかげで、リプラシルでも快適に暮らせているんだから、感謝の気持はあるけどねー。
って、食材のこと伝えに来たんだった。
楽しげにはしゃぐ母子に冷蔵庫を説明し、そこから食材を好きなだけ出して使うよう伝えた。
保存はストレージやボックスで間に合っているから、いつもはお酒とアイスしか入ってないんだけど……ね。
「日陰に置くと肉が長持ちするって言うけど、これを使えばもっと保つのねえ」
「お水も冷たいまましまえるって凄いよねえ……それに、このカチカチのコオリってのも、面白いね!」
「あー……そっか、水が凍ること無いものねえ。その氷はね、水をすごーく冷たくして作ったものなのよ」
「へえ……お水なのに、こんなになるんだ……あ、手に持ってたらお水になってきた! 不思議だねえ」
「パンさぁん……俺にも見せて下さいよお……」
おっと、ザックくんを忘れるところだったわ。
「ごめんごめん、後で見せたげるから、もうちょっと待ってて……というわけで、あとはよろしくねー」
「「はーい!」」




