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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第28話 ダンジョンのデバッグ

 転移部屋の外に出ると……そこにあったのは湿原……ではなく、緑の尻だった。


「こら!!!!!」


「あっ!? やばっ」


「オルァァアア!」

 がっつり体重を乗せた蹴りが、タルットの尻に吸い込まれていく。


 バスンといい音が鳴り、尻を突き上げ、両手を広げた体勢のタルットが顔から水路に突っ込んでいった。


 おーおー、汚え花火だぜ……。


「マジでリスキル狙って待ち構えてるとはなあ……ルーちゃん、あいつらやっぱダメだな。がっつり叱っといてくれよ……ルーちゃん?」


 横を見ると、ルーちゃんがうずくまってピクピクしていた。


「ちょ、ルーちゃん大丈夫か!? なにがあった? 誰にやられた?」 


 ダンジョンコアにすらダメージを与える不可視の攻撃……どこからか受けている……? 


 魔物の中でルーちゃんを裏切りそうなやつといえば……タルット、やはりお前らは――


「あはっはっははっはははお尻! お尻がーー!!!」


 ――ただ単にツボにハマって居ただけか……知ってたけど。


「み、みて……ユウ……タ、タルットのおしっ、おしりが……プカプカ流れていくよ……あははははははは!」


 桃太郎の桃のごとく、緑色の尻がプカプカと水路を流れていく……おのれ、未熟な桃め!


 ルーちゃんを呼吸困難にしたバツだ! 大人しく割られろ!


「ソォイ!」


「ごぼぼばがぼぼ!」


 水路から生える尻をバシンと棒で叩いてとどめを刺すと、ゆっくりと沈んでいって他のタルットに回収されていた……。


 なんだかな……結局アホみたいな茶番する羽目になったわ……。


「あは、あはははは! おしりが! 沈んでったよ! あはははは!」


 ルーちゃんが楽しそうだから……いいけどよ。


 茶番から少しして。


 ルーちゃんの「あつまれー」の声にわらわらと集った魔物の代表たち相手にダンジョンミーティングを開始した。


「昨日、ルーちゃんからお知らせが届いたから知ってると思うけど、今日は試験的に人族を潜らせてるんだがよ、体験もクソもなく全滅しちまったわけだが、なんでだと思う?」


「はい! 弱すぎるからです!」


「はい、タニシのお姉ちゃんに一ポイント! そう、あいつらは弱い! 確かに弱いんだが……それだけじゃねんだよなあ……他に何かないか?」


「うーん……? 水がかかると死ぬ種族だった……?」


「サメの人らしい意見だな。まあ、沈めたら死ぬけどよ、そこまで弱くねえわ。お次は……はい、ルーちゃんどうぞ」


「お腹が空いてお尻を食べちゃったから! あははは!」


「ルーちゃん、どんだけお尻ネタ気に入ったんだよ……はい、カニのおっさん」

 

「我から滲み出るオーラ的な力が……」


「お前から滲み出てんのは旨味成分だろうがよ!」


「「「どっ」」」


 だめだ、このままでは大喜利になってしまう……もういいや、ザクッと正解を言って話を進めよう。


「キリがねえからもう正解を言っちゃうけどよ、そこで正座をしているタルットが空気を読まずに暴れたのが原因だな」


「しゃあないやん! クッカが首そろえて歩いとったら狙うやろ?」


「あー、そういう感じなんか? なら、タルットがやらかしたのもわかるかも」


 あーね、と同調する魔族が数名。


 まあ、わからんでもないんよ。


 獲物が呑気にふらふらしてたら俺もまあ……スマホを投げると思うし。


「空気読めなかったのはまあ、初回だしさ、しゃあねえなって思うよ」


「せやろ!?」


「だがよ、転移部屋の入り口にケツを向けて待ち構えてんのは悪質だろうが!」


「なにお前、そんな事してたの? そりゃユウさんも怒るだろ」


「狩るのは面白えけど、それはちょっと……」

「いやほんとお前アホだろ……」


「流石にそれは……うちも引くわぁ……」


「えぇ……そうかなあ? ううん? まあ、そうかもお?」


 周りからやんややんやと責め立てられ、流石のタルットもやらかしを理解し始めたようだ。


 まあ、きちんとルールを制定してなかった俺もわりーし、取り敢えずこんくらいで許してやろう。


「例えばさ、旨そうな魔獣の群れが、自分の縄張りを歩いていた。そんなんウッキウキで狩りに行くよな?」


「そうね、わざわざ探しに行かなくても良いんだもん、そりゃ狩るわよ」


「次の日、また同じ場所を同じ魔獣の群れが通っていた……どうする?」


「そりゃ狩るわよ」


「じゃあその次の日だ。姉ちゃんは魔獣の群れを全部狩ったわけじゃない、だから昨日もきたわけだが……今日はどうする?」


「もう完全に来るってわかってるんだもん、舌なめずりして待ち構えてるわね」


「でも……今日は獲物は来なかった」


「えー? なんでよ!」


 ここで立ち位置を逆にして改めて説明をする。


「ちょっと話を変えようか。なあ、タルット。お前が暢気に歩いていると、ブチ切れた俺が現れてお前のケツを消し飛ばしたとする」


「ちょ……それ復活できるん……?」


「余裕よ。んでよ、復活したお前が同じ道を歩いていたら、俺が待ち構えていて……お前のケツがぼんっ……だ」


「ワイのケツになんの恨みがあるんや!」


「さて、お前は再び復活したわけだが……また同じ道を通りたいと思うか?」


「通るかぃ! どうせまた尻をぶち抜かれるんや、わざわざ行くアホなんざおらんやろが!」


「最初に話した獲物の話と今の話を合わせて考えると、入り口で尻を向けて待機していたアホが、どんだけクソみたいなことをしたのかわかるだろ?」


「そんなんされたら二度といくかってなるわね……」


「ルーちゃんが折角作ったのにな、ずっとあれじゃ誰も来なくなるよ」


「うっ……そうか、長く楽しむためには、加減せなあかんのか……」


 ルーちゃんの援護射撃が効いたのか、タルットの頭でもやらかしを理解できたようだな。


 つうか、ありゃ加減とかそういうレベルを越えてただろ……。


 でもまあ、タルットの口から加減の一言が出たのはいい傾向だ。


「そう、獲物が警戒しないように、加減をして油断をさせるんだ」


「なるほど……それで、どうすりゃいいの?」


「ここに来る人族……冒険者っていうんだが、あいつらはまだ弱い。タルットと喧嘩をして一分持たないくらいに弱い……だから、楽しむためには、育つのをまたないといけないわけだ」


「キウリみたいなもんやね」


「ああ、美味しく食べるために、じっくりと育てるんだ。今の冒険者なら……狩りが苦手なお前たちでも楽しく遊べるんじゃないか?」


 自信なさげな顔をして、会議に参加していた泥ゴーレムみたいな魔族に言うと、驚いた顔をして顔を上げた。


「えぇ……ほんとう? おいらたちでも大丈夫?」


「ああ、大丈夫だとも。お前らだって、たまにはいい勝負してみてえだろ?」


「うん……そっか、おいらたちでもできるんだ……やるよ、ユウさん!」


 こいつらは、かつて悪いタルットたちにカモられていたから、すっかり自信を無くしちまってたんだよなあ。


 モル丸が目を光らせるようになって、飢えることは無くなったろうけど、こいつらだってたまにはドカンとストレス解消したかろう。


 そんな彼らにゃ、ルーキーの相手はうってつけだろうな。


 そのうちキンタたちに勝てなくなるかもしれんが、その頃には新たな冒険者が来るようになっている……はず。


 ダンジョンの仕様で、住人たちにはレベルキャップが課されているから、冒険者を狩りまくっても強くなりすぎることはない。


 まあ、ステータス以外の部分、戦略や技術みたいなところは育っていくだろうが、それは冒険者も同じだからな。

 

「で、こいつらを倒せるようになった冒険者は、奥へと進んでいくわけだが……そこにもう少し強いやつが待ち構え、さらに奥にまた別のやつ……と、少しずつ強いやつと戦うようにすれば、みんな楽しくやれるだろ?」


「なるほど……確かに、多少歯ごたえがある相手のほうが楽しいものねえ」


「それはそうなんやが……でもな、ユウさん。弱いやつを蹴散らす楽しさってのも……あるんよ……」


「まあ……わかる。だから、頻繁にやるのは許さねえが、たまーに襲うのはいいぞ」


「え? ほんま?」


「ああ、運が悪かったなで済まされるレベルなら、冒険者たちも油断しなくなるからな」


 いわゆるワンダリングエネミーってやつだな。


 格上の奴が、フラフラしてて、それにエンカウントするととんでもねえ思いをするってやつだ。


 タルットなんかは、ほっといてもフラフラしそうだからうってつけだよな。


 ……ただ、調子に乗ってやりすぎそうだから、これも言っておかないとな。


「ちなみにだが……明らかに弱すぎる相手を倒すと、良いものが落ちないから、そこは注意だな」


「え……? そ、そこんとこ詳しく教えてくれや」


「そうだな……タルットたちにわかりやすく言うと、格上なら俺が育てた極上キウリが、同レベルなら、普通のキウリが、格下だと……小さな草団子ひとつってとこか……」


「そこまで差が出るんかい……うーん、こっそり荒稼ぎしようと思ったけど、こら、やめたほうがええな……」


 全部聞こえてるからな。


 やっぱりコソコソ悪さをしようとしてたな。


 まあ、ここまで言っておけば、流石に悪質なルーキー狩りはやらなくなるだろう。


「格上ならご褒美が良くなるってことはさ、ボウケンシャだっけ? そいつらには強くなってもらったほうがいいよね」


「おお、サメちゃん良いことに気づいたな。そうだぞ、あいつらが格上レベルに育ったら、お前らだって良いご褒美を貰えるようになるんだ、育てる楽しみが増えたろ」


「……ドロロン、マジ頼むよ? 最初の相手はお前らなんだからさ」


「うう……が、がんばります!」


 あの泥ゴーレム、ドロロンっていうのか……そういうことだから、ほんと頑張ってほしい!


 後でこっそり「ドロロンたちにボーナス上げて」ってルーちゃんにお願いしといてやるからさ。


 キンタたちの育成、頼んだよ。


 ……

 … 


 無事に話がまとまり、魔物たちがそれぞれ、適切な位置へと移動した。


 そうだよな、最初からこうしておくべきだったんだよな……。


 今回の件は俺も悪いわ。RPGで言ったら、LV10帯のモンスターを最初の村の周りに配置してたようなもんじゃん。


 クソゲーすぎるわ。


 やっぱベータテスターって大事だよなあ。ほんと、キンタたちをテスターにして良かったわ。


 あいつらなら、どうとでも言いくるめられるっていうか、多少ひどい目に遭ったところで、そこまでクレーム入れてこねえからな……。


 ほんと、ありがたいやつらだよ。


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