第27話 おかえりなさいキンタくん
話はマサシゲが死に戻りをした直後に巻き戻る――――
塩のダンジョン、初の犠牲者となったマサシゲ。
彼の死因は、タルットによる、背部からの刺創だった。
これだけ聞けば、なんとも真っ当な死因……と言ったら変だけど、まあ普通だよねってなるんだが、凶器となったのがキウリ――キウンバってのが泣けてくるよな……。
つうか、あれって人を貫けるようなもんなのか……?
アイツラに支給されてるキウンバって、俺が育ててるやつを、ダンジョンシステムが複製してるものなんだけど、普通に食える硬さで、武器になるようなもんじゃねえと思うんだけどな……。
うーむ、タルットの神秘だな。
それからしばらくの間、ルーちゃんとリリィ、そしてマサシゲの四人でまったりとティータイムを楽しんでいたのだが……。
「ユウ様、残りの方々がそろそろお帰りになるようです」
リリィがすっと立ち上がり、メイド服のポケットから取り出したスマホサイズの端末を見ながら言った。
「おう、じゃあ出迎えの準備をするか」
それは、パンさんがちゃちゃっと作りやがった受付用の端末で、ダンジョンの簡単な情報がわかるほか、誰かがゲートを通ってこちら側に来ると通知が来るようになっているらしい……俺が知らん間に作ってたから詳しいことは知らんけどな。
その端末の通知によれば、キンタ達はまもなく全滅するとのこと。
そうかあ、やっぱだめだったかあ!
じゃあ、いい感じにお迎えしてあげないとね!
「キンタくん達はきっとひどく落ち込んで戻ってくると思うんだ。だからさリリィ、ここは明るくインタビューでもして気を紛らわせてやって欲しい」
「インタビュー……ですか?」
「ああ、インタビューってのはさ、これこれこういう感じでね…――」
「なるほど、冒険者側からの意見は貴重ですし、いい趣向ですね」
「ねえねえ、ユウ。ルーちゃんはどうすればいい?」
「そだなあ、取り敢えず『おかえりなさい』っていってあげたらどうだい?」
「いいね、そうする!」
「……あああ……キンタさん……ユウさんを止められない俺を許して欲しいっす……」
なんてリハをしていると、リリィがすっと立ち上がって『お帰りのようです』と、にこやかな顔でリスポン部屋に駆けて行った。
今日はリリィがポーションぶっかけなきゃねえからな……大変だろうけど、がんばってくれ。
どれ……キンタが目覚める前に一度様子を見ておくか……。
そっとリスポン部屋の扉を開けると、ちょうどキンタたちが転送されてきたところだった。
死亡判定を受けると、治療をしやすいよう、一時的に意識が奪われるようになってるわけだが……パッと見た感じ、こいつらがどこをやられたのかわっかんねえな?
何をやらかして死亡判定貰ったんだ? 強いて言えば、なんとなく……変な匂いがするくらいで、他にはマジでなんも変わらんように見える。
うーむ、リリィのインタビューに期待しておこう。
「うーし、リリィ。治療をした後は、さっき練習した通り頼むぜ」
「はい! お任せ下さい!」
……
…
――そして、インタビュー後……
「ゲラゲラゲラゲラゲラ プーーーークスクスクスクス」
「あはははははははキンタさん! あはははははははは! おならって! あははははは!」
笑い転げる俺とルーちゃんに、キンタが顔を赤くして怒ってるけどさあ……しょうが無いじゃん。
みろよ、マサシゲだって、クソ笑ってんじゃんかよ。
あんだけ申し訳なそうにしてたマサシゲすら笑ってんだぞ? 俺たちがアホほど笑うのはしょうがねえじゃんかよ。
「ヒーヒー……はあはあ……そ、それでどうだった? 初めてのダンジョンは」
流石にずっと笑ってるのもちょっと悪いよな……結果はアレだったが、今後のためにもキンタの話を聞いておかないと……――
「あ、ユウ様。今後の参考のため記録しておいたほうがいいですよね」
「ん? あ、ああ……そう……だな」
「ええと……キンタパーティ……壊滅、死因はタルットの……屁……と」
……だめだった。
ま、真面目な顔で……『死因はタルットの屁』とかいうから……もうだめだ。
「死因、屁って! 屁ーーーー!!!! ゲラゲラゲラゲラゲラ」
「うがあああーーーー!!!!」
「ごめんキンタさん、面白すぎるよ! あははははは!」
再び笑いの火が灯った我ら親子は、そのまま五分ほど笑い転げ……ようやく落ち着いた頃には……あーあ、キンタ達、すっかりへそを曲げてら。
いやー悪かったってば。
俺もさあ、まさかタルットがそんな隠し球を持ってるとは思わなかったんだよ。
まさかな、タルットが猛毒のブレス攻撃を持ってるなんてなあ……ただしブレスは尻からってか?
プ……ククク……。
やばいやばい、またツボるとこだった。
「はあはあ……狩人なんだから、弓を使うのは当たり前のことだがよ、そればっかり訓練してちゃあ、懐に潜り込まれた時に何もできねえ、今日のやりとりで嫌でもわからされただろ?」
「ああ……どれだけ調子に乗ってたかわかったわ。思えばよ、リブッカを狩れたのもユウがくれた矢と弓のおかげなわけだろ……強くなったわけじゃねえんだよなあ……」
いやいや、お前らも前よりスキルアップしてると思うぜ? ただ、今のままじゃ、いずれ痛い目に遭うぞって、わかってもらいたかっただけなのさ。
しっかし、開幕からタルットがでんのか……。
あいつってどんくらいの強さなんだろ? 場合によっちゃ、ちょっと配置を変えてもらわねーと、誰も潜れなくなっちまうぞ……。
どれ、こそっとルーちゃんに聞いてみよう。
「ルーちゃんや、タルットってキンタとくらべてどんくらいつおいのかわかる?」
「うーん、今のキンタさんなら……五人分くらいかな?」
「そんなに」
意外と強ええな……。
だめだわ。これじゃ訓練になんねえ。
当分の間、あいつらには遠慮してもらおう……。
けどな、あのおっさんのことだからな……ちょろっと言ったくらいじゃ聞かねえどころか、下手すりゃ味をしめて待ち構えてる可能性もあるぞ……。
……いや、あいつらならやる。
「リリィ、キンタ達に飲み物出してやってくれ。俺はちょっとダンジョン行ってくるから」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ、ユウ様」
ルーちゃんを連れて一階層に。
俺だけ行くとさ、またクソ長い茶番に付き合わされてしまうかんな。
ここはルーちゃんにビシッと言ってもらって、場合によっちゃ俺がビシッバシッとスマホでどついて。
なんとかわかってもらわねえとな。




