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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
1章 拠点を作るぞ

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第13話 時が……ゆっくりと流れて見える……

 ミニバンサイズのイノシシが、猛烈な勢いで俺に向かっている。

 

 今ならまだ、横に飛べば……ギリ避けられるかもしれない。


 けどさ、だめなんだ。


 膝が笑っちまってさ、足が地面に縫いつけられたみたいに動けねえんだ。


「ユウ なにしてんの にげて! ああ もう!」 


 クロベエが俺を助けようと駆け出した……けど、もう間に合わないだろう。


 まるで、俺だけが別の時間の流れを彷徨っているかのように、時の流れが遅く感じる。


 とっても痛そうな、イノシシの頭がゆっくり、ゆっくりと迫ってくる。


 防衛本能だろうか、自然と両手が前に出た。


 巨木を倒しちまうようなアイツの突進だ、生身で防御したところで無意味だろうよ。

 

 そんな状態なのに、妙に心が落ち着いているのは、パンちゃんから『不老不死』の加護を戴いているからだろうな。


 まあ、死なないってだけで、怪我や病気にはなるんだろうよ。さっきクロベエがすっ転んで投げ出された時、しっかりと傷まみれになったし、膝だって擦りむいてたからな。


 ……死なねーってわかっちゃいるけどさあ……。


 あの頭が当たったら……すっげえ痛いんだろうなあ……。


 やだなあ、嫌だなあ 痛いの嫌だなあ!! 死なねえつっても痛いのやだよお!


 ああああああ!! やだあああああああ!!!!! もおおおおお!!! 


 こっちくんじゃ、ねえええええええええ!!! 馬鹿がよぉおおおお!!!


 キィーーーーーン


 腕に軽い衝撃が走り、不思議な音が高く聞こえた。


 ……苦し紛れに腕を振ったのは覚えている……が、それでなんとかなったとは思えない。


 いったいなにが……起きた?


 恐る恐る目を開けると、俺の顔に迫るイノシシの姿がみえた。

 ゆっくりと、ゆっくりとのしかかり、俺を押し倒していく。


「うおおおおおおお!!!!!! まだスローモーションシーンじゃねえかよ!

 体当たりを喰らうシーンなんてゆっくり流してんじゃねえ! さっさと次のシーンに……って、あれ? ……ぬおおおお!!!! おもてえええええええ!! ゆっくりとおもてええええええ!」


 走馬灯的なシーンが続いているとばかり思ったのに、違ったわ……。


 ぐったりとしたイノシシが、ずっしりと俺にもたれかかってるようだ……って、言ってる場合かよ!


「クロベー! 助けてー! 潰れて死にそうだよお!」

「うおおおお! すっげーな ユウ! やっつけちゃったよ! すげー!」

「いいから! はやく! こいつをどかすんだよぉ! マジで死ぬっつの!!」

「おー ちょっとまっててねー」


 ……あっぶねえ……マジで色々出るとこだったわ。


 しっかし、何が起きたんだ? うっわー……すっげえなこれ、頭を覆ってた外骨格的な何かが、バッキバキに割れてるじゃんか。


 これって……状況からするとやったの俺だよなあ……。


 勘違い系コメディにありがちな、ラッキーパンチで格上やっつけるアレだよな。


 普通に考えりゃありえねーが、ここはゲームのようなファンタジー世界。


 これは、今回こそ来てしまったのではなかろうか! 


 非力な俺が、格上殺しを成し遂げられたんだ、マジで来ちゃったんだろうな!


 ふふ……俺の覚醒イベント来ちゃったかあ。


 恐れに打ち勝ち、立ち向かう覚悟を決めたあの瞬間……俺の心が殻を破ってレジェンドレア級スキルの【拳神】が目覚めちゃったんだろう。


 やべえな、俺の時代が始まってしまった。


 シュシュ! フッフッ! シュッシュッ! 


 おお! 拳が風を切る音がすげえ鋭いぜ! これは達人級だな! 

 

「うぉりゃ! 拳神波動撃!」


 なんか衝撃波が出た気がする!


 ポコン!


 なんだ、無粋なメッセだな。まあいい、パンちゃんにも拳神になった報告をしてやろう。


『プッ……ククク……あ、あの、魔獣を倒したのは、必死に握りしめてたスマホです……よ』


「は? んなわけ……だってスマホだぞ?」


 ポコン! 


『壊れたら困るので、最大限に加護を与えておいたんですよ。耐衝撃、耐斬撃、耐火などの防御の他、指紋油脂コーティングもバッチリです』


「え……? スマホに……そんな加護を?」


 ポコン!


『ついでに物理反射も付与しておきましたからね。頭突きの衝撃がそのまま反射して、致死ダメージを与えちゃったんでしょうねえ』


「……にしては、ずいぶんと可愛らしい衝撃しかこなかったぞ? いくら反射するつっても、こっちにもそれなりの衝撃が来るはずだろ……」


 ポコン!


『ゲームとかラノベみたいな世界なのよ? 真面目に考えたら負けよ』


「身も蓋もねえこと言うなよな……あれ? じゃ、じゃあさ俺にそんなスキルや加護は……?」


 ポポポポコン!


『あるわけないじゃないですか拳神(笑)さんwww』 

『あんたは不老不死属性がついてるだけのただの人ですよwww』 

『拳神波動撃とかくさはえる(ネコがm9(^Д^)ってしてるスタンプ)』

『恐れに打ち勝ち? ビビリ倒してたくせにwww(ネコが笑い転げてるスタンプ)』


 ……とってもとってもつらくなったので、そっとスマホをしまった。


 俺TUEEE系主人公になったのは、俺でもクロベエでもなく、スマホだった。


 くそがよぉ……!


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