第24話 いざダンジョンへ
一夜明けて。
リリィで釣ったおかげで、狩人たちは誰一人寝坊すること無く、全員がしゃっきりした顔で集合場所である食堂に集まっていた。
昨日説明した通り、本日は二つのグループに分かれて行動する。
マーサとリットちゃん、それにザックの三人は、パンさんとモル助の案内で我が家の見学に。
そして、キンタたち狩人は俺とルーちゃんと一緒にお楽しみのアレ……そう、ダンジョンに行くわけだが……。
「お父さん、お土産狩ってきてね」
「ああ、まかせとけ! こっちの森はヤバそうだが、まあユウがいるからな!」
「ユウさん、うちの人と、狩人のみんなをお願いしますね」
「あっ……はい!」
リアクションを見たいがために、まーだなんにも教えてないので、魔獣の森に行くと思われたままだったりする。
まあ……キンタたちが不甲斐なくてもお土産は用意するし、危ない思い……はするけど、死にやしないし、大怪我したまま帰すような事もしないから、マーサとリットちゃんもきっと許してくれるだろう。
キンタたち狩人の許し?
んなもんいらねーっていうか、ほぼ確実に大はしゃぎするだろうからな。
狩りじゃなくても怒りはしないだろうよ。
「うーし、じゃあ行くぞお前ら! 俺に続けえ!」
「「「うおおおおおお!」」」
……
…
はい、というわけで、やってきました塩のダンジョン!
元は、ただの洞窟の入口にしか見えなかった塩のダンジョンですが、ルーちゃんとパンさんのがんばりによって、今やその見た目は遊園地のアドベンチャーゾーンの様に変貌しています!
入り口前に設けられた小さな建物――冒険者ギルドには、受付嬢であるリリィが座っていて『準備万端ですよ!』 と、こちらに手を振ってますねえ。
今回のゲスト、始まりの村の狩人さんたちは、なぜ森ではなく岩山に連れてこられたのか、なぜ岩山に謎の小屋があるのか、そして……なぜそこに、昨日宿で見たロップのお姉さんがいるのかと、ソワソワ、キョドキョドとしていますねえ。
「お、おい……ユウ? 俺たちはどこにつれてこられたんだ? 森で狩りをするんじゃなかったのかよ?」
「そんなこと一言も言ってねえだろうがよ」
「言われてみれば……じゃあ、ここはなんなんだよ?」
「ここはダンジョン……そうだな、狩りの技術を磨きながら、食材や素材などの報酬が得られる場所……かな」
「ダン……ジョン? なあ……言ってることの意味がぜんぜんわからねえんだが」
うるさいですね……詳しい説明をこれからしてやっから、黙ってこっちに来やがれ!
って、こいつら、リリィのところに向かった瞬間デレデレしはじめやがった。
「みなさん、おはようございます。私は冒険者ギルド、塩のダンジョン担当のリリィと申します」
「「「お、おはようございます!!!」」」
「私はダンジョンのかんりせきにんしゃのルーちゃんです! みんな今日はよろしくね!」
「「「よろしくお願いします!」」」
ノリがいい狩人たちの挨拶にルーちゃんもニッコニコだ。
このアホなノリに慣れていないリリィは、ちょっぴり驚いていたけれど、コホンと小さく咳払いをして説明を続けた。
「このダンジョンは、現在二階層で構成されており、階層ごとに環境が分かれていて、それぞれに多種多様な魔物――つまり、魔獣や魔族が生息しています」
魔族、という声を聞いて狩人達が焦り始めた。
そうだろうそうだろう……村人たちにとって、魔族というのは会ったことはないけれど、魔獣よりも強くて賢いと言われている、よくわからないヤベー奴らだ。
そんな連中が住んでる場所に、どうやらこれから行くらしいと思えば、ちょっぴり怖くなっちゃうのは仕方がないことよのう。
……つうか、リリィたちウサ族も魔族だって完全に忘れてるよなこれ。
「ユウ……悪い顔で笑っちゃダメだよ」
ルーちゃんが呆れたように言うけどよ、これから起こる事を考えたら笑わずには居られないじゃないか。
別に狩人達が痛い目に遭うのを楽しみにしているわけじゃ無いぞ? このダンジョンを足掛かりとして狩人達のスキルアップ、手に入る素材によってもたらされる恩恵……これらが全てあの村の、いや、この世界全体の発展に繋がるんだ。
今日、これからそんな大きな一歩を踏み出そうとしているんだ、笑わずにはいられないって。
まあ、ぶっちゃけるとキンタ達がここに転送されて戻ってきたときの驚き顔が楽しみだなあってのが一番なんですけどね!
っと、リリィの説明が山場を迎えているな。
「さて、皆さんには入る前に冒険者登録をしていただきます。こちらの石版に手を置いていただくだけでできますので、そちらから順番にどうぞ」
デレデレとした狩人たちが、順番に冒険者登録をしていく。
なんだろう……デレついてるせいか、傍目に握手会みたいになってる……リリィがまたニッコニコと、愛想よくしてっから、尚更そう見えるわ……。
「はい、これで皆さんはダンジョン内で死亡することが無くなりました」
「え……さり気なく怖いことと、スゲエこと言われた気がするんだけど、どういうことなんだ?」
おっと、キンタくんがいい質問をしていますねえ。
こいつ、ほんと便利なやつだよな。こういう時に必ず口突っ込んでくるもんよ。
「皆さんは、森で狩りをしているとユウ様からうかがっています。狩りをしていれば、時に危険に巻き込まれることがあるでしょう……それはこのダンジョンでも変わりません」
「ええと……ダンジョンにもラウベーラみたいなやつが居て、死ぬ思いはするけど、死なねえ、そういうことか?」
「はい、そのとおりです! ダンジョンは皆さん冒険者と、魔物たちがガチンコ勝負をする場所です。なので、大けがをすることはありますし、死にかけることもあるでしょう」
「えぇ……そこまで過酷なのか?」
あーこれ、リリィが居なかったら、ビビリ散らかして俺に文句言ってたろうなあ。
キンタもそうだし、他のやつらもリリィをチラチラ見ながら「怖くねえし」って顔してら。
「はい……ですが、ダンジョンから出る際に、大怪我は治療されますし、死の直前に回復部屋に保護されますので、死ぬこともありません。そして……」
「そして?」
ごくりとつばを飲むキンタたち。
「ダンジョンで得られる報酬、ドロップアイテムは、それだけの価値があるものばかり……ダンジョンとは、自らの身体を鍛え、そして、生活の糧となるご褒美を得られる素敵な場所なのです」
「「「お……おおおおー!」」」
リリィの説明から、なんかちょっと怪しい香りがしてきてるが……うちはそういうんじゃないんで、大丈夫です!
なにせ、この石板を作ったのは女神であるパンさんと、その娘のルーちゃんだからな。
リプラシルシステムとダンジョンシステムを利用し……なんて説明をするとそれらしいが、ざっくり言えば、あの石板を触れることにより、ルーちゃんの『おともだち』のようなものになるらしい。
通常の契約と違うのは、双方の同意が必要ないというところだな。
言ってしまえば、ただ単にダンジョンへの出入りと、その恩恵を受けるために必要な会員登録みたいなもので、あくまでもゲスト扱いなので、別にルーちゃんの眷属になるわけではないそうだ。
……キンタが召喚できるようになったらおもしれえと思ったんだけどなー。
つうか、こいつらリリィの言葉が効いたのか、すっかり元気を取り戻してる……っつうか、戻しすぎてデレデレが酷くなってるな。
痛い目に遭うけど、死なない。
ダンジョンから出るときには元通りってのが効いてるんだな?
ダンジョンはそんな油断しきった奴らが攻略できるようなもんじゃねえんだぞ。
どら、ひとつ現実ってもんを教えてやろうか。




