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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第23話 回想シーンでーす

 話は村に行く前に遡る。


 俺は、パンさんとルーちゃん、そしてリリィを連れて一階層に来ていた。


 塩のダンジョンの住人は、原則自分たちが住んでいる階層にしか転移できない仕様になっているが、許可を申請し、それが受諾されれば、許可の範囲内で移動が可能となる。


 それは、一階層のクソガキ共のように、活きが良い連中が他階層に迷惑をかけにいかないよう、ダンジョンの治安を守るために導入した仕様なのだが、逆に言えば、やらかさない連中ならば、その枷をとってもいいと考えている。 


 やらかさない連中の代表格は、モルモルとウサ族だろう。


 両種族の希望者には、フリーパスが発行されているわけだが、どちらも使用目的が仕事という辺りが……ちょっとアレだよな。


 マジで君たち、ご自愛くださいだわ。


 そして、今日同行してもらっているリリィにも勿論、フリーパスが発行されているのだが、これは彼女から求められたからではなく、特別な仕事をしてもらおうと、俺から発行を持ちかけたんだ。


 その特別な仕事ってのが、前々から俺が計画していたアレなのだが……その説明のため、一階層に来たんだけど、なんかもうコイツラの顔見た瞬間、疲れちゃったわ。


 だってさ、一階層に転移した瞬間、ユウさんや、マジや、今度は何や?……と、声を掛ける前にワラワラと集まってきてさ、なんかもう勝手に俺を中心にして座るんだもん。


 ほんと、こいつら毎日暇なんだなあ……。


 まあ、それももう直ぐ解消すっけどな!


「今日はな、未だにちょいちょいケンカをしやがるお前らのために、新しい遊びを考えてきたぞ」


「「「「うおおおおおおおお!」」」」 


 俺の言葉を聞いてアホみたいに盛り上がっている……やめろよ、ちょっと気持ちよくなってきちゃっただろ。

 

「塩のダンジョンは安全な場所だ。一部のアホどものせいで、ちょっぴり治安が悪いが、ルーちゃんの『みんな仲良く』のルールのお陰で死ぬことはないし、外より安全に暮らせている……」


 ルーちゃんの考えたルールは、住人たちの命を守り、ダンジョンを安定させる素晴らしいもの……ではあるのだが、一部アウトローな連中にとって、それは退屈に感じる枷となる。


 これをこのまま放置しておけば、ぬるま湯が嫌でダンジョンを出ていく奴が現れ、長い目で見れば、厄介な問題に発展してしまうかもしれない。


 今回の提案は、それを防ぐ意味でも大いに役立つことになるだろう。


「こんなにも、安全で暮らしやすいとこに住んでんのにさあ、お前らはそれはそれで暇すぎるって文句言ってたよなあ? ぶっちゃけ、気持ちはわかる!」


「流石や、ユウさん!」


「外よりずっといいけどさあ、やっぱ暇な時があるのよー」


「なんとかしてくれるって、どうしてくれるんだー?」


 どうしてくれるってか、そらもう、お前らが驚くことをしてやるよ!


 さあよく聞け一階層の暴れん坊たちよ! お前らがワックワクするとっても素敵な話を持ってきてやったぞ!


「住民同士で喧嘩しちゃあいけねえ、それがルーちゃんルールだ。けどよ、住民じゃなかったら……どうだ?」


「うん? 住民じゃなかったら……?」


「え、それって外のタルットかなんか連れてくるいうことか?」


「でもさ、そいつが住みたいって言ったら、喧嘩できなくなるよ?」


 まあ……そういう考え方になるか。


 なにせ、今まで俺がここにつれて来たのは、魔族に魔獣くらいのもんだからな。


 けどさ、忘れてない?


 ここって、ダンジョンなのよ?


 そして、俺の種族がなんなのか、忘れてない?


 ……ワンチャン変わってる可能性もなくはねえが、俺って人族なのよ?


 そう……俺が連れてくるのは――


「つうわけで、もうちょっとしたら、ここに人族を入れようと思いまーす」


「「「えええーーーーーー!?」」」


 ザワザワとする住人たち。


 そうだろ、そうだろ! びっくりしただろ! いやあ気持ちがいい反応してくれるねえ!


「人族に対しては、原則『みんな仲良く』は無関係……外でやりあったら俺が許さねえが、ここでやり合う分にはどんどんやってかまわねえ! なにせ、人族もここじゃ死ななくなるからな! やるかやられるか……遊びじゃねえ、本気の喧嘩ができっぞ!」


「うおおおおおおお! マジかよ! あ、でも大丈夫かな?」


「あー、最近見ねえけど、昔はたまに遭遇したなあ……あいつらよええのな」


「そうそう。ちょーっと脅かすと逃げてくしよー」


「わいはユウさんで初めて人族みましたわ……ユウさんって人族でいいやろか?」


「どうだろう? ユウさんは……なんかちょっと違う気がする……」


「やめろやめろ! 俺が不安になるようなことはいうな! それより人族だよ! 俺が連れてくる奴らは、まあまあ戦えるから、期待しとけ!」


「ほほう……それはそれは……」


「ほなら、わいらも……鍛え直してまってよかなあ……ククク……」

 

 血の気が多い連中が盛り上がり始めたぞ……いいぞいいぞ、そうこなくっちゃ。


 でも、過半数を占める、大人しめの種族の反応はあんまり良くないな。


 まあそうだよな、のんびり暮らせると思ってきたのに、争いの種が来ちゃうんだもんな。


 けどさ、ただ暴れられるだけじゃないんだぜ? 人と遊んでやりゃあ、ちゃーんと見返りがあるんだよ。


「まあ、ああは言ったけどさ、あくまでもこれは遊びだからな。言ってしまえば、お前ら魔族・魔獣と、人族の勝負なわけじゃん」


「ああ……人族が攻めてくるわけじゃないのか……」


「そうだよ? 人族はただ遊びに来るだけで、用が済んだら外の家に帰ってくんだ、別にここに住み着くわけじゃないよ」


「それなら……いいかな?」


「うちもたまーにだけど、体動かしたいって時あったし、人族ならいけるかも……」


 おっと、見返りで釣ろうと思ったが、遊びだと、勝負だと言っただけでだいぶ感触がよくなってきたな。


 ようし、この流れのまま見返りを発表して、全員に受け入れてもらおう。


「でさ、せっかくの勝負だし、勝ったらなにかご褒美が欲しいだろ? そこでルーちゃんやパンさんと協力して新たな仕組みを設定したんだが……その名もドロップシステムだ!」


 俺がそこまで言うと、待ってましたとばかりにパンさんが俺の隣に……おいクソお前、いつの間にスーツに着替えたんだ? なんだあそれ? 女性教師かぁ? 


 ちょっとグッとくるじゃねえかよ! 畜生!


「説明しよう! ドロップシステムとは倒された人族、又は魔族や魔獣が回復部屋に転送される前に、稀になんらかのアイテムを落とすという仕組みである!


 君たちからは、人族が欲しがる物……鉱石や薬草などの素材や、肉や野菜などの食材、そして魔石がドロップされる! ああ、心配ご無用だ! 食材や魔石と言っても、マナを元にダンジョンが作った擬似的なもので、住人たちから奪うわけではないからね!


 そして、君たちが人族を倒したら何が出るのか、そこが一番気になっているところだろう! 人族がドロップするもの、それは君たちの食事となるものだ! 例えばそこのタルットが大好きなキウリー! そこのお姉さんが好きな卵! そういった物がドロップするぞ! これらの物も、ダンジョンの不思議パワーで生成されたもので、どれもとっても美味しいから期待して欲しい。


 ダンジョンの解放後、人族たちが腕試しやドロップ目当てでここにやってくる事だろう。


 そんな人族たちと遊んでストレス解消ができる上に、運が良ければ美味しいものがドロップする……。


 どうだね? ダンジョンが今よりもっと楽しくなる……そうは思わないかね!?」


 誰だコイツ……めっちゃ話長いし、ノッリノリだし。


 お前どこのマッドな博士だよ。


 つーか、正直なところ、ルーちゃんにはこの話を反対されるかと思ったんだよな。


 ルーちゃんはお友達が楽しく暮らせる場所としてダンジョンを運用したいって言ってたじゃん。


 ゲーム感覚とはいえ、人族とバチバチさせるようなのはダメかなあって思ったんだけど……。

 

『いいね! 最高だよ、ユウ! やろやろ! 前より減ったけど、まーだ喧嘩する子がいるんだけど、こういうのやったら、少しは大人しくなるよね。運動のついでにご飯も貰えるなら、喧嘩しない子たちだって喜ぶと思うし!』


 と、めっちゃ乗り気でなー。

 

 パンさんは腕組みをして少し何かを考えていたけど……


「なるほどね……ダンジョン内に停滞するマナの処理に困ってたんだけど……なるほど、ドロップアイテムか、良いこと考えたわねえ。それにさ、ゲームみたいでおんもしろそーじゃない! あんた、ほんと最高よ!」


 なんて、それはそれはウッキウキでな。


 面倒くさがるかなあ……って思ってたドロップアイテムの実装も、マナの処理ができるとかで大歓迎されてなー、なんかもう、トントン拍子に仕様が決まったっていうか、パンさんがちゃっちゃっちゃーっと、あっという間にダンジョンアップデートの用意を済ませちまってたよ。


 なんかもう、俺が考えていたもの以上に、素晴らしいものになっちまったわけなんですよねえ。


 そんな、素敵に生まれ変わるダンジョンのプレゼンを怪しい博士にされた住民たちはと言えば……――


「うおおおお! 遊んでメシが手に入る! こんな素晴らしいことがあっていいのか!」


「ワイ、このダンジョンに来てよかったわあ!」


「喧嘩するのゎ ぃゃだけど。。。 ぉゃっゎ ぅれしぃ。。。」


 概ね反応はよし、っつうかドロップの話を聞いてクルックル手のひら返したやつが大半だな。


 同じ説明を二階層の住人たちにもするけど、人族がそこに行くためには、一階層を踏破する必要があるわけだ。


 だから、当分の間は人族が来ない、いつも通りの日々が続くと思うわ。


 なのに、どうして二階層の住人であるリリィを連れてきたかといえばだ。


 彼女にはダンジョンの受付と、ちょっとした説明役をお願いすることにしたからだな。


 なので、先立って一階層の住人との顔合わせをしつつ、実際に一階層を見てもらおうと思ってわざわざ足を運んでもらったのさ。


 受付はまあ、そのまんまだな。


 ダンジョンの入口に入退場を管理する施設を作ったんだが、だったら色々と出来るように冒険者ギルドにしたらよくね? ってなってな。


 ギルドと言えば、やっぱ受付嬢さんよねえ……と、言うことで『誰かやるか?』つったら、リリィが手を上げたので、そのまま採用ってことになったわけ。


 んで、受付嬢さんのお仕事と言えば、ルーキーへの説明もあるだろ?


 ここでは死なないよーってのと、ドロップアイテムの説明、それに加えて、まだ当分いけねーだろうけど、二階層にあるウサ族の集落についての注意点だな。


 あそこはダンジョン内の村という扱いで非戦闘エリアに設定されていてな、いずれはそこに限っては移動制限を外し、各階層から遊びに行けるようにする予定なんだ。


 そんな場所なので、集落内での喧嘩は一切禁止。


 いつもいがみ合ってるお前らも、ここではまあ仲良く飲めやって場所にするんだ。

 

 ウサ族の村で問題を起こした『冒険者』は入り口に強制送還された上でダンジョン出禁にするぞと、そういった説明を含めて簡単な質問にも答えてもらうってわけよ。


 以上、くっそ長い回想シーンでした! 


 ◇◆◇


 てなわけでな。


 俺の思いつきからトントン拍子に話が進んで、あっという間に出来てしまったアミューズメント施設『塩のダンジョン』によ、明日『ファースト冒険者』としてキンタたち狩人をぶち込んでやろうと思ってんだ。


 今まで森でしか狩りをしたことが無かった連中がよ、飛び道具主体の装備でどこまでやれるのか……。


 明日がとても楽しみだぜ……クックック……。



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