第20話 はじめてのお風呂
パンさんのしょうもない企みが阻止された結果、豪華すぎるほど豪華な宿屋が爆誕してしまったわけだが。
今後のことを考えると、部屋数が少なめに感じるので、そこは後からゆっくりと増築してもらおうと思う。
それよりも、この宿、お風呂があるんですよねえ。
これと食堂に関してはパンさんにグッジョブを送りたいっていうか、それがあったからこそ、今回は許すことにしたんだよ。
始まりの村ってさ、風呂がねえんだよな。
まあ、これに関しては、ナーロッパあるあるネタだからさ、キンタにそれとなく聞いた時に――
「身体の汚れ? 川で水浴びしたり、寝る前に身体拭いてりゃよくね?」
――と、言われて、まあそうだろうなと。
むしろ、予想していたよりも清潔なレベルだわと、感心したんだよな。
でもやっぱりさ、お湯で洗って、お湯に浸かったほうが清潔な感じがするじゃん?
なので、今回たっぷりとお風呂を体験していただいて……もう、完全に風呂の魅力に取り憑かれていただいて……。
始まりの村にも作りたいって思ってもらえたらなって。
「おーい、ユウー。暇だぞー、なんかねえのかー」
おっと、暇を持て余したキンタたちがぞろぞろと降りてきたわ。
ちょうどいいので、さっそく風呂に誘導していきたいと思いまーす。
「はーい、みなさん。お風呂の時間ですよー。ん、そこのキンタ君、お風呂って何だ? って質問しようとしましたね? それでは一度みんなで見学してみましょう」
マジで聞こうとしてたのか、キンタが口を「お」にしたまま固まってるわ。
こいつほんとワンパターンで笑う。
「はい、ここから先が浴室になりますので、ここで靴を脱いで下さいね」
「おいなんだよユウ、気持ち悪い喋り方しやがってよ? つうか、なんで靴を脱がなきゃねえんだ?」
「うるさいですね……良いから黙って従っとけよ……」
「お、おう……わりい……」
浴室だぞ? 身体を清める場所を土足で汚してどうすんだよ。
まあ、まだそう言う場所だって説明をしてねえけどな!
「本来はこの青い布の入り口から男性が、赤い布の入り口から女性がそれぞれ分かれて入ります。はい、キンタ君『なんで別れる必要があるんだ』って顔してますね、それは中に入って説明します」
口をパクパクとさせて固まっているキンタ。
すまねえ、今日は質問コーナーをやってる暇がねえんだ。
「はい、ここが脱衣所です。ここで服を脱いで貰うことになりますが、さっき言ったように、男女で分かれていますし、外からは絶対に見えないので安心して下さい……って、キンタこら! まだ脱ぐんじゃねえ! 大体にしてなにする場所か言ってねえだろうがよ!」
「ああいや……脱ぐって言うからよ……ユウが言うことだから、面白えことが起きるんじゃねえかなって……」
皆から笑われてバツが悪そうな顔をするキンタ。
お前ほんと、生き急ぎ過ぎだぞ。
「服を脱いだら、ここから浴場に入ります。向こうに大きな容器が見えますね? あれは浴槽と言って、お湯をためる物です。先に身体を清めてからあれに浸かりますので、皆で入ってもお湯が汚れにくいんですねー」
「えーーー! アレの中身って全部お湯なの?」
「そうだよ、リットちゃん。水浴びだと寒くなっちゃうだろ? でもお湯ならぽかぽか温かいまま長く入ってられるんだ」
「ユウさん……早速試したいんだけどいいかしら?」
「ああ、勿論……って、おいこらマーサ! 脱ぐんじゃねえ!」
「あら、あたしとしたことが……」
「……なんだか、皆も待ちきれなくなってるし、早速試してみるか。パンさん、マーサたちを女湯に連れてって色々教えてやって」
「はあい……はあ、せっかく立派に作ってもらったのに……はあ……」
あいつ……まだ引きずってやがる……。
しばらくの間、モルモルに監視させとかねえとな……あの様子だと、またこっそりと神殿作りそうだわ。
「よし、それじゃあ男ども! 俺が風呂の何たるかを教えたる! 俺に続けえ!」
「「「おおおおーーーー!!!!」」」
「あーうるさ。じゃあ、私たちは今から女風呂に向かいますよー。私はマーサに教えるから、ルーちゃんはリットに入り方教えてあげてねえ」
「はーーい!」
うーん、向こうはなんだか華やかで良いな……って熱苦しいノリにしてるのは俺なんだけどさ。
パンさんたちが去っていったので、みんな仲良く裸になって浴室へ。
「野郎ども、よく見やがれ、こいつが蛇口だ!」
「ゴクリ……」
「これを捻ると湯が、こっちを捻ると水が出る。水と湯を丁度よく混ぜて火傷しないよう身体を洗え!」
「うおおおおお! すげえっす、すげえっす! どうなってるんすかこれえ!」
「ザック! 興味深いのはわかっけど、後で見せるから今は風呂に集中しろ!!」
「うっひょお! 泉みてえなのに、冷たくねえ! おもしれえ!」
「こぉおおるぁああ! キンタァ! 浴槽に飛び込むんじゃねえよ馬鹿野郎! あーこらこら! 狩人共! 走るな! 風呂で走ると……」
「いっでえ!」
「転ぶんだよ! ええい、ちょっとお前らおちつけえ!」
……
…
「はい、二人とも注目ー。これはシャンプーといって、髪を洗うものです。こんな感じに手に出して……軽く泡立ててから髪に馴染ませて……そうそう、マーサ上手ねー」
「リットちゃん、こうするんだよ」
「わーすごいね、モコモコしてる」
「リットちゃん、流すから目をつぶっててねー。はいはい、ルーちゃんもね-……でね、シャンプーを流したら今度はこのコンディショナーを……そうそう、ね? 良い香りでしょー、これ私もお気に入りでー……」
……
…
「うおおおおお!!!! 泳ぎやすくて良いなここ!」
「泳ぐ場所じゃねえ! やめろばかたれども!」
……
…
「はー……シャンプーもいいけど、セッケンもいいわね。肌がますます白くなったみたい」
「顔を洗うときはね、こうしてたっぷりと泡立てて……擦らないように……そうそう」
「あはは、ルーちゃん、おひげみたいになってるよ」
「これね、サンタさんって言ってね……」
……
…
「あっぢいいいい!!! 何すんだヤスタカ!! ばかがよ! お前も喰らえ!!! おらああ!!!」
「わりい、ユウさん! そっちにいくとは――あっぢい! ちくしょう、ザックお前もくらえ!」
「あっづう!? なにするんすか! あーもう、せっかく仕組みがわかりかけてたのに! おりゃあ!」
「ぎゃあああ!? なんで俺に飛ばすんだよお!」
「あ、すいませんっす、キンタさん……なんか手が勝手に」
「お前らいい加減にしろおおおお!」
……
…
「ルーちゃん髪、綺麗だなあって思ってたの。私もこのシャンプーを使ってれば綺麗になれるかなー?」
「なれるよー、ほら、自分の髪をさわってみて? もうすべすべだよ?」
「ほんとだあ」
「それでね、マーサ。ゆっくりお湯に浸かるとね、汗が出てくるでしょう? これがお肌に良くてね……」
「お湯って凄いのね……だからパンさん、そんなに肌がきれいなのねえ」
「あらやだ、褒めてもビールしかでないわよ……ていうか、男ども、くっそうるさいわねえ……」
◇
「つ……疲れた……おう、お前ら、用意しておいた服に着替えろ……お前らが着ていた服は洗濯しておくからよ……」
……
…
「良いお湯だったわねー、あ、うちで用意した服に着替えてね。二人の服は、洗濯しておいてあげるから」




