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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第18話 我が家へ……

 キンタ一家にザック、それと狩人五人を引き連れて、ゾロゾロと俺たちの家に向かっている。


 発足したばかりでくっそ忙しいだろう時期に、村長不在という大問題が発生しているわけだが……そこはまあ、シゲミチを説得して、村長代理のタスキを掛けて置いてきたので何も心配する事はないだろう。


 そもそもの話、今のキンタに実務は無理だ。


 だから、キンタ村長には視察という、重要なお仕事をしてもらい、補佐役であり、代理人であるシゲミチくんに頑張ってもらうのが一番丸いのである。


 ……わりいな、シゲミチ。後でたっぷりお礼すっから……マジでがんばってくれ……。


 というわけで、キンタリーダー率いる「始まりの村視察団」の皆様は、現在女神の森をエッホエッホと歩いているわけなのですが……。

 

 リットちゃんとマーサが、穏やかな顔で歩けるレベルでなんも起きないんですわ。


 ラウベーラが居なくなったから、魔獣の数が増えてはいるんだけど、狩人たちがまともに狩りをできるようになったおかげで、結局プラマイゼロに。


 俺が整備した街道沿いを歩いている限りは、ほぼほぼ魔獣が出ないっつう、狩人たちにとっては退屈すぎる時間がただひたすらに流れている。


 まあ、今回はリットちゃんたちがいるからな。


 狩人連中が退屈なくらいでいいのさ。


 ……まあ、俺もかなり暇なんだけどな……。


 ……

 … 


 森に入ってから三時間程が経ちまして。

 

 マジで何も起きなかったので、当初の予定通り、日暮れ前に森を抜けることが出来ました。


 現在の時刻は十八時ちょい前。


 だいたい十九時くらいに日が暮れるので、今から野営の準備をしても十分間に合いそうだな。

 

「ようし、みんな集合だ。今日はここで野営をするんだが、そのために寝床を組み立ててもらいたいんだ」


 ストレージから組み立て済みテントを取り出して見せると、全員が嬉しそうな顔をする。


「それって、ユウさんたちが広場でお泊りしてるやつだよね?」


「そうだよ、リットちゃん。みんなの分も用意してきたから、協力して組み立ててね」


 なんて言いながら、キンタ一家用と、狩人+ザック用として五人用テントを三張り出してやると、うおおおおっと、みんなから声が上がった。


 なんでも、あのテントを見るたびに中に入ってみたい、あれで一夜を明かしてみたいと、どこか憧れの気持ちがあったのだという。


「じゃあ、組み立て方を教えるから、一緒に組んでくぞー。まずこのでっかい布を広げてな――」


 説明用にテントをもう一張り出し、周りにあわせてゆっくりと組み立てていく。

 

 撥水布を広げて、ポールを通して……――


 ――張り綱をしっかりと引っぱり、ペグを打って……完成だ。


 大丈夫かなと心配だったが、日暮れ前にきちんと全員が組み上げることができた。


 ちょいちょいミスはあったけど、致命的なのが無かったのと、向きや加減を誤ってポールを圧し折るような脳筋が居なかったのが勝因だな。 


「いやあ、便利なものだな、このテントとかいうやつはよ……」


 キンタがテントから出たり入ったりしながらしみじみと言う。


「お前ら狩人は、いずれ森の奥まで行くようになるだろ? そん時これがあったら楽になるよな」


「確かに! なあ、ユウ。これって貰えたりすんのか?」


「んー……これはあげらんねえかな」


「ええー、いいじゃねえかよお、くれよお!」


 目をキラキラとさせながらおねだりをするキンタ。


 お前がやっても気持ちが悪いだけで、俺の心はミリとも動かねんだわ……。


 今回は、あの村に色々とあげちゃったけどさあ、ほんとはあんましやりたくねえのよ。


 店舗を作ってやったのは、そうでもしねえと間に合わねえからだったからな。


 テントなんてもんは、そこまで急いで用意しなきゃ無いもんでもないだろ?


 それに、防水布……いや、撥水布の用意はまだ無理だろうけど、普通の布を使ったテントなら、すぐに作れるようになるだろうし……てことで、ザックおいでおいで……そう、お前。


 ちょっとこっち来て。


「なんすか、ユウさん」


「テントを一張りやるからよ、弓みたいにまた設計図かいてくんね?」


「うおおお、まじっすか! やります!」


「設計図が完成したら、木工が得意な人や、縫製が得意な人に見せてテントを作ってもらいな。材料費がこんくらい……手間がこんくらいで……売値はこんなもんだな」


「ふむふむ……できたら何処で売ったらいいんすか?」


「あー、そうだなあ……悪いけど、当分の間お前がしきってくんね?」


「俺っすか? ああまあ、ダンさんも慣れてきたし、他の鍛冶師も習いに来るらしいっすから……うん、大丈夫っす」


「……おお? な、なあユウ。それってあれか? ザックから買えるようになるってことか?」


 すっかり蚊帳の外に追いやられていたキンタが、軽く興奮しながらしがみついてきた。


「くっつくんじゃねえ! ああ、売るだろうよ。直ぐじゃないだろうけど、コンポジットボウよりかは時間がかからねえと思うぜ、なあザック」


「そうっすね。仕組みは簡単なんで、木工のヨウムさんと、布は……シノブの母ちゃん辺りに頼めば、三日もあれば最初の一張りができると思います」


 おお……頼もしいぜ。


 もうすでに発注先が頭の中にあるとは、雑に頼んだけど適役だったみたいだな。


「材料は大丈夫そ? 木はいいだろうが、布とかあまるもんじゃねえだろ」


「あー、それが余ってるんすよ」


「え、まじで?」


「最近人が増えたじゃないっすか? それでコットコ農家が張り切っちまって、糸がくっそ余ってるらしいんですよね。だから、言えば喜んで布にしてくれると思いますよ」


 なるほどな……つうか、服や布団の材料どうしてんだろうと思ってたが、綿花的なのがあるんだな……。


 そうだよな、最初に来たときの俺は、肉と交換で野菜って言ったもんな……そら綿花的なのは出てこねえわ。


 あん時に、もっとちゃんと調べていれば、もっと早くにモコモコお布団が手に入れられてたってことかよ……ちくしょう。


「じゃあ、材料は大丈夫そうか。ほんとは、布をさらに加工して撥水……水を弾くようにすりゃ完璧なんだが、それはまた追々だなー」


「なんだか、話がまたわかんねえことになってるが、そのうち村で買えるってことでいいんだな?」


「ああ、ザックから買える。一人が広々と使える二人用が400リパン、今日のと同じ大きさの五人用が900リパンだから、頑張って稼いでくれよな!」


「げえ……これと同じ奴は弓よりたけえのかよ……がんばらねえとなあ」


 頭を抱えるキンタ。


 クックック……稼げ稼げ……弓のメンテ代に改良矢の補充代、それにテントの購入費用と、仕事の維持費の大切さを噛みしめるが良い。


 話が聞こえていたのか、狩人たちが等しく頭を抱えている……。


 こいつらはキンタと違ってコンポジットボウをまだ持ってねえから、より大変だろうなあ……。


 まあ、がんばって……。


 って、ザックが大人しいな? 何やって……テントのシートを撫でながらなんかぶつくさ言ってんな……。 


「水を弾く……確かにこの手触り、ただの布じゃあない……目も細かいし……どうやってんだこれ……」


 手でさわさわと撫でながら、メモを取ってる……すげえな、さっそく解析してんのかよ。

 

「目を細かくするには、織る道具から考えないと……水対策は……蝋か何かを塗ればいけるか?」


 うーむ、なんか既に答えを出しつつあるな……てか、こりゃ完全に自分の世界にダイブしてるわ。


 邪魔をするのも悪いし、俺は退散するとしよう……おら、キンタもあっちいったいった!



 しかしカオスな場になってしまったな……。


 テントを口説いてるようにしか見えないザックに、その周りで頭を抱えるキンタたち……。


 ここだけ見れば、ヤベえ空気しか感じられないのだが、視線を別の方向に向けると、リットちゃんとルーちゃんが、それぞれテントからピョコピョコと顔を入れたり出したりして、キャッキャウフフと笑い合ってるのが見える。


 ああ……向こうのテントで消耗した心が回復していくのを感じる……。


 パンさんは……マーサとなんか話してるな? 奥様トークってやつかな……パンさんは奥様じゃねえけど。


 んー……そろそろ暗くなるか。


 さっさと夕食の支度をしねえとな……と、食材を出して、包丁を使い始めたところでマーサがやってきた。


「ユウさん、食事の支度をするなら呼んでよー。私の仕事が無くなっちゃうじゃないの」


 見てるかパンさん、こういうとこやぞ? 


 ビール片手にブロック肉をガン見してっけど、お前に足りねーのはこういう所やからな?


「おう、悪いね。じゃあこの肉をこんな具合に薄く切ってくれ」


 折角のキャンプなのでカレーを作りたかったけど、香辛料という最大の壁があるからな……。


 俺たちだけなら、パンさんパシらせてカレールーを買ってきてもらうんだけど、キンタたちがいるから流石に自重。


 今回は豚汁……もといヒッグホッグ汁を作った。

 

 今日の朝、広場にひっくり返ってた連中に、朝飯だって出したら好評だったろ? 


 好評すぎて俺の分まで食われちまったら、なんだか食いたくなってな……。


 なんか今日一日ずっと、頭の片隅でぐるぐるしてたから作っちゃったわ。


 野外で豚汁を食う時は合わせてオニギリがあればゴキゲンなんだけど、お米さんはまだ原種すら発見できてないから、そいつはまたいつかのお楽しみってこったな。


「わ、これおいしいね」


「でしょー。これね、ユウがね、たまに作ってくれるトンジルっていうスープなんだ」


「へー、ねえ、お母さん。作り方覚えた?」


「ええ、一緒に作ったからね。ただ、ミソというのを使うから……ねえ、ユウさん。ミソってどうやって作るの?」


 あー……味噌なあ。


 それもまた、醤油と合わせて村で作ってもらいたいところだけど、発酵食品ってまだちょっと難しいだろうからなー……。


 そもそもの話、この世界だと、どうも麹じゃないファンタジー的な何者かが発酵周りを担っているらしいから、俺には教えられねえんだよな……。


 酒を作ってる土地に行く予定だし、そこの住人たちなら、なにか取っ掛かりみたいなもんを持ってる可能性はある。


 だから当分の間は我慢を……うっ……マーサとリットちゃんの眼力がやべえ。


「……作り方がちょっと難しいから、しばらくの間は俺が作ったのを売るよ……後でそういうのを売るお店をやる人を見つけないとな……」


「たしか、ヒロちゃんが計算得意だったはずだから、聞いてみるわ!」


「やったね、お母さん。これで美味しいスープを飲めるね」


 くっ……! 俺が決めたルールが……俺が作ったものは住人たちに流さないっていう、鉄の掟がぶち壊されまくっている……!


「……どんまい。あれくらいなら大丈夫だし、マーサとリットちゃんには良くしておくといいって、女神のカンが告げてるから、あれで良かったのよ……」


 パンさん……。


「なんだか……今日のパンさんは女神様みたいだわ……」


「女神だっつーの!」


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