第17話 宴の後で
「おうー ユウううううう ありがとおなあああ! お前のお陰でええ……おおおおお俺達わあああああ……」
くっそキンタのやつ、べろんべろんに酔っ払ってるじゃねえか。
正月だしさあ、酔うほど楽しんでくれているのも嬉しいけどさあ……これじゃあ相談もなにもできねーっつーの。
バンバン飲ませまくった俺のせいじゃねーかって?
いいや、キンタはいい大人なんだ、自重して飲むことをおぼえて貰わないと。
うん? 今日初めて飲んだんだからしゃあないやろって?
それはそう。
というわけで、こんなこともあろうかと用意しておいたこれを使いましょう。
「おうおう、キンタ大丈夫か? ほら、これを飲みな……」
パンさん直送の、やべえ水を使用したポーション……こいつを飲めば、アルコールなんて病気や怪我と一緒にスポーンと飛んでくってわけさあ……。
「うっ……なんだこれ……なんだか……頭が冴えてきたな……む、ユウか。どうしたんだ?」
酔い覚ましとして使ったのは始めてだが、すっげえ効き目だな、おい。
「えっとな、この村をもっと発展させるためにさ、見学会を開こうと思うんだ」
「この間の試射会みたいな奴でもすんのか?」
「似たようなもんだが、行くのはキンタ一家三人と、狩人から腕利きの連中を何人か、それとザックだよ」
「リットやマーサもかあ……じゃあ、狩りのなにかじゃねえんだな」
あからさまにテンションがぶち下がってて笑う。
どうせ、新しい狩りの道具のお披露目会か何かだと思ったんだろうが、そうポンポンとやれるもんじゃねえよ。
まあ……説明を最後まで聞いたら、手のひら返してニッコニコになるだろうけどな。
「行き先はな、俺が住んでいるところだ」
「マジかよ、ユウの家っつうと森の向こうだろお? どんだけかかるんだよ……」
「そこまで遠くはねえよ。明日の昼に出発して、森の出口で一泊。朝になったら出発して……そうだな、夕方頃には着くと思うぞ」
「明日って、ずいぶんと急だな……つうかよ、俺ら一家にザックで四人、狩人連中に言えば、確実にみんな行きたがるだろうから……まあ、五人選ぶとして全部で九人だろ? 泊まる場所は大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だ。寝るところはちゃんと用意してある(と思う)から……」
「ならいいけどよ……けどよ、なんでまた、お前の家を見にわざわざいかなきゃならないんだ?」
不思議そうな顔をして首を傾げているが、俺は「家を見学に来い」とは一言も言ってないんだよな。
俺が見せたいのは「俺が住んでいる」場所……つまり、家も対象っちゃそうだが、それ以外の目玉が別にあるんだよ。
「家に関しては、マーサやリットちゃん、それにザック向けだな。俺らの家には、便利な魔導具やら、仕組みやらが色々あるからよ、見て触って刺激を受けてもらいたいわけよ」
「それでリットまで連れて行くってわけか……じゃあ、俺たち狩人はどうなんだ? わざわざ連れて行くってことは他に何かお楽しみがあるんだろう?」
「ああ、それはな……」
「それは?」
「ついてからのお楽しみだ!」
「はあ? なんだよお楽しみって!」
「まあ、明日は狩りに出掛けるときの装備で来てくれよ。お前ら狩人に言えるのはそれだけだ」
「狩りの……てこたあ、やっぱ狩りでもすんのか?」
納得したようなしないような、そんな顔でぶつぶつと言っているが、ウキウキしているのは表情を見ればわかる。
なんか、魔獣の森で狩りができるかも……なんて言ってるな……それはちょっと早いかな……けど、狩人たちにはそれ以上の驚きをお見舞いしてやるから、マジで楽しみにしといてくれよな。
つうか、せっかく酔いを覚ましてやったっていうのに『んじゃ、みんなに連絡してくるわ』と、また狩人連中と飲み始めやがった。
明日の昼過ぎには出発するぞって言ったのにこいつったらもう……。
取り敢えず酔い醒ましの薬を人数分渡して、明日きちんと集合するよう伝えてテントに向かった。
少し名残惜しいが、明日はもう家に向かって出発しなきゃならねえからな……。
正月なんだから、二~三日くらい村でのんびりすりゃあ良いのに、誰がこんな無茶苦茶な予定を立てたんだよ!
……俺だわ。
さっさとアレをキンタたちにお見舞いして、リアクションをみたい、それが今年の初笑いだわ! って、悪辣なことを考えた俺のせいだわ……。
過ぎたことはしょうがあるめえ……さあ、ねよねよ……。
……と、広場の片隅に立てたテントに潜り込んで見れば……ルーちゃんに腕枕をしたパンさんが、ケツを丸出しにしていびきをかいていた……。
丸出して……。
半ケツならまだわかるぜ? なんで丸出しになってんだよ……。
黙っていれば可愛いパンさんのケツですよ? 健康な男子たる俺が、なんとも思わないわけはない……のだけれども。
グウガアと喧しくいびきをかきつつ、ポリポリとケツを掻いているのを見るとこう……萎えちまうわけで。
ムラムラとナエナエが拮抗して、どんな顔すりゃいいのか解んなくなっちまったので、取りあえずパンさんに毛布をかけて何も見なかった事にすることにしました。
……クッソ、いろんな意味で身体に悪い事してんじゃねえよ!
◇
翌朝、テントから這い出ると……キンタが満面の笑みを浮かべながら狩人共の口にポーションを突っ込んで飲ませていた。
キンタのやつ……目がギンギンになってやがる……。
多分、昨夜ポーションを飲ませてからずっと寝ないで飲み続けてたんだろうな……。
それなのに、あのハツラツとした顔よ。
やっぱあのポーションやっべえわ……。
「よう、ユウ! おはようさん! この薬凄えな! 朝方、眠くなってきたからまた飲んだんだけどよ、あっという間に全部スッキリしたぜ!」
「お、おう……そりゃ良かったよ……そんだけ元気ならよ、狩人だけじゃなくて、他の村人たちにも薬を飲ませて起こしてくれや……これだけありゃあ足りるだろ」
「お、わりいな。おーい、お前ら手伝ってくれー」
「「「うーっす!」」」
「んじゃ、俺は朝飯代わりのスープを用意すっから、目覚めた連中連れてきてくれ」
「お、そりゃありがてえ! じゃ、いってくるわ」
狩人たちが、打ち上げられたトドのように横たわる村人たちの口にポーション瓶を突っ込んでいく……。
あちらこちらから「うおおおおお!」と、目覚めの声が聞こえてくる。
っと、スープの用意をしなくちゃな。
つっても、昨夜使ったテーブルに、ストレージからスープ鍋と器と匙を出したらおしまいだ。
ほうらやってきた。
香りにつられた村人たちが、わらわらと集まってきたぞお。
「ようし、ここに器と匙があっから、後は自分たちでやってくれー」
給食係をするのも面倒だったので、雑にセルフにしたが、みんなお行儀よく並んでスープを盛っては去っていく……って、なかなか列が途切れねえな……よく見りゃループしてるじゃねえか!
まあ、飲んだ後の汁物って美味いからな。
俺も並々と注いだ味噌汁をグイグイと行っちゃうもの……って、マジで途切れねえな?
……あー、わかったわ。
このスープ、あれだ、豚汁だわ。
正確に言えば、ヒッグホッグ汁だわ……。
肉だもんなあ、そら途切れねえわ……あ、鍋が空になった。
これでようやく……
「ユウさーん、空になったんだけどー!」
「うるせえ、だったらもうおしまいだよ! ほら、帰った帰った!」
「「「えー……」」」
しぶとくおかわりコールをする村人たちだったが、マジでもう無いっつうのが伝わったのか、渋々とした顔で去っていった……。
マジでこいつらほんとさあ……。
さて……邪魔な肉ゾンビ共が居なくなったところでお掃除だ。
つっても、スマホを掲げて、ちょいちょいっとやりゃあ、あっという間に終わっちまうんだけどな。
雑にストレージにぶち込むだけでしわけしてくれんだもん、マジで便利だわ。
次の祭りからは、開始から片付けまでぜーんぶ村人たちに任せねえとな。
キンタはあれだから、シゲミチくんに実行委員長をお任せしたいところだが、アイツに結構仕事振っちまってるからな……。
このままじゃグレちまうっていうか、ブラック企業ムーブは俺だって嫌だ。
彼の部下っていうか、役場職員的な奴らをどうにかみっけないとなあ。
……腹減ったな。
豚汁はもう無くなっちまったから……ああ、ムックル汁があったわ……はあ……しみじみうめえ。
きれいになった広場で、まったりとムックル汁を飲んでいると、パンさんが腹を掻きながらノソノソとやってきた。
……ケツは……しまってあるな。
「ふぁあ~~……おはよぉ……なんかいい匂い……ユウー、あたしにもちょうだい……」
ほんとこいつはよお……脳天気なつらしやがって。
誰のせいで寝不足だと思ってんだよ……。
「おはようございます女神様。ケツを丸出しでぐっすりでしたが、御風邪を召してはいませんか?」
「ふぇ? ケ、ケツ丸出し? なんのことよ!」
あっ……これ、身に覚えがある顔だ……。
起きたらケツが全部出ててびっくりしたんだろうな……。
「私めの様な者には目の毒ですので、お召し物はどうかきちんとしてくださいませ」
「は、はあ? て、ててて適当なこと言ってんじゃないわよ! そ、そそそ、それより、それ! おみそ汁、あたしにもちょうだいよ!」
こいつ……強引に話を終わらせやがった。
まあ、あれ以上引っ張ると、俺にもダメージが来てたろうからな……今日はこれくらいで許してやるよ。
「ほれ、ムックル汁だ……暖まるぞ」
「わあ……しみじみと美味しいわね……」
ほんとにな。
「パンさんよお、マジで言うけど、身体を冷やすような寝方はマジで良くねえから、次からは気をつけてくれよな……」
「ぶっ……ごほっごほ……わ、わかってるわよ……気をつけるから、もういいでしょ!」
ほんと頼むぜ……? 神様が身体を壊すかどうかは知らねえが、少なくとも俺は色んな意味でぶっ壊れそうだったんだからよ……。




