第15話 年越しの日
……ふう。
日がだいぶ西に傾き、空が真っ赤に染まっている……そう、夕方である。
広場には多くの村人たちが集い、なんか知らんが肉が食えるらしいと、はよ肉を出せと、わちゃわちゃ、ざわざわとしている。
それもそのはず、今回の宴会はビュッフェスタイル……そう、広場に置かれたテーブルに、豪華な料理がずらりと並んでいるからだ。
……こりゃ、はよしねえと暴動になりかねん。
襲われる前に、雑に開会しちまおう。
「今日はたくさんのお祝いをするために、こうして皆に集まってもらった」
「お祝いー?」
「ああ、ダンとザックがすっげえ弓を完成させ、それを使った狩人たちがリブッカ――でっけえ魔獣を三頭も狩れたってのが、まずひとつ!」
「おお! あれ、とうとうできたのか!」
「スゲエよな、それを使いこなせる狩人たちもスゲエぜ!」
「リブッカってあれだろ、前にユウさんがパンチでやっつけたやつ!」
「ユウサンもたいがいやべえよな……」
俺のことは良いんだよ! くっそ、キラキラした目でみんじゃねえ!
「それと、肉屋と八百屋ができたんだ。前に広場でやったみたいにリパンで肉や野菜を買えるようになったし、狩人は獲物を、農家は野菜を買い取ってもらえるようになったぞ」
「おお……それはありがたいな。野菜を持ってウロウロしなくてよくなるのか」
「獲物も地味に重てえからなあ。シエラさんがやるんだろ? 楽になるぜえ」
「そのリパンを使うようになったってのも、めでたいことかもしれんなあ」
「生活が一変するんだ、めでてえにちがいねえ!」
さっきまで、さっさと食わせろと、ギラギラした視線を送っていた奴らとは思えぬほど、雰囲気が穏やかになってきた。
場の空気が、タダメシ広場のものから、お祝いの場のものに変わってきた証拠だな。
「そんな新しいことだらけのこの土地は、村という新しい集まりになったわけだ。そして……今日はそんな村で迎える年越しの日だ!」
「トシコシ……?」
年越しの意味がわかってないから、何人か首をかしげてるが……説明はしない。
なぜなら、その方が後々面白いからさ!
「つーわけで、今日の宴会は夜が更けても終わらねえ……そう、暗くなっても、眠くなってもまだまだ続く長い宴になる……さあ、お前ら、準備はいいな? 今日はたっぷり楽しんでいってくれ!」
「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」
うん……流石はこの村の連中だ。
年越しの意味なんてどうでもいいぜとばかりに、今はとにかく肉だと、肉が食えると大盛り上がりだぜ。
それでいいのかって? 良いんだよ、とりあえず。
なんだかわからんが、とにかくめでたいと、まずはたっぷり飲み食いしてくれたらそれでいいのさ。
さあ、食べて飲んで、たっぷりと楽しんでくれ!
◆◇
開始から二時間が経過し……。
料理はもう、大好評でな。
ちょいちょいと、ストレージから出して補充をしてるんだけど、最後まで持つか不安になるペースで減っていくんだ。
料理に関しては、まあ……予想はしてたけど、酒も結構好評でなあ。
ビールが苦手でも、酒は飲みたいってやつも居るだろうと、ジャモのアクアビット的な酒にラッツと砂糖を入れて作った果実酒みたいなのも出したんだが、これが女性たちにうけてうけて……。
ビール片手に盛り上がるおっさん共に負けないレベルでカッパカッパ開けてんの。
なにがやべえって、ジャモの酒って蒸留酒なんだよ……ビールより度数が高いわけ。
それを、ビールと同じペースで飲んで平気な顔してんだもん。
こいつら、中身ドワーフかなんかなんじゃねえのか……?
見た目は一般的な――ヒュームとか、普人種なんて呼ばれるアレにしかみえんが、リプラシルはバグってるからな……。
見た目と種族がチグハグってアレが無いとは限らねえ……一応確認するか……向こうで踊ってるキンタを鑑定……チッ、鑑定先生には種族が出ねえんだった……。
まあ……杞憂か。
流石に、そこまでアレじゃなかろう……。
しっかし、ほんとガンガン行くよなあ。
まあ、いざって時は状態異常回復薬(パン産ポーション)があるからな。
明らかにヤバそうな奴には、こいつを飲ませりゃ直ぐに回復ってわけよ。
……っと、そろそろ頃合いかな?
時刻は現在二十三時五十六分……記念すべき日まであと僅か。
子供や、眠い人は無理をせず帰っていいぞと言ったんだけど、帰ったのは数人だけで、ほぼほぼ変わらない人数で未だに盛り上がり続けている。
ほんとこいつら妙に頑丈だよな……飲むペースも変わらずヤベエのに、悪酔いしてるようなやつもいねえしよ……っと、そろそろ良い時間だな。
「おーい、みんなー聞いてくれー」
「なんだー?」
「今度は何が始まるんだよー」
「ユウサンだ! ユウサンがまたなにかやるぞ!」
「これからな、新しい『年』が始まるんだ! さあ、俺と一緒にカウントダウンすっぞ!」
なんて言ってみたけれど、カウントダウンの意味なんて当然通じやしねえわけで。
最初は俺とパン、ルーちゃんとクロベエだけでカウントダウンしていたんだけど、なんだかわからんが面白そうだと、数字を逆に言えば良いのだと理解した村人たちが声を合わせ始めた。
カウントが進むごとに、その声が増えていき……そして、広場にいる全員が声を重ねて……――
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!」
さあ、新しい年のはじまりだ!




