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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第13話 NIKUYA

 予想以上の成果に、狩人たちも、弓を作ったダンとザックも、みんなニッコニコで村の門をくぐってドヤ顔凱旋を果たしたわけだが……。


 さっき「これからは肉屋に売って分配するのだ」と、言っちゃったわけだけど、その肝心の肉屋がまだいねえんだったわ。


 そうだった……後でキンタにやらせようと思ってたから、まだいねえんだよな。


 しょうがねえ……今日のところは俺が……――


 ――待てよ。


 今日はこの後、わーっと盛大なお祝いをする予定なんだ。


 通貨を導入した記念のお祝い、ダンとザックが弓を完成させたお祝い、狩りが大成功になったお祝い……そして――


 ……そうだな、いっぱいお祝いするんだから、ファーストブッチャーを爆誕させて、一緒にお祝いしたらええねん。


 ……カッコつけて英語で言ってみたけどプロレスラーみたいになっちゃったわ。


 新たな職業の誕生は、今日という日に相応しいわ。


 そうと決まれば……。


「肉屋さんやりたいやつ、よっといでー!」


 ……って、これで来るほど簡単な奴らじゃ――


「はい! はいはい! わたし、やりたいでーす!」


 簡単な奴らだったわ……。


「ええと、あなたは……」


「シエラって言います! そこでボサっとしてる、狩人のマサアキの妻です!」


 おお……元気いっぱいじゃ……。


「シエラね。ええと、肉屋って大変だけど大丈夫そ?」


「大丈夫です! ロップやクッカなら、バラすの慣れてるし、でっかいのも、練習すれば行けるようになると思います!」


 流石は狩人の奥さんだ、肉の扱いはお手の物ってわけか。


 大型魔獣の解体は……大変そうだけど、まあロップバラせるなら、言う通り練習してりゃ上手くなりそうだよな。


 だって、シエラさん……【解体 LV2】って、ステータスに書いてるんだもん。


 人妻のステータスを勝手に見るスケベ野郎だって? ちゃ、ちゃうねん。


 妙に自信満々だなあって。そういや、この世界の人らってスキル持ってるよなあって。


 バグの枷から解放されたんなら、短期間で大化けしてんじゃね? 解体スキルとか持ってんじゃね? 


 そう思ったら、好奇心が抑えきれなくてさあ……見たら案の定ってわけなのよ。


 決して、人妻の個人情報を見たかったわけじゃねえぞ! こればっかりはマジだから!


「ユウさん?」


「わ、びっくりした! そ、そうだな、シエラは解体上手そうだし、この村で最初の肉屋さんをお願いすることにするよ!」


「やったあ! マサアキ、そういうことだから、あんたも手伝ってね」


「え? ええ……しょうがねえなあ」


 都合がいいことに、シエラたちの家の隣が空き地だったので、そこに肉屋の店舗を建てることにしたのだが、今後のことを考え、村長であるキンタを呼び、立ち会ってもらった。


「なんで俺が来なきゃならねえんだ?」


「ほら、キンタは村の代表になっただろ。これからは、誰のものでもない土地になにかをするときには、必ずキンタの許可を取ることになったからさ、立ち会ってもらったんだよ」


「えぇ……別に要らねえんじゃねえの?」


「いいのか? みんなが好き勝手にやっちゃうと、後からキンタの仕事が増えるんだぞ? どこに誰がいつから住んでいるのか、それを後から調べるのってめんどくせーぞー」


「うっ……たしかに……」


 まあ、そうぐったりすんなって。


 どうせシゲミチくんが手伝ってくれるだろうし、そのうち村役場を建てたら人員補充してやるからよ。


 そしたら、だいぶ楽になると思うぜ。


 ……それまでは、ちょっと大変だと思うけどな。


「それで、ここに肉屋を建てるんだろ? にしては大工が居ねえじゃねえか」


「ああ、それなんだけど……シエラ、あとマサアキよー」


「はい?」


「家の隣に肉屋を建てるんじゃなくて、今ある家を広くして、肉屋ができる感じにして大丈夫?」


「えっと……よくわからないけど、ユウさんが言うならいいんじゃない? ねえ、マサアキ」


「そうだな、ユウさんがそのほうが良いって言うなら、きっと大丈夫っすよ」


「お、おう……じゃあ、そうさせてもらうよ」


 信頼されるのは嫌じゃねえけど、無条件でOKみたいのは、ちょっとびびっちまうぜ。


 ええと……新築じゃなくて、改築だったら……こうして、こうして、これでいいか。


 スマホをぽちぽちと操作し、予め設計しておいたデータを読み込んで……シエラの家をスマホのカメラに収めて【建造】スタートだ!


 おお、おお……ピカーっと光っとる。シエラの家がピカーっと光っとる。


 たしかにさあ、言ったよ。


 俺は背中を押すだけで、直接力を貸すようなことはしないって。


 スマホで作ったものは、原則俺らだけが使って、住民たちが使うものは、本人たちに作らせるって言ったさ。


 じゃあ、なにしてんねんって話なんだけど、あれなんすよ。


 時間が押してるってのも、まああるんだけど、これはサンプルなんすよ。


 今、村に建っている建造物はさあ、某サンドボックスゲーでいうところの、豆腐から抜け出した初心者がドヤ顔で見せてきたような、超シンプルなおうちなんだよ。


 民家も、鍛冶師の家も、薬師の家も、大工の家だって、もう、建売住宅かよってくらい、似たような建物なんだ。


 まあ、よく見れば職業ごとの特色がちゃんとあったりするんだけどさ、それももうちょっとこう……あるだろ! もっと使いやすくなるだろ! って思うわけ。


 それを改善するためには、大工のアップデートが必要になるわけだろ?


 かと言って、俺には大工を指導できる知識も技術もないわけじゃん。


 だから、目で盗んでもらう。


 こうして、サンプルとなる建物を建てておけば、いい感じに大工のハートが刺激され、後はほっといても色々とやれるようになる……はずだ。


「お、おい……ユウ。なんでマサアキの家が光ってんだ?」


「ああ、家を建てる魔法だよ……ほら、そろそろ光が止むぞ」


「ま、マホウか……お、おお! すっげえ!」


「わあ……うちがすっごい大きくなってるわ!」


「横に広がって……ああ、これあれっすか、解体するとこだ!」


 いやあ……便利だよな「魔法」って言葉はよ。


 とりあえず「魔法です」って言っておけば、なんとかなるから助かるぜ。


「今日からここがシエラの仕事場だ。こっちで解体して、向こうに肉をしまっておく。昼の間はそこに肉を並べて、肉が欲しい人に売ったら良いよ」


「なるほど……解体は表から見えない場所でできるのね」


「あれもこれも、一人でやるのは大変だろうから、仲がいい人でも誘って手伝ってもらうといいよ」


「そうだね、何人かアテがあるから声をかけてみるよ。それで……手伝ってもらったら、リパンってやつをいくらか渡せば良いんだよね?」


「そうだね。どれくらい払ったら良いかは、後で相談に乗るよ」


「助かるよ。どれ、さっそくミヨちゃんたち呼んでこようかね。じゃ、マサアキ、留守番頼むよ」


 言うが早いか、あっという間に駆け出していってしまった……。


「なんかスイマセン、うちのやつ、せっかちなんすよ……」


「ああ、別に気にすんなって。よし、今のうちに肉を出しておくか。せっかく来たんだ、キンタも手伝ってけよ」


「言うと思ったよ! まあ、俺らが狩った肉だからな! 最後まで責任を持って手伝うさ」


 なんだこいつ、村長になったせいか、ちょっぴり頼りがいがある感じになってきたな?


 ええことじゃ、どんどん意識改革して、どんどん働いて、どんどん発展させていくがええ。


 賑やかな声が聞こえたので、店の入口の方を見ると、シエラが女性を数人連れてきていた。


「ユウさーん、なんかリパン貰えるんだって?」


「おう、シエラの手伝いをしてくれたらな。解体ができる人はシエラと一緒にやってくれ。苦手な人は、バラした肉をそっちにしまったり、向こうに並べて売ったりしてくれ」


「「「はーい」」」


 元気よく返事をした奥様たちが、きゃっきゃうふふと散らばっていく。


「あ、シエラはちょっとこっちきて」


「あいよ」


「獲物を買い取る時にさ、どれくらいリパンを貰ったら良いのかを教えておこうと思ってね」


「お、そりゃ助かるよ」


「ええと……最初はこんくらいかなって思うんだけど……って、読めるかい?」


「んー……これくらいならいけるね。書けって言われたら難しいけど、物の名前や数字くらいは読めるやつが多いよ」


「そっか、それならよかった。じゃあ、最初はこれに書いてあるくらいで買い取って、量が増えて余るようになってきたら、もう少し少なくしてくれ。逆に量が少ない時は多めにしてね」


「なるほどね、対価を減らしたり増やしたりして、狩人らのやる気を調整するわけか」


「……言い方はアレだけど、だいたい合ってるわ。肉を売るときの対価も併せて調整したら良いよ」


「ふむふむ……了解だよ」


 ああ、そうだ。キンタやマサアキが居るんなら、ついでに買い取りまでやらせちまおう。


 まだ空っぽの店内を、興味深そうに眺めていた男二人を解体部屋に連れていき、ドサドサと今日の獲物を出していく。


「おお、俺らが今日狩ったやつだな!」


「みてくれ、シエラ。このクッカ俺が狩ったんだぜ!」


「へー……すごいねー……ええと、ユウさん。さっき見たのを参考にリパンを払えば良いんだよね」


「そうだね。とりあえず、当分の営業資金として5000リパン貸しておくから、今日のところはこれからキンタに払っちまいな」


「あいよ……っと、リブッカが三頭に……クッカとロップはいっぱいあるねえ……ちょっとミヨちゃん、数えるの手伝っとくれ」


「ほいよー……ええと、一羽、二羽……サっちゃんとチィちゃんも手伝ってえ!」


 奥様方が協力し、ちゃちゃっと獲物を仕分け、獲物の買取金額を見積もっていく。


 今回狩ったリブッカは普通サイズなので、一頭当たり800リパンで、三頭いるので2400リパン。


 クッカやロップは、1羽あたり30~50リパンで、今回は一式1000リパンの見積に。


「ええと……3400リパンだね。いやあ、凄いね。ユウさんから借りたリパンがあっという間に無くなっちまいそうだよ!」


「肉として売れば、買値より増えるから無くなることはないと思うぞ」


「ああ、そうか。確かリブッカならこれくらいで……おお、全部売れたらなかなかだねえ。これなら、直ぐに借りたリパンを返せそうだね」


 ほんと、理解力が高いなー。


 需要と供給をちゃんと理解してたし、計算も普通にできてるし。


 この様子なら、後はもうほっといても上手いことやりそうだね。


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