第10話 技術の対価
できてるかなあ、どうかなあ、ダメだったらヒントの一つや二つ出してあげようかなあ……くらいの気持ちで見に来てみれば、なんとまさかの完成品が出てきやがった!
「いやマジで流石だよザック、ダン! 俺が見込んだとおりだわ。これからも色々頼むと思うけど、頑張ってくれよな!」
「へへ、今後もおもしれえ事させてくれんのは大歓迎だよ。魔鉄鋼の加工もどうにかしてみっからよ、これからも頼むぜ、ユウさんよ」
「ユウさんから教えてもらった設計図ってやつ、書くのがほんと楽しくって。自分で思いついたのとかあったら書いてもいいですか?」
「ああ、いいぞ。良いのが出来たらダンと二人で形にしてみてくれよ」
「はい!」
「良い返事だ。よし、それじゃあ二人に報酬を渡そう。これが今回コンポジットボウを作ってもらったことに対する対価だ。受け取ってくれ」
コンポジットボウの制作費として、1000リパンをそれぞれ二人に手渡した。
「これ……昨日、ユウさんが配ったのの倍あるじゃねっすか!」
「おいおい、ユウさんよ、これは貰いすぎじゃねえのか? 肉で言ったら……ええと、大変だ、ザック……この部屋の半分が埋まっちまうくらいだぞ……」
そんな大げさな……ええと、あれたしか五百グラムくらいだったか? 精々五十キロだから……そこまでじゃねえだろ……って、なに真面目に計算してんだよ俺ェ!
「1000リパン分の肉つっても、そこの台がいっぱいになるくらいしかねえよ」
「いやいや、十分すぎるっすよ……そんなに貰っちまっていいんすか?」
「いいんだよ。二人のおかげで、狩人たちがもっと多くの獲物を狩れるようになるんだ、誰も文句を言わねえし、それだけのことをしたって思いなよ」
「俺たちが肉を増やしたってことっすか……」
「狩人を諦めたってのに、まさかこうして肉に携われるとはなあ……へへ、なんだか嬉しいぜ!」
ほんと、どこまでいっても肉を中心に考えるよな……。
でも、マジで今回の成果は肉の増加に繋がるんだから、これだけ貰うのは当たり前なのさ。
この二人みたいな技術職や研究職の連中はさ、農家や狩人みたいに毎日安定して収入が得られるわけじゃないじゃん?
だから、こうして高い報酬を得られる仕事を、時間をかけてやるという事も覚えた方が良いのさ。
「それと……今後、誰かに新しい道具を作るように頼まれたら、材料費だけじゃなくって、作る手間、考える手間、それに食事代まで全部計算に入れてどれだけコインを貰うか決めるんだぞ」
「うへえ……頭が痛くなってきたよ……」
「ダンさん、そんときゃシゲミチを連れてくれば良いんすよ」
「ああ、あの賢い奴か……そりゃいいな」
「シゲミチに対価の計算させんのはいいけど、それにもちゃんと金払うんだぞ」
「なるほど、そうやってコインってもんを巡らせてくのか……おもしれえ仕組みを考えたもんだな、全く」
「ほんとユウさんはすげーっす!」
あんま言うなよ……なんだかいたたまれなくなってくるだろ……。
お金のしくみを考えたのが誰かは知らんけど、パクった知識でドヤ顔してすんませんって感じだわ。
さてと。
こんだけ立派な成果を上げてくれたんだ、二人の功績を例えがてらお披露目会と行きたいところだが……流石に明日に回したほうが良いよな……。
「ダン、ザック。明日、狩人達を集めてさ、二人が作った弓のお披露目会をしようと思うんだ」
「お披露目会だ? そんなの要るかあ?」
「要るんだよ。この村には、こんな弓を作れる奴らが居る、それを教えてやらねえとな」
「へへ……なんだか照れるっすね」
「こんなにも立派な弓だからよ、欲しがる奴がいっぱい出てくるだろ? だから今後も作って、欲しいやつに売って欲しいんだけど、大丈夫だよな?」
「そりゃ勿論だよ。そのために頑張ったんだからよ。ただよお、どんくらい貰えば良いんだ?」
「本当はそれも含めて二人に決めて欲しかったけど、慣れるまでは難しいよな。材料は鉄と木材。木材は良いとして、鉄はどうやって手に入れてるんだ?」
「元々そこまで使わなかったからな、たまに山に籠もって俺が採掘してたんだよ。弓を作ったり、矢も作ったりとなると素材が持たなくなるな……どうすっかな」
「んー……じゃあ、コンポジットボウは当分の間、一張800リパン、でけえ鉄の鏃がついた改良矢は一本10リパンで売ることにしよう。採掘専門で働いてくれる奴がいりゃあ良いんだが、今はまだ居ないみたいだからな。鉄の入手に関してはまあ、そのうちなんとかするつもりだが、当分使う分は俺が提供するよ」
ボックスから鉄を取りだしドサドサっと置く。
「ひゃあ、すげえ量の鉄だな! しかし、弓一つに800リパンって少しもらいすぎじゃないか?」
「わざと高くしたんだ。あんまり安い……対価の量を少なくすると売れすぎて鉄が先になくなるだろ? だから最初は高くして、あまり数が出ないように調整するのさ」
「後から安くすると、先に買ったヤツから文句がでるんじゃねえのか?」
「それについては案がある」
「案っすか?」
「まず最初の三張のうち一張は優れた狩人であり、村長であるキンタへ俺からの贈り物と言うことにして、対価をもらわず渡す」
「ふむふむ……」
「そして、残り二張も同じ様に渡すつもりなんだが、これは誰かにってわけじゃなくて、狩人達、全員で使うものとして渡すんだ」
「全員で? 狩人っていっぱいいるだろ? 二張じゃ足りなくねえか?」
「そこはほら、交代で使ってもらうんだよ」
「好きな時に使えねえわけだろう? それはそれで不満が出るんじゃねえのか?」
「だから良いんだよ。実際試してみたら、余計に自分用が欲しくなるだろ……?」
「なるほど! 自分用を手に入れたいって思わせるんすね!」
「だがよ、800リパンだろ? 肉を一つ10リパンで売るとしてもよ、どんだけかかるんだよ……」
「逆に考えてみろよ。ダンが狩人だとしてだ。仲間の中でいち早く自分専用のソレを手に入れたら……どうだ?」
「カァ~! たまらねえな、しばらくの間、いい気分で居られそうだ!」
「そういうこった。それに、先に買ったやつは、後から買ったやつよりうまく使いこなせるようになるだろ?」
「なるほど、そう考えりゃ、悪くねえっすね」
だろうだろう……まあ、半分口から出任せなんですけどね!
「それでさ、お披露目すんなら、やっぱ狩人がいいだろ? つうわけで、明日の朝から森に入って試射会をしようと思うんだが、大丈夫か?」
「勿論っす!」
「ああ、なにがあっても行くぜ!」
そうこなくっちゃ。
試射会という名の実戦テスト……愉快なことになりそうだわ。




