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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第9話 例のアレ

 お疲れ会も終わり、さあ解散しましょうかとなったわけですが、パンさんとルーちゃんはそのままリットちゃんの家にいって二次会をするそうで……。


 広場でぼっちな、わたくしユウでございます。


 クロベエがいるだろって? あいつな、張り切ってたくせに、八百屋をはじめて間もなく飽きちまったらしくてな……。


 なんだかもう、暇そうにしてたから『好きに過ごしていいぞ』と言ったら、マジでどっか行っちまったんだよ……。


 そこはさあ……『ううん、おれがてつだわないと、ユウ大変じゃん!』とか言ってさあ、猫の手を大いに貸してくれるところじゃねえかよ……。


 まあ……猫さんだからな……そういう自由さも魅力的だからいいのさ。


 つうか、元々予定があったから、一人でも別に構いやしねえんだ。


 嘘つけって? 嘘じゃねえよ……ほら、ザックとダンに頼んだアレ、コンポジットボウの進捗を見に行くんだよ。


 今考えただろって? うるせえな、そんなこと……ねえよ。


……

…


「いるかい」


 鍛冶屋の戸を開け、中に入ると、ザックとダンが二人仲良く串焼き肉をかじっていた。


「おう、ユウさん! やっぱ来たな!」


「ザックと来るんじゃねえかって話しててな、こいつを用意して待ってたのよ」


 自信満々に見せられたのは、三張のコンポジットボウだ。


 えっ……いや、まじでこいつらなんなの? 


 少しは近いものができたかなあ……くらいに思ってたら、完成品をお出しされちまったよ。


 ま、まて。落ち着くんだ俺。


 まだあわてれるような時間じゃじゃじゃじゃじゃ……そ、そうだよ、性能だよ。見た目だけコピーできててもさ、肝心の性能がお粗末じゃお話しにならないじゃん?


「ふ、ふーん……見た感じは完璧じゃん。それでこいつはちゃんと使えるんだろうな?」


 失礼かなって思いつつ、もしかしたらモデルガンみたいなもんかもなって。


 見た目だけで、引いた瞬間バラバラになるような未完成品かもなあ……と、淡い期待をいだきながら聞いたら……この鍛冶屋、胸をドンと叩きよった。


「勿論だ! 完成したのはついこの間のことなんだがよ、試作中もキンタに頼んでたまに試射してもらってたんだ。どうせ狩人に使わせるんだ、だったら狩人の意見をきかねえとってな」


「そのおかげでかなりいい物が出来たんだ! ユウさんも後で試してくれよ!」


 おおお……なんなんこいつら……何なんマジで。


 バグが取れただけでここまでチートじみた連中になるとかマジでヤバくね、この世界。


「それと、この矢だがな……」


 これは……俺がサンプルに渡した魔鉄鋼で作った矢だな。


 そういや、そんなものも頼んでいたな。


 住人たちが、魔鉄鋼で矢を作れるようになりゃあ、大型狩りも捗るだろって、雑に頼んだ気がするけど、どうなったんじゃろ。


「魔鉄鋼とか言ったか……これな、どうやっても加工できなくてよお……悪いと思いつつ、ユウさんが作った矢を調べてみたんだがよ、いくら見ても取っ掛かりが見つからねえんだ」


 魔鉄鋼ってそこまでなんか……俺はこう、雑にアプリでわっとやってるから、そんな素材だとは知らなかったわ。


 ザックもうんうんと、難しい顔で頷いておる……この顔、さてはお前ら、俺に加工方法を教えてもらおうとしているな?


 悪いけど、それは無理な話だ! パワー的なチートも、知識的なチートも、全てはこのスマホ様にだけ与えられているんだからな!


 だから……俺にはこうすることしかできねえんだ!


「……魔鉄鋼の難しさがわかったか」


「ああ……俺もザックもお手上げだぜ」


「その素材はよ、お前らの成長を測る素材なんだよ」


「成長を……測る、ですか?」


「そうだ。二人で協力し、素材を調べ、加工方法を探るんだ。そして……見事、魔鉄鋼を自在に操れるようになった時……お前たちは一つ上の段階に上がれることだろう……」


「おおおぉ……ユウさん、あんたそんな思いでこれを……」


「うう……感動したっす! 頑張りますよ、ユウさん!」


「お、おう……がんばってくれ」


 必殺、いい感じのことを言って丸めこめ!


 やべえな……クリティカル出ちまった。ちょっといい感じにハマりすぎて、逆に申し訳ない気持ちでいっぱいだわ……。


「そ、それよりさ、弓についてもっと聞かせてくれよ! 再現すんの、簡単じゃなかったんだろ?」


「ああ! そりゃもちろんだ! ここまで良いものが出来たのはこいつ、ザックのおかげだよ! な?」


「へへ……いやあ、そうまで言われると照れるけど……頑張った甲斐があってよかったすよ」


 二人はまずは仕組みを知る事から始めたらしい。


 メモを取りつつ、コンポジットボウの分解と組み立てを何度も何度も、それぞれの部品が持つ意味を理解するまでそれを繰り返したそうだ。


 なんだっけ、リバースエンジニアリングとかいうやつだっけ? それを素でやったんだから、偉いよな。


 その甲斐もあって、ただコピーしただけじゃあ無く、構造を理解した上できちんと図面を引くことが出来たみたいなんだが……正直想像以上だぜ。


 見てくれよ、この立派な図面。


 定規を使ってきちんと寸法まで書き込んであるんだぜ? 


 ……何故か単位がセンチなのにはずっこけたけどな……。


 単位の概念はあるんかーいっつう。


 でまあ、図面をもとにダンがコツコツと部品を作ってはザックと検証し、ちょいちょい仲良く喧嘩をしながらとうとう作り上げてしまったと。


「出来上がった弓をよ、キンタに引かせたあの瞬間、俺は一生忘れねえわ」


「キンタさんが『おおすげえ、ユウのと同じじゃねえか』って言ってて……俺泣いちゃって」


 そんでその晩、二人は肉を持ち寄ってささやかなお祝いをしたらしい。


 よっぽど嬉しかったんだろうなあ、わかるぜ、その気持ち。


 その喜びを糧に、これからも頑張ってほしい。



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