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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第8話 かいてん!

「本日限定! ユウさん市場の開店だ! へいらっしゃい! らっしゃい! こことはちょーっと違う、変わった野菜だよお! さあ、お代は見ての通りだ! 配ったリパンで好きなだけ買い物してけい!」


 俺の声にわっと集まる村人たち。



 肉屋と串焼き屋台にダッシュするかと思いきや、意外や意外、俺の八百屋にも人が来てるじゃないの。


 なんかもう嬉しくなっちゃったし、たっぷりサービスしちゃうぜ!


「このジャモ……ほんとにちょっとちがうね?」

「そうだろう? これは俺が手を加えたもんでね、焼くとホクホク、煮るともっちりで旨いんだよ」


「へえ、じゃあこのザルで一つもらおうかな? ええと2リパンだね」


「毎度あり!」


……

…


「お、噂の娘さんだね……って、ずいぶんりっぱな肉だねえ」


「おいしそうでしょ! これはひとつ10リパンだよ!」


「10リパンね……ええと、野菜だとザルで五つ分であってるかい?」


「うん、ユウのジャモとか、タマナがそうだね」


「そう考えると、一つで10リパンは損するような気がするねえ……」


「じゃあさ、リットちゃんのとこで串焼きを買ってみたらどうかな」


「隣で売ってる美味そうなやつか、どうしてだい?」


「あれね、このお肉を使ってるんだよ。1リパンだし、お試しにいいんじゃない?」


「なるほど、そうだね! じゃあ、リットちゃん、一つ頼むよ」


「じゃあ1リパン……そう、その銅貨を1枚ね。はい、どうぞ!」


「おっほ……おいしそうだねえ……ん、おいしい!」


「あはは、おいしいよね、このお肉。ルーちゃんが売ってるお肉は、この串焼き10個分より多いんだよ? 買うしかないよね!」


「焼いた肉10個分なのかい、だったら買うしかないね! 娘さん、さっきのでかい肉ひとつおくれ!」 


「ありがとう、はい、どうぞ!」


 ルーちゃんとリットちゃんのコンビやべえな……。


 二人でモリモリ客を捌いていくわ……パンさんは……ああ、一生懸命肉を切っては葉っぱにくるんでるわ……キッズのセールス力に任せて裏方に回ったのか……。


 ……あれをみちゃったら、俺でもそうするわ。


 ルーちゃんは普通とはちょっと違うからわかるんだけど、リットちゃんの賢さがグングンと上がってるのが気になる……。


 なんだろうな、妙に賢いと言うか、商才がありそうなんだよな……。


 野菜五ザル分なら高くねという客に対し、スルッと「串焼き十本分で、それより多く買える」と言うセールストークができちゃうんだもん。


 将来的に、この世界初の商会を作っちゃったりしてな……。


 まあ、他の奴らも、前と比べれば見違えるように生き生きとしてるっていうか、自発的に行動するようになったからな。


 おそらく、バグで抑え込まれていた本来の才能が一気に成長しているんだろうな……。


 ……

 …


 ほんと、面白いほどにぽんぽん、ぽんぽんと売れていくなあ。


 肉だけじゃなくって、俺が丹精込めて育てた野菜も馬鹿売れでとっても嬉しいわ。


 肉の印象が強いこの村だが、豊穣の加護的なアレで農業も盛んだろ?


 農家の方々がうちの畑の野菜たちに興味津々でさ、種もどんどん売れてるのよね。


 初めてのお買い物が楽しいのか、肉や野菜に興奮しちまったのかは知らねえが、村人全員が配った資金を使い切る勢いなのが笑う。


 ま、今日の売上金は、なんらかの方法で還元するつもりだから、村人総出で一文無し! とはならない……はずさ。


「ユウさーん、お肉無くなりそうですー!」


「はーい! 今足しまーす!」


「ユウー! ママがお肉がないって言ってるよー!」

 

「ルーちゃんの肉屋もかよ! ほいよ、ヒッグホッグのお肉だ!」


 忙しい忙しい。


 バグって村人増殖してんじゃねえのかってくらい忙しい……配った金以上に売れてるような気がするのは気のせいだろうか?


 でも、これでお店というものがどういうものか、買い物というものがどういうものなのか。お金というものの良さをわかってくれたと思うわ。


 後でキンタに村民会議を開いてもらって、八百屋と肉屋をやる人を決めさせねーとな。


 店をやるとなると、在庫を置く場所も必要か……そうだな、最初の倉庫は俺が作ってプレゼントしちゃおう。


 あんまりこうやって手を貸すのは良くないと思うけど、コンポジットボウみたいに、サンプルだと考えりゃ、まあ……ギリセーフだろ。


 本当は建築してるとこ見せるのが一番良いんだろうけど、俺には無理だからな!


 

 ◇◇


 開店から二時間ちょい経過――


 ようやく人がはけ、広場に静寂が戻ってきた。


 もう昼になるところだったので、ちょうどいいやと皆でお疲れ会がてらの食事を摂った。


 残っていた串焼きをかじりつつ、ストレージにストックしておいたスープっつう、簡単なもんだけど、激務だったせいか余計に美味しく感じるね……っと、リットちゃんとマーサにお賃金を払わねーとな。


「はい、これ今日のお礼ね」


 そう言って、二人分の賃金、10リパンをそれぞれに渡すとびっくりされた。


「えっ!? こんなにもらっていいの? ただコインと串焼きを交換してただけだよ?」


「10リパンってこの串焼きを十本分でしょう? キウンバならザルで五つも買えちゃうわよ」


 拘束時間はざっくり三時間。


 ざっくりと物価やら平均収入やらを計算して時給3リパンにおまけして10リパンのお給料です。


 1リパン100円換算すると、時給300円と、労基がガンギレしそうな金額だけれども……そこはほら、物価が安めだし、金の使い道がまだあんまりないからね……これくらいがちょうどいいかなって。


  つーかさ、自然とお金の価値が身についてるよね、この母子。コインを単なる金属片じゃなくって、野菜や肉にぱぱっと換算してるのはいい傾向だわ。


 ただ、こういう労働の対価としてお金を貰うのにまだ慣れていないだろうからな。ここはしっかりとお賃金システムを味わってもらって、どんどん村に広めてもらわんと。


「ほら、キンタのやつが狩りが出来ない間、畑を手伝ったお礼に野菜を分けて貰っていただろ? その野菜を金に変えて考えてみなよ。今日あんだけ頑張ったんだから、これだけのお金をもらえるのは当然って気がするだろ」


「そうだね……すごく大変だったもんね」


「目が回るような忙しさだったわね……それを考えると、10リパンをいただくのは正しいのかもしれないわね」 


 今日の忙しさを思い出し、しみじみとコインを見つめる母子。


 いやほんと、今日はお疲れ様でした。


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