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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
1章 拠点を作るぞ

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第11話 食料採取にゆくぞ!

 森よ! わたしは帰ってきた!


 魔石は大事! でも、ご飯はもーっと大事! 


 つうわけで、お肉のためにふたたび森にやってきました。


 なにせ、今日の食事ときたら、朝も昼もカロリーのおとも的なアレなんだぞ。

 嫌いじゃねーけどさ、あれってなんかこう、お菓子食ってるみたいで、食事としての満足感は薄いんだよなあ。


 パンちゃんが『クロベエくんは魔獣化してるから、人と同じのを食べても平気よ』って言ってたからクロベエにも分けてやったんだけど、すっげえ微妙な顔されてなあ。


「三つ目より ずっとうまいけど……これはなあ」


 ってボヤいてたよ。


 つーわけで、やっぱ時代は肉だなと。ついでに山菜とか、果実的なものとかも採れたら最高だね。 


 というわけで、張り切って行きましょう!


   ◆◇


 お、この野草……知ってる山菜っぽいぞ。


 ……けど、流石に違う植物だろうな。


 一応少し取っておくか? けどなあ、死なねえつっても、腹は痛くなるだろうからな……まあいいや、取るだけとっとこ。


 いやあ、流石は異世界だわ。


 植物ひとつとっても、見たことあるようでないようなもんばかりでさ、ちょっと興奮してきたよ。


 見ろよ、あのセロリみたいな植物。葉っぱが水色なんだぞ。


 めちゃ写真映えすっけど、口に入れるのは勇気がいるよな。


 あ……スマホ使えるってことは写真も撮れるってことじゃん!


 うわー、思いっきり意識の外だったわ。そうだよ、写真撮れるんじゃん。せっかく異世界に攫われたんだし、撮らないともったいないよな。 


 よっし、じゃあさっそくこの水色セロリを撮ろう! パシャリ! 


 次はお前だ、ゲーミングごぼう! パシャリ! 


 おっと、人生楽勝みてえなツラした鳥さんだ! パシャリ! 


 お次はこの謎の実ちゃんだ! パシャリ!


 テュン!


 【New! ラッツ】


 ……なんかスマホに見慣れない通知が出たぞ、なんじゃこりゃ。


 通知をタップすると例のアプリが立ち上がった。


 お ま え か 。


 一体何ごとだ……って、図鑑? あの女神、まーた知らん間に追加したな。


「おお、さっき撮ったの全部図鑑に入ってんじゃん」


 これって今まさに俺が欲しかった機能じゃん。普通に感謝しちゃうぜ。


「ありがとう、パンちゃん!」


 ポコン!


『(親指を立てながら水に沈むハチワレ猫のスタンプ)』


 どういう感情だよ……。

 

 いやあ、ほんとありがてえ……はじめから使えるようにしとけよって、ちょっとだけ思ったけど、感謝のが勝るわ。


 これさえあれば、ポンポンペイン杞憂民にならずに済むぜ!


 よし、さっそく『ラッツ』のページを見てみよう……。


======

 

【ラッツ】可食 生食可能


 甘酸っぱいこの味……もしかして、これが初恋の味?

 そんなラッツは、そのままデザートにしてもいいし、

 フルーティな味わいは料理の調味料としてもバッチリ!

 使いみちはアナタ次第★


======


 ……説明がうぜえ。


 それに目をつぶれば、シンプルでいい図鑑かもしれん。

 俺が撮った写真が図鑑に貼り付けられてるってところも高ポイントだ!


 ラッツはなかなか優秀そうだな。生食でもイケるってのはポイント高いし、余らせても調味料になると。


 いいね、こいつはみかけたらどんどん採っていこう!


  ◆◇


 ……いやあ、ラッツめっちゃあるじゃん。


 ちょっと歩いたら、梅くらいの実が鈴なりになってるのが目に入ったんです。


 めっちゃ嬉しかったですよ。なにせ、一箇所で二十個くらいは取れそうでしたからね。ええ、大喜びで採りましたとも。


 でもね、嬉しかったのは最初だけなんです。


 ひとつ採ってはスマホにコツン、ふたつ採ってはスマホにコツンでしょう? だんだんめんどくさくなってくるんですわ。


 だから、とりあえず上着のポケットに入れて、後から収納しようってやってたら、もうね、あっという間にポッケがパンパンなんですよ。


 どうすっかなーって思ったんですがね、ひらめいたんですよ。


 あ、そうだ。ログボで貰った肩がけバッグがあるじゃんって。


 中にはいってたカロリーなんちゃらをストレージにぶち込んで、ポッケのラッツをバッグに移し終えたのがさっきのこと。


 これでまだまだ採れるぞ……って、わさわさ集めてたところでふと気づいちゃったよね。


 結局さ……帰ってから収納しなきゃねえのには変わりがないわけじゃん……。


 何個あるかな……バッグ結構でけえからな……百個は軽くあるよなこれ……。


 考えたら、ちょっとうんざりしてきたわ。


 なんか小腹もすいてきたし、ちょっと休憩すっか……。


 バッグからラッツをひとつ取り出し皮を剥く。見た目はまんまプラムなんよな。

 赤と黄色のまだらなプラムって感じで、薄い皮で覆われてんだ。


 軽く爪を立ててめくると、ぺりりと簡単に皮が剥けた。


 こいつぁ楽でいいやと、半分ほど剥いたところでジュルリといただく。


 ん……んんーーーーーー! すっぺええええええええええ!


 けど、後から甘みが追っかけてきて悪くない、悪くないぞこれ!


 これあれだわ、すげえ酸っぱいグミみたいな感じだわ。


 口がキュッとして涎がダバァするけど、食えないほどじゃあないし、なにより、甘くてさっぱりとした後味が凄くいい。


 いいなこれ、大量に採れるし、最悪の時はこれでしのげなくもないぞ……って、大丈夫だからクロベエ、そんな顔で見んなって。別に肉を取るのを諦めたわけじゃねえからさ。


 流石に俺だって、こればっかは嫌だからな。肉は肉でちゃんと頑張るさ。


 ラッツで回復した体を起こし、美味い肉を求めて森の奥に向かって歩き出す。


 クロベエを先頭に歩いていると、時折三つ目ドッグ――ウルッグの姿をみかけたが、こちらに寄ってくることはなかった。


 こちらに気づいていないのか、自信満々にノシノシ歩くクロベエにビビっているのか。


 ……後者くせえな。俺一人で歩いてたら向かってくっかもしんねえな。


 クロベエとしりとりをしながら歩いていると……足元にぐにょりと嫌な感触が。


 え、うんち踏んだ……って、思った瞬間、ぐるりと視界が天を向いて、背中に鈍い衝撃が。


「うっぐ……あー、いっでえ! マジかよ、なんか踏んでめっちゃ滑ったんですけど! うんちじゃねえよな?」


 立ち上がろうと、地面に手を突いたらぐにゃりとした感触が……恐る恐る目を向ければ……そこにあったのは泥だった。


 なるほど、どうやら泥に足を取られてこけちまったようだな。

 

 ……うんちじゃなくてよかった。


 いやいや、なにホッとしてんだよ俺。


 背中やケツがドロドロじゃねえかよ……ああ、洗剤もねえのに……落ちるかなあ、これ……って……クロベエくん!? 


 ちょ、おま!


「うおおおお! 泥だあああああああ!!!!」


「おいこら、やめ――」


 クロベエが泥に飛び込んで……嬉しそうにゴロゴロゴロゴロ転がりまわっている。


 あああ……なんてこった……お前までドロドロになっちまってどうすんだよ……。


「これ好き! これやるとサッパリする!」


「しってるよ……お前、砂とか泥にまみれんの好きだもんな……」


「うん! さいこうのきぶんだ!」


「帰ったら俺と一緒に全身水洗いだからな……」


「え…… うおおおおおおお! だったら たくさんドロドロになってやるうううう!」


 風呂嫌いなくせに、こういうのが大好きだからマジで困るわ。


 まったくもう……イノシシじゃねえんだから……って……そういえば。


 イノシシもさ、こういう場所でゴロゴロすんのが好きなんだよな……お、さすがは俺。転んでもただじゃ起きねえとはこのことだな。


 泥ではしゃぐクロベエの周りをよく見ると、明らかにクロベエのものとは違う、獣の足跡がたくさんついていた。


 どうやら、この世界にも似たようなことをする生き物がいるらしい。


 ウルッグってさ、目の数と角はアレだけど、狼とか犬に似てるじゃん。


 パンちゃんがさ、アセット使って環境構築したって言ってただろ、多分だけど、他の魔獣もウルッグみたいに地球の動物に近い姿をしてるんじゃないかなって思うわけ。


 そのパターンから行けばさ、ここでゴロゴロしたのはイノシシっぽい魔獣の可能性が高いんじゃねって。


 そう、パンちゃんが言っていた、美味しく食べられるタイプの魔獣さんじゃねえかなって思うわけですよ!


「おいクロベエ! ちょっと本気出して探ってみ! 近くに肉が居るぞ!」

「おっ! まじか! ようし! まかせろー! けはいさっち? をするぞ!」


 肉という単語に反応したクロベエが、泥から飛び出して辺りを探る。


 スンスン、ふごふごと辺りを探知……いや、それは気配察知というよりは匂いを嗅いでいるだけなのでは……。


「むっ! むむむむーん! ユウ! あっち なんかくさいぞ!」


 やっぱ匂い嗅いでるだけじゃねえかよ!


 早速突撃……と、言いたいところだけど、ここは慎重にいこう。


 なにせ想定される魔獣は『イノシシ』だ。


 そもそもさ、普通のイノシシとタイマン張って、普通の人が倒せますかって話よ。

 

 それが魔獣化してるんだぜ? 便利なスマホを持ってるだけの普通のあんちゃんがよ、そんなもんを倒せますかって。


 絶対に無理だよなあ!


 だからこう……こっそりと近づいてだな、クロベエくんにうまいことこう、不意打ちでしとめてもらおうかなと。


 ……まあ、どうみても敵わなそうなら、尻尾を巻いて逃げるけどな。


 ヤブを掻き分け、そろそろと歩いていくと……なにやら妙な音が聞こえ始めた。


 クロベエに合図をし、歩く速度を落とす。


 ゆっくりゆっくりと、慎重に進むと……遠くに鼻で穴を掘る獲物の姿が見えた。


「居たぞ……これは……イノシシ……なのか?」


 体長およそ五メートル、六本のたくましい足はとっても食いでがありそうだ!


 額を見れば、鈍く光る何かで覆われていて、なかなかのおしゃれさんであることがうかがえる。


 うん……ミニバンに六本足が生えたバケモンだわこれ。


 そんなヤバそうなやつがよ、フゴフゴと泥に頭を突っ込んで穴掘りを楽しんでいるんだ。


 うーん……これを狩るの……無理だな!


 だめだめ! 諦めて帰ろう! 解散、解散です! ま、せっかく出会えたんだし? 名前くらいは調べさせてもらいますけどね……パシャリ……あ、やべ。


 ……写真NGだったのかもしれねえ。


 イノシシさんがゆっくりと顔を上げ……ギロりと俺を睨みつけた。


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