↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/144

第3話 ユウさんってすごいんですのよ

 集落の人たちが集まり、ザワついている。


 なんだか、軽く既視感を覚えるが……それはきっとダンジョンの妖怪どものせいだろう。


 ここんとこ、こうやってダンジョンの住人を集めて演説しまくってたからなあ……ああ、なんかタルットの幻覚が見えてきたわ……。


 あかんあかん! ここはダンジョンじゃない、集落だ! 


 ……ようし、落ち着いたぞ。


 まずは……俺のことを知らん連中に自己紹介と行こうか。


 広場においた演説台に上り、声を張り上げる。


「えー、お集まりいただきありがとうございます! わたくし、ユウと申しまして、魔獣の森の近くに家を構えているものです!」


「おい……魔獣の森って……」


「誰だ? 見たことねえヤツだな」


「あいつ魔獣と一緒に居るぞ……」


「ほんとだ……じゃあさ、あいつも魔獣なんじゃねえか……?」


「あいつ、うまいのかな?」


 俺のことを知らない連中がめっちゃ訝しんだ顔で俺を見ている……つうか、一人やべえやついねえか!?


「こいつが気になってるようですので、紹介しますね……クロベエ、挨拶しな」


「はじめまして、俺はクロベエ。ユウの息子だ。よろしく頼む!」


「喋ったあああああ」


「でけえな、おい」


「噛まないかな……」


「こいつは産まれたときから俺が育てたので、人を襲うどころか、魔獣を狩る良い子に育ってます! だから全然ダイジョーブ!」


 マジかよ、ほんとかよ、嘘じゃねと、ざわめく人々。


 そらそうだ。


 未だ大型魔獣を狩れずに居る人らにとって、クソでかキャッツのクロベエくんは恐怖の対象でしか無い。


 いくら俺が大丈夫だと言っても、いくら、言葉を喋れるとしても(本当に大丈夫かな)と、不安に思うのは仕方がないことだ。


 だったら……マジ大丈夫だから! ってところを見せてやりゃあ良いのよ。


 チラリと横を見る。


 そこにいるのはルーちゃんとリットちゃんだ。


 手招きをすると、二人仲良くタタタっと、駆け寄ってきた。


「二人とも、ちょっとクロベエくんと遊んでくれる?」


「え、いいの!? クロベエのもふもふ、ひさしぶりだあ!」


「あ、リットちゃん待ってー!」


 わっとクロベエに飛びつくリットちゃん。その後を追うように、腹毛に埋もれていくルーちゃん。


「子供が魔獣に!」


「危ないぞー!」


 なんて大人たちから警告が飛ぶけれど、二人の幼女は嬉しそうにクロベエの腹をモフりまくっている。


 それを見た大人たちから悲鳴が上がりまくっているけれど、二人はまったく気にせず、頭によじ登ったり、腹に埋もれて毛をワシワシとして居る。


「あんなことしても怒らないのか……」


「あんな優しい魔獣がいるんだなあ」


「俺もワシワシしてえ」


「あの腹毛に包まれて寝たら絶対気持ちいだろうなあ」


 場がすっかり癒され、動物ふれあいコーナーの空気になってしまった。


 まいったな……クロベエのせいですっかり段取りが狂ってしまったぞ。


 ええと、どこまで話したっけな……なんにも話してねえわ!


 しょうがねえ、また最初からやり直すか……と、思ったところで肩を叩かれた。

 キンタだ。


 なになに? 俺に任せてくれないかって? 


 ふむ……ずいぶんと自信に満ち溢れた目をしているな……よかろう、ここは君に任せよう。


 なんだかウザそうな顔で俺を見るキンタを演説台に乗せ、俺は一時撤退。


 なんなんだろうな俺……ただ、デカいネコチャンの自慢をして終わった感じになっちまったよ。


「狩人のキンタだ。自慢じゃねえが、毎日肉が食えるのは、ウチだけだと思う!」


「ほんとそう。前居たところなんて、肉なんて滅多に食えなかったわ」


「ここの狩人は腕が良いから助かるぜ!」


「キンタ達のおかげで俺も肉を沢山狩れるようになったぞ!」


「やっぱ肉だよな!」


 わあわあと盛り上がる会場。小さく肉コールをしている奴らも居るな……。


「今でこそ、肉を沢山食えるようになったが、それもこれも……この男、ユウのおかげなんだよ。ユウに色々と教えてもらってから、毎日肉が食えるようになったんだ! な!」


 ぐいっと俺の首に腕を回し、グイグイと締めながらキンタが語る。


 おいクソ、地味に痛えからやめろ! やめろつってんだろ! おい、くそ、なんだこれ解けねえ!


「まじかよ、あんな弱そうなのに……?」


「アイツ弓引けんのかよ」


「でもキンタは偉大な狩人だからな……あいつが言うなら……でもなあ」


 うるせーな、聞こえてんぞ? ばかにしないでくれる? 弓くらい引けるんだから! 

 

 ……キンタさんはいい加減腕を離してもろて。


「ユウのなにがすげえって、真っ直ぐ飛ぶ矢を教えてくれたことだな。あの矢の凄さは、お前らも知ってるだろ?」


 俺を馬鹿にしたように見ていた連中が、キンタの語りにウンウンと頷き、なるほどあの矢はこいつがと俺を見る。


 弓は引けなさそうだし、肉も狩れそうには見れないが、矢を作れるならキンタがここまで持ち上げるのも納得だ、てな感じの話しているようだ……。


 ……まーだ、おれを小馬鹿にしてやがるな? やっちゃうか? ちょっと”チカラ”を見せちゃうか? おおん? 


「ああ、見かけで判断しねえほうがいいぞ? このユウはな、女神の森に現れたラウベーラを狩ったんだぞ。お前らにできるか?」


「ええ……ラウベーラを?」


「ラウベーラってなんだ……?」


「ああ、わりい。クソでかくて、こーんな魔獣だよ。他にもよ、リブッカっつう、でっけえ魔獣をぶん殴って狩ったんだぞ。ほら、あそこに角が飾ってあるだろ? あれ、リブッカの角なんだぜ」


 キンタが指さした先、広場に立てられていた柱に、リブッカの角が括り付けられていた。


 ……なんか書いてあるな。


『謝肉祭記念』


 ……しょうもねえことしてやがる。つうか、記念の概念はあるんだな……。


「あれを……ぶん殴って狩ったとかマジかよ……」


「やべえ、俺も狩られちまうかもしれん……」


「へへ、俺はうまくねえんで、ゆるしてくだせえ……」


 狩らねえし、食わねえよ! 俺をなんだと思ってんだ! たく、クルクルクルクル手のひら返しやがって!


「な? ユウはクソ強えし、とにかくすげえんだよ。だからさ、こいつの話を聞いてやって欲しい。きっと俺たちにもっといい暮らしをさせてくれるからさ」


 キンタの言葉で俺を見る目があっという間に変わった。


 なんかもう、少年漫画の主人公を見るかのように、キラキラした目で俺を見てやがる……。


 肉が好きなだけあって、やっぱ力こそパワーな脳筋の里な感じなんだろうか……。


 武を示したから、やっべ、ユウさん憧れちゃうなーってなったんだろうか……。


 それはそれで気持ちがいいけど、このままじゃマジで脳筋の里になっちまいそうだ。


 それを阻止するためにも、ここから先は真面目にテコ入れを……っつうか、予定していた演説を始めよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。