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バグった世界にテコ入れを  ~スマホ片手に停滞世界を再開発~   作者: 未白ひつじ
5章 始まり

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第2話 その子だれの子

 シゲミチくんからの聞き取りが終わったタイミングで再びキンタに声を掛けられ、リ(・)ッ(・)ト(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)の家に行くことに。


 なんでも、俺が来たら相談したいことがあったんだってさ。


 そんなわけで、久々にやってきましたリットちゃんのおうち。


 家主のリットちゃんが留守のようだが、数日滞在する予定だから、そのうち顔を合わせることはできるだろう。


 というわけで、おじゃましまーす。


 家に入ると、早速とばかりにキンタが口を開く。


「なあユウ。相談より先に聞きたいことができちまったんだが……」


「なんだよ? 俺には心当たりしかねえんだが?」


「だろうよ……あのな、パンさんが一緒なのはまあ、いいけどよ。その子……その女の子、前は居なかったよな……?」


 ……そうなるよなあ。


 俺の来訪を聞いてウッキウキでやってきたキンタが、声をかけながらルーちゃん二度見してたもの。


 俺を見て、クロベエを見て。


 パンさんを見て、ルーちゃんを見て、ルーちゃんを見てた。


 しれっと『前から一緒でしたよ』感を出しながら堂々と紛れ込ませてたけど、やっぱ普通に誰だこの子ってなるよな。


 この集落の連中はうるせーからさ、ぜってー突っ込まれると思っちゃいたよ。


 だから、ちゃーんと対策してきたのさ。


 そう、俺の創作力を余すこと無く注ぎ込んで考えた、ルーちゃんのバックストーリーだ。


 俺がこれまでの人生で読んできたラノベに漫画、そしてアニメにゲームのシナリオからいい感じのところを抜粋し、パンさんと相談しながらルーちゃんとの感動の出会いをでっち上げてきたのさ!


 突然の出会い、戸惑うルーちゃん、徐々に絆される俺……そして、いつしかルーちゃんは俺のことを父と呼ぶように……。


 あれ……ルーちゃんって俺のこと『パパ』とか『お父さん』って言わねえな……。


 やっべ、めっちゃ読者に突っ込まれるやつじゃんこれ……。


 まいったな、カッチリ仕上げてきたから、今さら修正とか難しいぞ……。

 

「なあ、ユウ……そういうことなんだろ? なあ?」


 うるせえな……まってろよ、今考えてんだから――


「あのね、ルーちゃんはルーちゃんっていうんだよ! ユウとママの子供なの! よろしくね!」


「お、おう……や、やっぱそういう感じなんだよな?」


「そういう感じ? んー、ルーちゃんね、ユウとママの力で生まれてきたのよ」


「ははは、やっぱりな! ユウ! 適当なこと言いやがってよ、パンさんと夫婦だったんじゃねえかよ! つか、こんなにでっかい子供居たならなんで黙ってたんだよ?」


「あ……いや、その……パンさん?」


「ちょ、ま、あたし? ね、ねえ……ル、ルーちゃん? ママと打合せしてたでしょう?」


「うーん? あ! そうだった! ユウ、ママごめんね! 忘れてた!」


「打合せってなんだよ……お前ら、子供に何言わせようとしてたんだ?」


「い、いやほら……あれだよ、お前たちを驚かそうと思ってさ、最初は内緒にしてて、後からこう……なあ?」


「そ、そうなのよ。実は私たち夫婦でしたー! 子供も居ましたーって言ったら驚くでしょー?」


「そ、そう……ふ、夫婦だっていったらびっくりするかなあって」


「……まったくしょうもねえ事考える奴らだなあ。そんなの、前に来たときからバレバレだったっつーの!」


「はは、ははは……そ、そうかあ……」


「うう……そ、そうだったのね……」


 くっそ、パンさん、顔赤くしてチラチラみんじゃねえよ! ばっかやめろ、俺だって耳が熱いんだよ! 恥ずかしいからみんじゃねえ!


 キンタはニヤニヤと、生暖かい目で見つめてくるし……!

 

 この微妙な空気……どうしてくれようか。


 そ、そうだ! パンさんは女神なんだ、女神なら認識阻害とか記憶操作とかなんかそういう物騒なアレで上手いこと……って、今のこいつは使いもんにならねえんだった!


『このままじゃ集落中に広まっちゃう……ユウ、なんとかして……』


『なんとかって言われても……なんかもう、こうなったら無理じゃね?』


『諦めないでよお……』


『だってよお、ルーちゃんのこと考えたら、俺とパンさんがその……夫婦……っていう設定が一番丸いじゃん』


『そ、それはそうだけど……』


『お、お前とはこう……そういう感じじゃねえと思うけど、ルーちゃんは俺達をそう思ってるわけじゃん? もうさ、対外的にはそういうことにしておこうぜ……』


『くっ……そ、そうね……やっぱそれしかないわよね……』


「お、なんだ? 視線で会話とか、ほんとお前らアツアツだよなあ!」


「そ、そういうんじゃねえし!」

「そういうんじゃないわよ!」


「はっはっは、ほんとお似合いだぜ、お前らはよ」

 

 くっそ、お似合い夫婦にされちまった。


 まあ……ルーちゃんがニッコニコだからいいか……いいか? いいんだ……もう、これでいいんだ……なるようになれーだ。


 キンタはお喋りだからな。


 この話はあっという間に広まるだろうし、もう手遅れだ。


 俺とパンさんにダメージが入るのを除けば、別に悪いネタじゃねえしな。


 後はなるようになれって感じだわ。


「たっだいまー! お父さん、ユウが来てるってみんな言ってたけどほんとーって、うちにきてたー!」


 ……と、家主さんのお帰りだ。


 妙な空気をぶち壊してくれて大感謝! って思ったが、この流れだときっと再放送なんだろうなあ……!


「久しぶりだね、リットちゃん、マーサも元気そうでよかった」


「ユウさんとパンさん、元気そうで良かったわ……それと、こっちの子はもしかして?」


 やっぱそうなるよなあ……! 


 カクカクシカジカと、キンタに話したのにプラスして、家の周りの環境が整ったから、実家から連れてきたのだと、改めてルーちゃんを紹介した。


「やっぱりねえ。ユウさんもパンさんも嘘が下手なんだもの、みんなで『絶対そうだ』って言ってたのよ」


 別にそんな感じじゃなかったと思うんだけど……なあ、パンさん?


 ……こいつ、顔を赤くして俯いてやがる! 


 そういう態度やぞ! そういうリアクションすっから、こうして誤解されてるんやぞ!


 やいのやいのと、集落に広まってたという話を聞かされ、俺とパンさんはダウン寸前だぜ!


「さて……ユウ……」


 と、急にキンタがシリアスな空気を醸し出し始め、ちらりとマーサの顔を見た。


 マーサはコクリと小さく頷いて、リットちゃんとルーちゃんに声をかけた。


「リット、ルーちゃんとお散歩に行きましょうか」


「あ、いいね! ねね、ルーちゃん。面白いとこ連れて行ってあげるよ!」


「ほんとー!? ユウ、ママ、行ってきていい?」


「ああ、いいよ。いってらっしゃい、ルーちゃん」


 なにも言われなくとも、視線だけで通じ合う……これが本物の夫婦ってやつよねえ。


 ……って、リットちゃんたちを外に出したってことは、子供には聞かせられないような、ガチでやべえネタかよ……俺が居ない間、一体何が起きたんだ?


「ふう……これで話しやすくなったな」


「……何か問題が起きたのか?」


「ここの住人さ、すげえ増えただろ?」


「ああ、シゲミチから聞いたよ。倍以上に増えたんだってな」


「それもこれもユウのおかげよ。人が増えて賑やかになったしよ、狩人も倍になったから、もう、毎日腹いっぱい肉が食えるようになったんだ」


「そいつあ良かったよ。家も食い物も問題なさそうじゃねえか、いったいなにに困ってんだ?」


「それがな、肉なんだよなあ……」


「おいコラ待てよ、また肉かよ! どんだけ肉が好きなんだよ、お前らはよ!」


 ほんと毎度毎度話の中心は肉! 流石は肉食系(食の好み的な意味合いで)女神様の子供たちだぜ!


「いやあ、照れるぜ。やっぱり肉は偉大だからな」


「褒めてねえからな? つか、腹いっぱい肉を食えてんのに、なにに困るってんだよ?」


「問題なのは量じゃねえ、分配なんだよ」


「分配?」


「うちの連中はよ、ユウのおかげで物だけじゃなく、手伝いなんかでも肉と交換できるようになっただろ」


「ああ、そうだな。シゲミチやザックみたいに、皆の役に立つのに、そうとは思われねえから遊んでるって思われてた奴らも、今じゃ立派な労働力になってるだろ」


「だなあ、あいつらのおかげで、少しずつ生活が楽になってるのを感じるよ」


「良いことじゃねえか」


「けどよ、新しく来た連中は、なんであんな奴らに肉を分けるんだって思うわけよ」


「まあそうだろうな。事情を知らねえわけだからな」


「最初の辺りはよ、まだ良かったんだ。一緒に暮らしているうちに理解してもらえたからな。ところが、一気にわっと集落ごと来た連中はだめだ。なにを言っても聞き入れてくれねえのよ」


「まとまってくるとそういう弊害があるわな。俺たちはずっとこうしてたんだ、文句あるかっていう感じだろ?」


「その通り。なんかもう、空気も悪くなってきてるしよ、どうにかして連中にシゲミチ達のありがたさを伝えて納得させてえんだが、俺には難しくてさあ……」


「実はよ、いつかこういうことが起こるだろうなって思っててよ、なんもかんも丸っと解決する方法を考えてたんだが……ちょうど良かったみたいだな」


「ま、まじかよ……流石ユウだぜ!」


「これをな、作ってきたんだよ……これがありゃ……な?」


「おお……確かに! わかりやすくて良いな!」


「だろ? 俺がこう言ったら、キンタはこんな感じで質問をして……」


「なるほど……わかった、上手くできるか知らねえが、頑張るぜ!」


「うし、こういうのはさっさとやったほうが良い。広場にみんなを集めてくれ!」


「かー! ほんと頼りになるやつだぜ! 急いで集めて来るからよ、頼んだぞ、ユウ!」


「さっさと解決してよ、またみんなでうまい飯食おうぜ!」


「おう! 楽しみにしてるぜ!」


 嬉しそうに駆け出していくキンタ。


 ……実を言えば、こうなるのはもう少し後だと思ってたし、面倒ごとが起きる前に予防して置こうって思っての準備だったんだよな。


 なのに、もうこんなことになってるとはビックリだよ。


 確かにこう……ここに来た時に、以前までは全く感じられなかった、僅かな負の感情と言うか、空気の悪さをちょこっとだけ感じたんだよな。


 こういうギスギスが起こるようになったというのも、バグから解き放たれて成長している証とも言えるが、こういう証はちょっと嬉しくない。


 いやほんと、先を読んで急いで用意してきてよかったわ。


 ……つうか、パンさんのやつ、例によっていつの間にか居ねえんだよな……。


 たぶん、真面目な空気に耐えきれなくなってバックレたんだろうよ……。


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