第23話 さらばウッサロップ
やらかしの日から一夜明けて……。
なんかもう……とんでもねえことになっちまったよ……。
ジャックをはじめとした名付けによる進化を果たした同胞を見たウッサロップたち。
彼ら、彼女らが何を思ったかと言えば……。
『ユウ様、ユウ様! 我らも進化させてください!』
そう……ウッサロップ総出で名付けをねだってきたのである。
パンさんとルーちゃんに視線を送ると、やってあげなさいと、いいんじゃないのと言うわけ。
ああ、もう俺知らねえぞと、順番に並ばせて名前をつけていったわけ。
その結果、なにが起きてしまったかといえば、もうおわかりだろう。
我々が愛したウッサロップはもう居ない! あのウザくも愛らしいウサギさんたち全員が……魔獣の森にいたウッサロップ、総勢八十名がもれなくモ度高めの獣人のような見た目になっちまったのさ……。
そう、二足歩行だし、顔つきも人っぽいけど、全身モフモフとした毛に覆われてんのよ。
だから、いきなり人型になっても、そこまで動揺はしなかったのだが……。
顔を見て性別がわかるっていうか、個体差をしっかり感じられるほどに人っぽい顔してるしさ、併せて身体的特徴もこう……ほぼ人と同じになってるっていうか……アレがたくさんある感じじゃなくて、一対になってばるんばるんしてるっつうか。
ごほん。
いやさ、だってな? こいつら全裸なんだぜ? ケモ度が高いおかげで、全身がモフモフの体毛で覆われてはいるけど、こう……さ?
それはそれでちょっとエッチなんだよ! わかるだろ!?
……早いうちに服を着るって事と、その作り方を教えてやらねえといけねえなって、今日改めて思ったわ。
はあ……いらん仕事を増やしやがって。
あーもう、けしからん、けしからんわ!
「ユウ様、畑を作りたいのですがよろしいでしょうか?」
「ッスゥ…… ふう、びっくりした……そういう利用許可関係は俺じゃなくてルーちゃんに聞いてくれ」
いやあビビった、パンさんかと思ったわ……。
あいつ、たまにしれっと心を読んでやがるからな……ケモでいっぱいの煩悩を見られたら、しこたま罵られちまうだろうな……くわばら、くわばら。
しっかし、こいつら、やたらと勤勉なんだよ。
ヒカリにゃ防衛やら訓練やらの相談をしていたし、ルーちゃんには集落の規模を広げていいかの相談をしていたし。
とにかく、集落をより良い場所にするため、貪欲に質問をしては、あれやこれやと試してるんだよな。
いやほんとこのウサギさんたちパネエんすわ。
なんかさ、家を建てるって言うから、どんなのか聞いたら猫ちぐらが巨大化したような、カゴみたいなやつだったわけよ。
それにウサギさんたちが寝てる姿を想像したら、まあすげえ可愛いなって思ったけど、今のコイツラはどっちかつうと、ケモ度高めの獣人みたいな感じじゃん。
だから、家も普通のがいいんじゃねと……ほんの軽い気持ちでさ、ちっこいワンルームの家をさ、ぽんと一軒建てて見せたんだよ。
そしたらさ……。
『これは素晴らしい! あなたが神か』
『なんて住みやすそうな家なんだ!』
『さすがはユウ様!』
『我らの神! ユウ様! ユウ様!』
いやあ、めちゃくちゃ煽てて煽てて、崇めて崇めて来るんだよ。気持ちよくなっちゃうじゃん?
『ユウ様! これは私たちにも作れるのでしょうか!』
ウサギの姉ちゃんがさ、目をキラキラさせながら聞いてくるわけよ……。
俺を讃える歌を合唱しながらめっちゃ期待のまなざしを向けてくるわけよ……俺が調子に乗らないわけがないよね。
「おう、任せとけ! 俺についてこい!」
なんて、人数分の大工道具を作っちまいましてね……ホイホイとログハウスの作り方を調べて教えてあげちゃったりしてさ……。
はじめは俺の適当な説明をフムフムと聞いていたウサギさんでしたが、あっという間に建造法を覚えてしまいましてね?
俺が飽きて昼寝をしている間に、小さな小屋を一軒建て終わってたんだからびっくりですよ。
今後はこれを参考に応用し、何軒か建てると張り切ってたけどさ……もしかしたら、キンタどころか俺よりも賢くなってしまったのかもしれないわ……。
「なあ……こいつらさ、普通に共通語喋ってるよな……」
「ほんとだ……うわー、もう完全に普通の魔族じゃない……」
「あれだなー、性格も穏やかだし、コイツラなら外に出してキンタたちと交流させてもいいかもなあ」
「確かに……ダンジョンに住む種族として、交流させるのもいいかもね」
「職業はウッサロップのままか……こうなったらもう、ウッサロップっていうより、ウサ族って感じなのにな」
「あ、ばか……ああ……ほら、みなさいよ、この子たちの種族、ウサ族に変わったわよ……」
「えぇ……なんかもう俺、喋るの怖くなってきたんですけど……」
「……後で神力の制御方法おしえたげるね……」
「たのむわ……」
いやあ……ほんと、びっくりするような奇跡が起きちまったが、これはこれで、今後計画してるアレにいい影響を及ぼしそうなんだよな。
丁度ダンジョンに居ることだし、忘れないうちに相談しておくか。
「なあ、パンさんよ。ダンジョンの仕様をちょっと変えてほしいんだけどさ……」
「え? 仕様を? そういや前になにか言ってたわね……」
パンさんの耳に顔を寄せ、ヒソヒソと説明をする。
ウサ族の連中には聞こえてそうな気がするが、まあ聞かれたところで困る話でも無い。
……ただ単に、こうしてるとそれっぽいからやってるだけだ。
「なになに……ええ? 出来るけど……ああ、なるほどね……ルーちゃん、ちょっときて」
「うん、うん、ええー? 面白そう! ユウ! やろうよ! みんな退屈そうだし、きっと喜ぶよ!」
ふふふ……何をするのかって?
ダンジョンをダンジョンとして活躍させるんだよ。
つまりどういうことかって?
それは準備ができてからのお楽しみってことで。
ようし、早速着手すっぞ……と、行きたいところだけど、俺はちょっとキンタのところに用があるのだ。
それも、明日の朝には出発しないといけない。
何しろ今日はもう二十八日だからな、予定通りにことを進めるためには、明日中に向こうについてないといけないんだ。
うん? 絶対間に合わないだろって? そこはそれよ……今はほら、パンさんが居るだろ? 今回だけ特別に女神の森付近までファストトラベルしてもらうのさ……。
というわけで、俺たちはしばらくの間ダンジョン関係のお仕事ができないわけなんだが……。
今の俺たちには、頼りになるんだか、ならないんだか……わからんが、手伝ってくれる連中がいる。
そう、俺たちが居ない間に準備が進むよう、ダンジョンの住人たちに手伝ってもらうことにしたんだ。
俺達はダンジョン外で準備を、住人達にはダンジョン内で準備を。
それぞれ分担して、一気に進めてしまおうってわけ。
沼地のアホ共が暴走してやらかす懸念もあるが……まあ、モル丸先生が居るし、行く前にキチっとやらかしたらどんなに酷い目に遭うか徹底して説明しておけば……たぶん、大丈夫だろう。
さあ、後もうひと頑張りだ。
気張っていこうぜ!




