第3話
衛はスマホを掴むと、都市伝説の“マサミ”についての情報をSNSで手当たり次第に検索し始めた。
あるYouTuberの女性は生配信中に鏡の前で“マサミ”の名前を五回唱えた。すると、絶叫が轟く。撮影カメラのレンズに、夥しい量の血飛沫で真っ赤のまま生配信は何時間も配信されていた。
“都市伝説“は架空のおとぎ話としか思ってない視聴者は、これは演出か何かと思っていたようだ。だが、あまりにも絵変りしない。ある視聴者の通報で警察官がその場へ向かった。
そこに居たYouTuberの女性は喉元を鋭利な刃物で引き裂かれてから首をひと回転拗られて首の骨がへし折られていたのだった。
衛は何かにせっつかれる思いで、次から次とSNSで検索し続けた。それはまるで強迫観念の波に呑み込まれているといった感じだった。
また別のSNSで話題になっていたのは、廃墟系YouTuberの配信動画であった。
廃墟探索する動画を撮影中に廃ホテルの巨大なの鏡の前で“マサミ”の名前を既に四回唱えていた。そして、自宅でその動画の投稿。その後、生配信ライブしている時に悲劇は起こった。
「マサミ、マサミ、マサミ、マサミ」
男は先に投稿した動画を同時に再生。流している動画の中で四回あの名前を言った。生ライブ配信の中で本人が映像を見ながら、五回目となる「マサミ」と言った。そのことにより、都市伝説のマサミの呪いのような理不尽なルールが発動されたのだ。
断末魔の叫びとともに腹部が突然破裂し、腸を部屋の辺り一面に撒き散らして絶命した。
規則正しく小刻みに痙攣している。男の目の焦点が合っていない表情の映像が、その後ずっと生配信された。
SNSでも同じ様な死に方をしている人を知っている等の情報が数多くあがっている。だが、誰一人として殺戮者の姿を見たものはいないのだった。
「マジかよ! この現代社会で、こんなホラー映画みたいな非現実的な事が起こるなんて……」
衛は動揺から左手からスマホを床に落とした。
そして震える両手で己の顔を覆いその場に蹲る。
これは只事ではない。
そう言葉にして身の内から溢れ出す恐怖。心身共に喰い尽くされる思いに、打ちひしがれた。
何故なら、衛は既にあの呪いの名前を口にしている。
残り二回あの名前を呟いたら
――死ぬのだ。
生とは生きているときにはありがたみを感じない。だが、死の方から足音を立てて近づいて来るときには、生きていたいと必死に足掻く。
今まで当たり前のように生きている。だから突然“死の宣告”を突きつけられても、己の処理能力が悲鳴を上げ感情が追いつかないのである。
病の様に薬を飲めば回復するとか手術をすれば治るとかではなく、今回の相手は“呪い”の類いで得体が知れないのだ。
「……う、うう……もう駄目だ……お、俺も……俺も、死ぬんだ……」
あまりの恐怖から衛の思考がそこで停止した。すべての恐怖から逃避するように、やがて深い眠りの中へ沈み込んでいった。
どこまでも深い闇は深淵へと向かっている。衛の魂までもが、どこまでも闇色に溶け込ませ混じり合わせていくのであった。
―(つづく)―




