第25話 検査の日、そして僕の夜
今日は検査の日だった。
朝7時前に目が覚め、洗濯が終わるのを待つ。干し終わった頃には8時を過ぎていた。
暇になると不安はやってくる。
だが今日は、以前のように“死にたくなる不安”ではなく、恋愛面の不安だった。
恋愛は、成就していようといまいと、僕の——そして俺の——思考を鈍らせる。
どうしても意識がそちらに引き寄せられる。
ありもしない未来を考えていると、あっという間に時間が潰れていく。
こうして時間が進んでいくこと自体が、ある意味で幸せだとも思った。
10時過ぎ、バスに乗って病院へ向かう。
いつもより余裕を持って動いていたので、多少の遅れも問題はなかった。
病院に着き、受付をして30分ほど待つ。
緊張していたので、時間は一瞬で過ぎた。
点滴を打ち、喉に麻酔をかけられたと思ったら——
気づけばカメラを取り出す瞬間だった。
眠っている間にすべて終わったようだ。
説明を受けた気がするが、意識がはっきりせずほとんど覚えていない。
十二指腸に炎症があったらしいが、ひどくはなかったようだ。
病院を出た時には12時半。
「1時間は飲食禁止」と言われたので、午後診察まで時間を潰すことにした。
今日はなぜか気分が良かった。
普段なら買わないキャラクター雑貨の店に入り、好きなキャラのぬいぐるみとTシャツを買った。
検査を頑張った自分への、少し大きなご褒美だ。
ついでに、来年小学生になる姪へのプレゼントも買った。
次に服を見に行った。服には興味がない。
彼女がいた頃は選んでもらっていたが、今は自分ではうまく選べない。
そんなことを考えながら歩いていると、時間は14時を回っていた。
デパートを出て日用品を買い、久しぶりに古本屋へ。
絶版になった本との偶然の出会いがあり、気づけば10冊ほど抱えていた。
レジを終える頃には、午後診察の時間だった。
荷物を抱えてクリニックへ戻る。
医者は言った。
「気分、上がりすぎてない?
薬は“落ちないため”のもので、上がりすぎる場合は調整が必要なんだよ。」
確かに今日は気分が高かった。
しかし、鬱のような沈みも消えてはいない。
だから薬は変えなくて大丈夫だと答えた。
薬局で薬を受け取る。
今日の医療費だけで2万円を超え、買い物を合わせれば4万円ほどの出費だった。
普段なら落ち込むところだが、今日は幸せだった。
家に着いた頃には16時を過ぎていた。
シャワーを浴び、明日のバイトの準備をし、消化の良い食事をとる。
18時を過ぎた頃、今日はもうやることがないと気づいた。
その瞬間、緊張の糸が切れたのか、鬱のスイッチが入ったのか、
不安が止まらなくなった。
“俺の時間” が終わり、
“僕の夜” がやってきたのだ。
まだ夕方だというのに——。
心臓を掴まれるような不快感、
胃の奥からじわりとせり上がる重さ、
頭の中をぐちゃぐちゃにかき乱す思考。
回避するために早く寝る、といういつもの手段が使えない時間帯だった。
今動くのは危険だと直感し、ベッドに横になる。
1時間経っても、不安は僕を攻め続けた。
眠りたい。
逃げたい。
消したいわけではない。
ただ、この不安の波を止めたい。
夜の薬を準備する。
ついに10錠になった。
その事実がまた僕を苦しめる。
「薬がなければ生きていけないのではないか」という感覚。
誰も僕を必要としておらず、誰も僕を愛さないのではないかという確信めいた不安。
自分は弱い。
だがその弱さを否定できない。
今日はもう、音楽を聴きながら、意識が落ちるのを待つしかなかった。




