友人と共に建国
朝の風が草原を吹き抜けていた。
空はどこまでも青い。
雲はゆっくりと流れ、鳥達が自由に空を飛んでいる。
そんな穏やかな景色の中、ミリアは大きく伸びをした。
「ええ天気やなぁ。」
丘の上に積み上げられた石材の山に腰掛けながら、のんびりと空を見上げる。
桜色の長い髪が風に揺れた。
猫耳も機嫌良さそうに動いている。
その様子を見ていたアリシアは呆れたようにため息を吐いた。
「誰のせいで朝から働いとると思っとるん。」
「私やな。」
「自覚あるんや。」
「あるで。」
「ほなもう少し働いて。」
「それは考えとく。」
「絶対働かへんやつや。」
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二人は顔を見合わせて笑った。
建国を始めてまだ数日。
それでも何もなかった草原には少しずつ変化が現れている。
城の予定地。
積み上げられた石材。
地面に描かれた設計図。
本当に少しだけだ。
しかし確実に前へ進んでいた。
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アリシアは積み上がった石材を見上げる。
今でも信じられない。
普通なら何十人もの職人が必要になる量だ。
それを二人で集めてしまった。
正確にはミリア一人で集めたと言ってもいい。
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「なあ。」
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アリシアが口を開く。
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「ん?」
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「ほんまに建築魔法なん?」
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ミリアは首を傾げた。
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「建築魔法やで?」
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「いや、建築魔法やけど。」
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「うん。」
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「規模がおかしい。」
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ミリアは少し考えた。
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そして。
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「便利やったで。」
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「便利とかいう問題ちゃうねん。」
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アリシアは頭を抱える。
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巨大な岩を浮かせる。
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加工する。
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運ぶ。
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それを平然とやってのけた。
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本人は全く気にしていない。
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むしろ。
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「次はもっと効率良くできそうや。」
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などと言っている。
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「やめて。」
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「なんでや。」
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「怖いから。」
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二人はまた笑った。
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少しして。
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ミリアは石材の上から飛び降りる。
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「よし。」
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「何するん?」
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「土台や。」
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城を建てるなら基礎が必要だ。
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どれだけ立派な建物でも土台が弱ければ意味がない。
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ミリアは設計図を見ながら位置を確認する。
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その真剣な表情を見ていると、不思議と別人のように見える。
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普段はのんびりしている。
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面倒くさがりでもある。
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だが。
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やる時は本気だ。
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それがミリアだった。
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「ここ。」
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ミリアが地面を指差す。
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「最初の石。」
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アリシアも近付く。
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二人で大きな石材を見る。
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これから神皇国の中心になる城。
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その最初の一歩。
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「なんか緊張するな。」
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アリシアが呟く。
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「そう?」
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「するやろ。」
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「私は楽しみや。」
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ミリアは笑った。
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そして。
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石材へ手を添える。
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ゆっくりと位置を調整する。
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慎重に。
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丁寧に。
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やがて。
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最初の石が置かれた。
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しばらく二人はその石を見つめる。
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たった一つの石。
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それだけだ。
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しかし意味は大きい。
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神皇国最初の建築物。
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その始まりだった。
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「置けたな。」
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アリシアが言う。
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「置けたな。」
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ミリアも頷いた。
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不思議と嬉しかった。
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昼になる。
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二人は木陰で休憩していた。
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持ってきたパンを食べる。
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風が気持ちいい。
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しばらく無言だった。
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やがてアリシアが空を見上げながら言う。
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「なあ。」
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「ん?」
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「なんで私誘ったん?」
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ミリアは少し驚いた顔をした。
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「今さらやな。」
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「今さらや。」
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アリシアは笑う。
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国を作る。
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そんな無茶な話に付き合っている。
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だから少しくらい聞いてもいいだろうと思った。
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ミリアは少し考えた。
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そして。
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「一人やと寂しいやん。」
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そう答えた。
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アリシアは目を瞬いた。
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「それだけ?」
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「それだけ。」
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ミリアは笑う。
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「国作るんも。」
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「城作るんも。」
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「一人やとつまらん。」
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「アリシアおった方が楽しい。」
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その言葉に。
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アリシアは少し照れた。
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「そういうこと普通に言うなや。」
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「思ったから言うただけや。」
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「ずるいわ。」
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「何がや?」
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本当に分かっていない顔だった。
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だからこそ。
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アリシアは苦笑する。
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昔からこうだ。
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悪気なく人の心に入ってくる。
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だから放っておけない。
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だから一緒にいるのかもしれない。
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夕方。
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二人は丘の上に並んで立つ。
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目の前には石材の山。
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そして最初の土台。
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まだ何も完成していない。
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それでも確かに前へ進んでいる。
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ミリアは夕日に照らされながら微笑んだ。
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「ええ感じやな。」
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アリシアも頷く。
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「せやな。」
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何もない草原だった場所に。
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少しずつ未来が形になり始めていた。
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そして。
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女皇となる少女と、その最初の友人による建国の物語は、まだ始まったばかりだった。




