最初の城
朝日が草原を照らしていた。
昨日まで何もなかった場所。
だがミリアにとっては違った。
まだ見えないだけで、ここには街がある。
人々の暮らしがある。
賑やかな市場がある。
そして国がある。
少なくともミリアにはそう見えていた。
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「ふあぁ……。」
ミリアは大きく欠伸をした。
猫耳がぴこりと動く。
その様子を見ていたアリシアは呆れたように言った。
「女皇になる予定の人が朝からだらけてどうするん。」
「まだ女皇ちゃうし。」
「予定ではなるんやろ?」
「予定では。」
「ほな同じや。」
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朝食を食べ終えた二人は丘の上へ向かった。
昨日と同じ場所だ。
風が気持ちいい。
遠くまで見渡せる。
国を作るなら悪くない立地だった。
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ミリアは辺りを見回す。
そして地面にしゃがみ込んだ。
近くに落ちていた枝を拾う。
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「何しとるん?」
アリシアが尋ねる。
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「設計。」
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「設計?」
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「城の。」
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アリシアは思わず目を瞬いた。
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「もう城作るん?」
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「作る。」
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即答だった。
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「昨日、人が先言うてへんかった?」
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「言うた。」
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「ほな?」
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「拠点も要る。」
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それは確かにそうだった。
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今は野宿でどうにかなっている。
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しかし毎日では厳しい。
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雨が降れば困る。
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荷物を保管する場所も必要だ。
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何より。
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国の中心が必要だった。
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ミリアは枝で地面に線を引く。
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四角。
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さらに四角。
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通路。
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塔。
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階段。
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中庭。
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次々と形が出来上がっていく。
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アリシアは思わず覗き込んだ。
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「……すご。」
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「ん?」
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「ちゃんと考えてたんやな。」
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ミリアは少し不満そうな顔をした。
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「失礼やな。」
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「だって昨日の感じやと勢いだけやと思うやん。」
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「考えてるで。」
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「ほんまに?」
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「たぶん。」
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「そのたぶんやめて。」
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ミリアは構わず図面を描き続ける。
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「ここが門。」
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枝で入口を示す。
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「ここが広場。」
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さらに中央を指差す。
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「こっちが住む場所。」
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「食堂。」
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「倉庫。」
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「会議室。」
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アリシアは驚いていた。
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思ったより本格的だ。
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しかも無駄がない。
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住むこと。
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守ること。
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働くこと。
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それらがちゃんと考えられている。
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「玉座の間は?」
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アリシアが聞く。
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ミリアは少し考えた。
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「一応ある。」
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「一応なんや。」
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「要るやろ?」
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「まあ要るな。」
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「でも豪華なんはいらん。」
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「なんで?」
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ミリアは真顔で答えた。
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「掃除大変やん。」
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数秒。
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アリシアは固まった。
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「そこなん!?」
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「大事やで。」
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ミリアは真面目だった。
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「毎日住むんやし。」
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「確かに間違ってはないけど!」
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アリシアは思わず笑ってしまう。
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王族や貴族なら。
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もっと豪華な話をする。
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だがミリアは違った。
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住みやすさ。
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使いやすさ。
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掃除のしやすさ。
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そんなことばかり気にしている。
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しかし。
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だからこそ。
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国民も暮らしやすい国になるのかもしれない。
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ミリアは立ち上がった。
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そして丘の先を指差す。
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「城はあそこ。」
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少し高くなった場所だった。
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周囲を見渡せる。
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防衛にも向いている。
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「ええ場所やな。」
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アリシアも頷いた。
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ミリアは静かに景色を見る。
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まだ何もない。
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本当に何もない。
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けれど。
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彼女には見えていた。
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立派な城が。
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人々の笑顔が。
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賑やかな街が。
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未来の神皇国が。
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「よし。」
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ミリアは笑う。
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「作ろか。」
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「どうやって?」
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アリシアが聞く。
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するとミリアも聞き返した。
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「建築魔法知らん?」
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「知ってるけど。」
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「使う。」
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「使えるん?」
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ミリアは少し考える。
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そして。
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「たぶん。」
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「またそれや!」
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アリシアの声が草原に響いた。
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風が吹く。
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桜色の長い髪が揺れる。
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猫耳も楽しそうに動いていた。
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こうして。
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ミリア神皇国最初の建築。
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未来の女皇が住む城の建設計画が始まった。
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まだ石一つ積まれていない。
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それでも確かに。
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神皇国は前へ進み始めていたのである。
一部、二部
呼んでみた感想を頂けたらと思います。
まだ登場人物は少ないです。
お読みになったら
評価してくれると、励みになります。
面白い
普通
つまらない
など、正直に書いて下さい。




