表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
93/96

制裁探偵事務所―終― 『惨劇』


「ふむ・・・いい覚悟だ」

 彼女は言う。傍観者のように―― だが、その腕には『草薙』が携えてあった。

 「行くぞ」

 貫かれ―― そして光り輝く。

 英雄(ヒーロー)は、文字通りヒーローになった気分を味わった。いや、何度か経験しているはずなのだが、今回は特別だった。

 「この闘いに、終止符を打つ―― その役目は、俺が果たす」

 その使命感は、どこか自惚れていて。

 だから、付け入られた。


 「あ、一応言っておくけど、『歪曲舞踏(リバースリバース)』はまだ残ってるからね」


 そう、失敗したのだ。王子砂城の『巻き戻す』想像は途中で途絶え、本当の理想の地点であったはずの、『紅音がスタイルを持たない世界』にすることができなかった。

 そして、蒼の体を歪んだ世界に置き去りにしたまま、戻ってきた。

 「さて――」

 その時点で死亡をしていた数名が、生き返ることはなかった。

 「そ、そんな―― 凪沙・・・」

 紅と幸の意気が沈む。無理もない。希望を捨てられたのだ。

 だが、最悪はまだ始まったばかりである。彼女のスタイルの対象は無制限、つまり、だ。


 「次の標的はお前だ。英雄(ヒーロー)


 短く吐き捨てて、自惚れを持ってしまった彼に向かって行く。

 『草薙』が発動しているわずかな時間。その本当にわずかな時の狭間の中で、彼女は彼の体を乗っ取った。

 ―― スタイルは、先へ進まなかった。

 「英雄(ヒーロー)―― 命!!!」

 「命、さん・・・?」

 「そして、私は『死なない』」

 英雄(ヒーロー)の声でそう言うのだ。そして、崩れていく英雄(ヒーロー)の体から『矢』を引き抜いて、自らの体へと投げた。

 「これで―― もう『やり直し』は出来ない!!」


 「―― そう簡単にいってたまるか、ボケ」

 その『矢』を蹴り飛ばしたのは、狂兵器(レクイエム)。構えたすぐ隣に、細菌(ウィルス)が着く。

 「蒼さんの体は、どこかへと消えた。つまり、英雄(ヒーロー)の体も、お前に乗っ取られた時点で、精神はそこには無くなってしまったんだろう?」

 「・・・・・・ああ、まぁ、その通りだよ」

 やっと自らの体に戻った紅音。だるそうに首を鳴らしている。

 「面倒くさい二人が残ったなぁ・・・。本当に、本当に少ない可能性の話だけど、私のスタイルが跳ね返されそうな空気・・・。ここは、使わない方が良さそうだ」

 「知らねぇよ。いいからかかってこいよ」

 挑発する狂兵器(レクイエム)。相当怒っている。

 「怖い顔するなよ・・・今の私には、何もすることはできないって」

 「そうかよ――」

 先に動いたのは狂兵器(レクイエム)ではなく、細菌(ウィルス)だった。王子砂城が残した『新月』。『全ての生物の能力を手にする』というスタイルは、正直なところ、敵なしだった。

 「だから、的にはならない。私は、何としてでも生き残るから!!」

 そう言って、彼女は幸の体へと侵入した。してしまった。

 英雄(ヒーロー)は体が崩れ、頼みの綱はいつ切れるかどうかわからないという状況の中―― またも、仲間の体を盗られた。


 「さぁ、どうする? 殺すか? 私を殺すと、この体の主を殺すことになるよ・・・。あ、でも精神は、既に私が殺したから。別に悲鳴の一つでも上げやしないって」

 そう言ってへらへら笑う紅音。

 ―― だが、誰も予想出来なかった自体が起こる。

 パァン―― と。

 迷いの時間など無く、彼女は―― 紅は、仲間に向かって引き金を引いた。しかし、彼女は人間である。顔は、様々な感情に振り回され、ぐちゃぐちゃになっていた。

 「べ、紅―― さん?」

 「仕方ねぇだろ!」

 泣き叫んだ。右鎖骨の下辺りを打ち抜いたので、肩のあたりが抉れている『それ』を見もしないで。

 だから、彼女の行動は、賢明とはいえ、正解とは言えなかった。

 「本当に甘いよね。甘甘だよ。『自分なら大丈夫』だなんて思っているのかな? 甘いね」

 そう言って、発動させた。

 ―― 『銃器式紅一点(ブラックインルージュ)』。

 戦ヶ丘紅の、スタイル。実際、相当な射撃精度を誇る。

 「さて、どうする? 少年」

 残るは、二人。だが、狂兵器(レクイエム)は既に、策を練っていた。

 ―― 奇跡を起こせる策。

 確率なんて物はない。全ては、運命に任せる。

 この状況を打開するのには、この方法しかないのだ。

 「・・・日露璃。この状況を、お前、突破してハッピーエンドに出来るか?」

 「・・・・・・いや、すまねぇが、皆目検討もつかねぇな」

 「だろうな。だから、今回は、いや、そうだな。今は、精一杯お願いしよう」

 そう言って、一歩下がる。


 「俺に『奇跡』を起こさせてくれ」


 その願いは、彼にすぐ届いた。

 オーケー、と軽く承諾した細菌(ウィルス)は、新月の下で、自らの上司を殺した。頭部を殴り、内側から。だが、紅音も負けてはいなかった。『銃器式紅一点(ブラックインルージュ)』は、こんな状況の中でも、位置を正確に捉え、発砲することができる。

 だから、相討ち。

 お互いの頭部が、崩れていく。


 しばらくして。

 混乱しているのか、中々自分の体に戻らない紅音だったが、目の前の敵が急にムカついてきたので、体に戻ることにした。

 「さて、黒崎紅音。この一対の状態で、お前はどう語る?」

 「語ることなんてない。あんたら、何がしたいんだ?」

 「それは、お前の歩むべき道を記しているだけだよ。命懸けでな」

 「・・・馬鹿じゃあないのか?」

 彼女は心底訳がわからなくなった。だが、同時に警戒した。

 何か、一発逆転の策でもあるんじゃあないか。と。

 スタイルというのは、言うなれば『何でもアリ』な物だから、『有り得ない』ことは無い。しかもそれは、―― 目の前の化物。1000000のスタイルを持つ彼の前では、とても調度がいい言葉なのだった。

 もっとも、今の彼に、その様な数のスタイルは存在しないが。


 「さて、じゃあ、私が動こう。『新世界』へと進むには、このスタイルでは頼り無さ過ぎる。だから、『進ませる』。もう一度ッ!!」

 「やれよ。そうでもしねぇと、盛り上がらねぇからな」

 「そんな余裕も今のうちだ! こんな面倒な世界、今に滅ぼしてやる!!」


 そして彼女は―― 『全てを知っている』三日月かぐやの元へと憑依した。


 そう、全てを知っているのだ。だから、避けなかった。

 「信じているぞ。闘々龍萌九頭」

 「ああ。任せておけ」

 「・・・?」

 短い会話に、紅音は一瞬不信に思ったが、それも刹那である―― すぐに草薙を発動し、自分の体へと打ち込んだ。そして打ち込むと同時に自分の体に戻り、かぐやはがくんと倒れた。

 「・・・今度は、もっと確実に、もっと幸せな『新世界』へと――」

 「・・・・・・やっと準備が整った」

 ふぅ。と一息する。

 そして、彼女に聞こえない声で、言った。


 「―― 『終了宣告(クライマックス)』だ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ