制裁探偵事務所―終― 『優勢と劣性』
「火奈兔様!? ご無事で!」
「ああ凪沙ちゃん―― 加勢する!」
地下牢のすぐそばで、彼女たちの闘いは続いていた。
「ちぃ! もう破られたか―― なんで見張りをもっと付けなかったんだろうねぇ世界樹は!」
「知るか!」
「そのメイドのお嬢ちゃん一人だけでも骨が折れるって言うのに―― うおっ」
「余裕ぶっこいてんじゃねぇぞこらぁ!」
――最近の子供はこうも怖いのか、と『天国』は思った。
火奈兔の高温の攻撃をのらりくらりと躱しながら、背を向けて走る。
「えっ! ちょ、逃げんな――」
「俺の能力は『受身』なんだよ―― そんな猛攻は容量オーバーだから、ここは一旦引かせてもらう!」
階段を全速力で駆け上がる。何せ追いつかれたら元も子もない。
幸い、屋敷の中は迷宮のように入り組んでいる。
「逃げるが―― 勝ちっ!」
―― 彼の思惑は成功し、彼女たちを巻くことはできた。
できた、が―― 甘かった。
火奈兔の能力の、『規模の大きさ』を考慮していなかった。
―― 『炎上』した。
屋敷の中の、全ての物質が、煙を上げ炎上した。
「―― くっ・・・なんだよ、これ」
「見つけましたわ」
たまらず炎の中から脱出した、その場所に、一切の火がついていない、白黒のメイドが居た。
「ごきげんよう」
「おっとぉ・・・? ピンチかぁこれ」
■ ■
「ひぃぃいいぃぃぃいいいいろおおおおおおおぉぉぉぉおお!!!!!!」
猛々しい雄叫びと共に、目の前に立ちはだかるソプラを蹴飛ばし、数十メートルぶっ飛ばしたのは、他でもない狂兵器。
その後ろには、監視長、狐の姿があった。
「来てくれたのか!」
「まぁ、他でもない英雄の頼みならね」
「・・・あれ、守人は?」
「・・・・・・あれ」
その場には、その戦地には守人こと、姫劉院幸の姿はどこにもなかった。
それもそのはず―― 今、彼は、独自の方法で、誰にも気づかれないようにと移動しているのだから。
「ぐぅ・・・? ぞ、増援か・・・」
「そうだ・・・まずはあいつをどうにかしないと」
「あの男をどうにかするんだな。分かったぜ―― ぎははははははは!!!!」
「気をつけろ狂兵器! そいつに常識は通用しないぞ!」
「・・・それは狂兵器も同じだと思いますが?」
―― それを聞いて安心できる状況ではない。
彼を倒すことは、『できない』ということを教えねばいけない。
「違うんだ! あいつは――」
「英雄」
狂兵器に呼び止められた。英雄が振り向く――そこには、四肢をバラバラにされたソプラの姿があった。
「なっ・・・」
「これでいいのか? ぎははは―― はァッ!」
「ソプラを、あんな一瞬で――」
「―― この子を借りてきました」
「え? 誰?」
監視長が抱いている(羨ましい)子供が、英雄を見据えていた。
白髪の、男の子だ。
「浮雲証くん。この子は、『スタイルを無効化するスタイル』を持っています」
「・・・無敵じゃないか」
「少なくとも、あの男には効果があったようですね」
「―― おーい、何やってんだぁ、次行くぞ次ィ!」
「・・・私が彼をあまり許可しないのは、あの性格が嫌いだということが一に挙げられます」
「・・・そうなのか」
■ ■
―― 山道を進む一台のバイク。
守人が乗っていた。
「・・・・・・」
全速力で進む―― 女の子のような体には不似合いな大型のバイクで。
ただただ、仲間と、『家族』のことを思って――
そして―― 目的地へ着く。
目にしたのは―― 胃の辺りを、静蒼無双で貫かれた、兄の姿だった。




