制裁探偵事務所―終― 『再生』
「やれやれ、今日は来客が多いな・・・」
「希望くん・・・君は」
レビリオン精神病院―― 地面がえぐれたその地に立つのは、英雄、蒼、そして白黒暴徒。
「あの件は何とかなりましたか?」
「お陰様でな。だけど、残念だ―― 俺達が倒すべき人間の内に入っているとは」
「戦いにくいですね。ですが、殺しやすい―― 暗殺者の気分です」
「『先導者』・・・それが君だったね」
「ええ」
「ここは俺に任せて、英雄、白黒暴徒・・・君達は紅とヒナちゃんを助けるんだ」
「分かりました」
「・・・死なないでくださいよ」
「誰に物を言ってるんだ。俺が死ぬわけないだろ――」
「フラグ立てるのやめてください。任せました!」
「誰が行かせると思います?」
「俺が!」
――蒼による時間差の攻撃――
直撃はしなかったものの、希望に隙を与えた。
「厄介なスタイルだ・・・」
「そいつはどーもッ!」
■ ■
「―― うおッしゃあッ! 侵入成功! 探すぞ!」
「分かっています!」
扉をぶち抜いた―― 音が聞こえたのか、地下から、紅の声がした。
「地下っ!?」
まず、白黒暴徒が向かう。
遅れて、英雄。
―― 案の定、地下には、見たことのない人間がいた。
「・・・?」
姿は見えないが―― 気配だけが、佇んでいる。
「姿が見えなくなるスタイル? 何者だ、お前」
「それはこっちの台詞だ。不法侵入者」
向こう側の彼は、嫌味な口調でそう言った。
「名を名乗れ、そこからだ」
「・・・明日来日凪沙―― 白黒暴徒」
「・・・・・・白黒暴徒・・・?」
「ここはお任せ下さい。紅様方を」
「・・・ありがとう」
―― 刹那、影が動いた。
影に反応し、白黒暴徒も動いた。
―― 英雄を背後から攻撃しようとする『天国』を、白黒暴徒が止めた形になった。
「俺は『天国』・・・俺の攻撃を止めたのはお前が初めてだぜ、白黒暴徒とやら」
「光栄ですわ。あなたも、とても端麗なお顔立ちですこと」
「姿を見られたか―― 殺すしかねぇな」
「背後すらまともに取れない青二才が、プロに歯向かえば、結果は分かりますわね?」
あの時の英雄の背中は、完全に任していた。
自分への圧倒的な信頼―― 彼女は、それが嬉しかった。
―― だから
「―― 今のわたくしは、誰にも、負けることはありません」
「なら、勝って死んでもらおう」
―― しかし、相性が悪い。
天国というのは、樹が付けた名前である。由来は、『常に天国にいるような戦い方をするから』というもの。
―― 彼には、『理由がない』
だから、強い―― 強度を持たない強さを、彼は持っている。
「お前に『天国』の謎が解けるかぁぁああ??」
故に、彼は、複雑である――。
■ ■
「会いたかったぜー、愛しの英雄」
「茶化さないでください。ほら、錠は壊しましたよ」
「さすが英雄、決断と行動が早いね」
「ちょっと黙っててヒナちゃん」
――少し向こうで、仲間が戦っている。
スタイルが使えない空間だったその場所で、変化が起こった。
「ん? 使えるぞ」
「ヒナちゃんは、白黒暴徒に加勢して―― 俺と紅さんは、地上の蒼に加勢する」
「イエッサー」
「決まったのなら行くぞ――」
■ ■
「紅さん・・・いや、紅」
「なんだ、英雄」
外に出る前、彼が言う。
「オートさん、見てませんか?」
「いや? 見てないが」
「・・・俺、心配なんで探してきてもいいですか?」
「・・・・・・わぁったよ。任せとけ」
「ありがとうございます!」
細菌。
仲間、師匠―― 英雄にとっては、なくてはならない存在だった。
先に、英雄が飛び出した瞬間―― 彼が、紅から目を離した瞬間に―― 紅が拉致された。
「えっ!? またぁ―― もが」
「る、紅!!」
「英雄! 構うな! 行け!」
「くっ・・・KOI!」
『――はい!』
携帯電話の電源を入れた瞬間に、返事が来た。
『話は大体聞いてました―― オートさん、やっぱりいないんですね』
「居ないから、探しに行くんだ」
彼の目は、何かに感づいているような――
「『黒鳥の砦』に繋いで。皆を呼ぶ」
『分かりました』
――キャッチ。彼は、この時間が嫌いだ。
「もしもし? 皆、来てくれ。今すぐだ―― もう心配はいらない。皆の戦力が必要だ」
その一言―― それだけで、皆は集まる。
『・・・すっかりリーダーですよね』
「何か言ったか?」
『何でもないです。ほら、行きましょう』
病院の脇の森林へ入る――。
「なんでこっちに来たんだ? KOI」
『女の勘です』
「・・・・・・」
―― でもまぁ、少しリラックスはできた。
彼女の言動は、場を和ませる―― そんなことを思った瞬間に―― 聞いたことのある声がした。
「ならば、その『女の勘』というのは、我に味方しているようだ」
「な・・・て、てめぇは――」
大柄な男性―― 白衣を身にまとう――
「この形で会うのは初めてだが、あえて、『久しぶり』と言っておこう―― いい目になったな―― 小さな英雄よ」
「し、『屍薔薇ソプラ』・・・」
「言わなかったか? 我は死なぬ―― 屍である我はな。 重症を負ったが、回復し、今はこの通りだ」
「・・・ぐぅ」
「そうだ。警戒しろ―― そうでもせねば、我の怒りは収まらぬからな」
そう言った彼は、――がががと笑った。
■ ■
「畜生―― 離しやがれ―― 誰だ――」
紅のその言葉は、口を抑えられているので、通じない。
連れてこられたのは、『院長室』
「やはり、私の目の届く場所に置いておくべきでした」
「・・・樹ィ」
斎藤樹が座する――
「ですが、あなたにはもう、利用価値が無いということを、私は言いそびれていましたね」
「はぁ?」
冷たく言う樹に、強く当たる紅。
「・・・『紅音』。こちらへ来なさい」
紅音と呼ばれたのは、紅を拉致した本人。
「は・・・? え?」
「私の計画は、続いているのですよ? 繋がりませんか?」
―― 人間を作る機械 ――
「あなたの遺伝子から、私に忠実な、もうひとりの戦ヶ丘紅を作りました」
「・・・気持ち悪い」
「でしょうね」
―― そして
「そいつには、新しいスタイルでも付けてるのか?」
「・・・よく分かりましたね」
『再生』による抗争。
スタイルを作る機関。
目の前には、若き日の自分が立っていた。
「さて、紅。あなたは、既に私の計画の障害となりました。よって、ここで消えていただきたい」
「・・・はいそうですか。と言うとでも思うか?」
「思いませんね。ですから――
――― 紅音、殺しなさい。
こうするのが、正しい」
「・・・悪趣味だな」
「褒め言葉です」
変わろうという意識がない―― 黒崎紅音。
「さて、あんたにゃ私はいらないだろう。だけど、それと同じで、私にはあんたは要らないんだよ。消えてもらう」
それぞれの、決闘――。
姫劉院希望vs争谷蒼
天国vs明日来日凪沙&太刀風火奈兔
屍薔薇ソプラvs斎藤命
黒崎紅音vs戦ヶ丘紅 ――――




