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制裁探偵事務所―終― 『真実の価値』

あけまして、おめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。


相変わらず不定期更新ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

斎藤命 姫劉院幸 一昨年日露璃 KOI 明日来日凪沙 砂滑海 監視長 闘々龍萌九頭 太刀風火奈兔 戦ヶ丘紅 争谷蒼……この11人が繰り広げる日常も、残りわずかです。

 どうか、最後まで見届けてください! 


 「それじゃあ、行ってくる」

 「気をつけてください」


 まず、樹の元へ行く。

 レビリオン精神病院へ行くことも考えたが、今回は敵である―― まず、上田政宗に会うことにした。

 とは言っても、彼の家へ行くだけなので、生きているかは定かではない。


 「あぁ・・・俺も行きたかったな」

 「お前のスタイルが使えるところじゃねぇ。今は私に任せとけ」


 厳粛な審査の結果、紅と蒼と火奈兔が行くことになった。


 「命、お前はオートくんのとこにでも行ってこいや」

 「あ、そうですね。行ってきます」

 「残された『黒鳥の砦』も、『狂兵器(レクイエム)』が居れば大丈夫でしょう」

 「だな」



 ■      ■



 「命はどんな反応してた?」

 『まぁ驚いてましたね』

 「・・・だろうな」

 はぁ、とため息を吐く日露璃。

 『でも、これで隠し事が一つ減りました! 気が軽くなったんじゃないですか?』

 「お前の言うことも一理あるけどな。そう簡単な物じゃないんだ」

 『あ、命くん。来ましたよ』

 「ああぁ、来たかぁぁ・・・」


 ピンポーン


 一階で母と命の話し声が聞こえる。

 ―― ま、ここまでだな。


 「そろそろ、引きこもりも卒業しないとな」

 『思い立ちましたか?』

 「勘違いすんな。あの時は大して理由はなかったけど、今回は意思がある」

 『それを聞いて安心しました』

 

 ドアを開ける。

 階段を下りる―― 昼に、外の光を浴びた階段を見るのは、久しぶりだ。

 「いいよ、お袋。おれが出る」

 「え・・・・・・」

 呆然としている母をよそに、命と対面する。


 「師匠、あんたが、一昨年日露璃――『細菌(ウィルス)』だったのか」

 「その通りだ・・・ってか、表札で分かんなかったのかよ」

 「表札? そんなもの――」


 まぁ、さっき取り付けたばっかだけど・・・。

 おれ自身、知らないことを知らなかったことにしておいた方が都合がいい気がする。


 「いや、まあいい。取り敢えず、みんなに顔を見せよう。話はKOIから聞いてるよな?」

 「・・・ああ。大丈夫。心配ない」

 「・・・・・・」



 ■        ■



 「・・・裏切り者が一体何の用だ」

 「貴方を尋問したいと思いまして」


 一軒家―― しかし一人暮らし。

 『武器商人』の上田政宗は、そんな家に住んでいた。


 「尋問か。断る。帰れ」

 「強制です―― 上田さん、旧友を自らの手で傷つけたくはない」

 「ていうか、言ったら俺殺されるから。世界樹に殺されるから」

 「ですから、俺達が斎藤樹を倒すために死んでくださいと言っているんです」

 「素晴らしく、それでいて美しいほどに自己中心的な考えだよ全く」

 「それほどでも無いですよ」

 「褒めてねぇし、ホント帰ってくれ。もう俺の役目は『あの時』で完遂したんだ」

 「無理です―― 帰りませ――――」



   「君達は・・・っ」



 そんな青年の声と共に、均衡は崩れた。

 「おいおい、誰だ。この異常(イレギュラー)は」

 「ひ、久しぶりじゃないか」

 「あんたは、あの時の――」


 「前の二人を世界樹の元へ―― 『先導者(ヴァンガード)』」


 「了解。『(ウェッジ)』」


 「紅! ヒナちゃん!」

 「・・・あーあ。お前らのせいで、俺も戦線復帰だ」

 「くそっ・・・」

 「『先導者(ヴァンガード)』の介入のせいで、全てが台無しってか」

 「上田さん。俺はあんたのスタイルを知らない」

 「敵にわざわざ教える馬鹿がどこにいる? 自分で考えろ」

 「あの子達を、どこへやった」

 「知っているだろう? 因縁の場所さ―― 安心しなよ、紅は裏切った代償があるけど、あの女の子には手は出さないだろうから」

 「レビリオン精神病院・・・」

 その言葉を噛み締める―― 甘かった。


 「さっきの口ぶりだと、君は『先導者(ヴァンガード)』を知っているようだったけど・・・まぁそれは関係の無いことだ」

 「・・・・・・」

 黙って静蒼無双に手を据える蒼。

 「おいおい、ここで俺を殺すのか?」

 「今やっておいたほうが、後々楽だろう」

 「向こうの子達に何かあっても知らないぜ?」

 「・・・くっ」


 「ま、それでもそんな殺す気マンマンの目をされちゃあ叶わないから、一応、うちのメンバーのコードネームだけ教えとくわ――


 『世界樹』『先導者(ヴァンガード)』『天国(ヘヴン)』と、俺だ。


 『竜王』『屍薔薇(しかばね)』『酒池肉林(マッドヘヴン)』はお前らが殺したからもういない」

 「『天国(ヘヴン)』・・・。ペタカトル、ソプラ、シャルルか」

 「ほら、さっさと帰ってお仲間と作戦会議でもしな」

 「・・・そうさせてもらう」



 ■      ■



 「仕方ない。知り得なかったことは対処のしようがないからな」

 「・・・すまない」

 「それで、『先導者(ヴァンガード)』とは誰なんです?」

 「幸くん・・・君がそれを聞くのか」

 蒼は絶望したような顔を見せる。


 「姫劉院希望・・・君のお兄さんだよ、幸くん」


 「・・・・・・」

 「え、うそだろ・・・?」

 「・・・幸くん?」


 「敵ならば、撃つだけです」


 そう言うと、彼は部屋から出た。

 「・・・心苦しいが、彼の言うとおりだ」

 「相手が誰であろうと、何としても新世界の誕生を阻止しなければいけない」

 「オートくん・・・? 君はどれだけ知っているんだ?」

 「みんなと同じくらい。KOIを経由してるからな」

 「・・・そうか」

 「そもそも新世界ってなんなんですか?」


 「今の世界の滅亡だよ。そこから、斎藤樹自身が中心となった一つの国を地球上に作る。それが新世界」

 「それを作って何をするんですか?」

 「さぁ。そこまでは分からない」

 「・・・・・・」


 「今はとにかく、救出だ。それが最優先だ!」

 蒼がらしくもなく声をあげる。

 「じゃあ、おれが行こう」

 日露璃が名乗り出た。

 「場所をこの携帯に入れてくれ。今日は満月だ―― おれが負けることはないさ」

 「・・・師匠」

 「もうその呼び方はやめろ。普通に呼んでくれ」

 「隠密行動に多人数は要らない―― 彼に何かがあったら、俺達全員で向かおう」

 その言葉に、その場の全員が頷き、作戦は決行された。


 その日、満月の光の中、一人の狼が―― 仲間のために仲間になった。




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