間話(13)
そして、今に至る。
紅と蒼は、打倒斎藤樹と報告した時点で、あの団体を抜け出した。
それぞれ、データを鷲掴みして―― 脱走した。
「だから、まぁそういうこった」
「命くんには、謝らないといけないな。いつか言おうと思っていたんだが」
「それが今日だったってだけです。いいっすよ」
命は笑った。
すこし冷静さを強調させた笑みだった。
「・・・・・・」
「だから、樹、主は今、血眼になって俺達を探している」
「え!? じゃあのんびりしてられないじゃないですか!」
「そう焦るな。いざとなりゃあ蒼がずらして、身を隠させてくれるさ」
「・・・・・・」
「でも、まさか俺のじいちゃんが、すべての黒幕だったとはな」
「わたくしの元の主、シャルル卿まで絡んでいたとは・・・」
「紅さん。そのレビリオン精神病院には、他に俺達が知っている中で誰かいましたか?」
「屍薔薇ソプラが居たな。正直、あの時はびっくりしたわ―― まさかこんな所にもあいつの手が回っているとはってな」
「・・・ペタカトル=ホワイトアウト」
「えっ――!?」
監視長が口を押さえる。
「彼も、そうだった」
「う、嘘・・・ですよね? 冗談ですよね?」
「ここで冗談を言ってどうする」
「――だが、彼は特殊だったな」
「ああ」
「え?」
泣き出しそうな監視長。
「レビリオン精神病院の中で、俺達の味方に付いてくれたからな」
「あ、あの時の――」
「元々、みんな仮面をかぶっていたから、接していない人とは全く接点がないから」
「・・・じゃあ、なんであの時わかったんですか?」
「名前は知っていたからな。向こうはこっちを知らなかったっぽいけど」
「・・・・・・」
「最も、彼は裏切った数分後に、彼の手によって殺害されてしまったけどな」
「・・・・・・」
監視長は、何も言わなかった。
「その他には? 誰かいませんでしたか?」
「あと二人くらいいた気がしたけど、知らない」
「そうですか」
「あー・・・でもその二人の内の一人は、『運命を操るスタイル』を持っているって聞いたな」
「運命?」
「とは言っても力は弱い。人に思い立たせるってだけだ」
「・・・・・・」
『なるほど! そういうことだったんですね!』
急に聞こえた機械音。
命の携帯からなっている。
「え!? 何!?」
命が慌てて携帯を取り出すと、中にはKOIの姿があった。
「こっ、KOI!?」
『読者の皆さん、お久しぶりです!』
「何言ってんだ?」
『その『思い立たせる力』、心当たりがあります!』
「本当か!?」
『ええ! ああ、でも話すのには、オートさんの許可が必要なんですけど、少し待ってていただいてもいいでしょうか?』
「いいよ」
『ありがとうございます!』
携帯が暗転する。
―― 10分後
『お待たせしましたー。この話は、途中で命さんに衝撃を与えることになるでしょうけど、何とか許可してくれました』
「え? 俺に?」
『では、お話しします。これは、オートさんが決めている信条の一つで、『満月と新月以外の夜と通常の朝と昼は外出しない』というものです。そんな面倒な決め事があるにも関わらず、うっかり屋さんなオートさんは、ある日、『三日月の夜』に外出していました。命さん、覚えていますか? 運命的な出会いをした三日月の夜のことを――』
「三日月? 運命的な出会い? ・・・・・・あっ、あああああああああああああああああああ!!!!!!!! じゃ、じゃあもしかして、師匠は・・・」
『はい! 命さんの言う師匠、もとい、狼男は、細菌こと一昨年日露璃だったのです!』
「まじかよ・・・」
『大事なのはここからです。なんでも、オートさんが三日月の夜に出かけてしまった動機っていうのが、オートさん自身にも分からないそうです』
「・・・それで、運命を操るスタイルか」
『そういうことです。私の演説は終わりです』
「おつかれさん」
「まだ一人謎な人物がいるんだよなぁ」
「少し前進した。それだけでいいんだ」
「今日は、俺にとってめっちゃ濃い一日だった」
「だろうな」
紅が笑う。いつものように。
「もうデータは無いんですか?」
「ん? うん。まぁね」
「というか、そもそも、その運命を操るスタイルのおかげで、この短時間で巡り会えたんじゃないのか?」
「え?」
「俺達は、さっき話した通り、『制裁探偵事務所』を作り、その中で力を蓄えていこうと言っていたけど、そもそも依頼から来てるんだもんな――」
「そこに、運命を操るスタイルか」
「うん」
「主に、『事務所を作る。その中で彼らを集める』って言ってたからね」
「はっ、なんつーめぐり合わせだよ」
「全くだね」
「そろそろ、場所を変えるか」
「場所?」
「事務所の場所だよ。もうそろそろ気づかれるだろう」
「え? もう気づかれてるんじゃ」
監視長が言った。
「だって、お父さまが殺された時、世界樹の仕業だって」
「その時は、まだ裏切ってなかったから――」
「だとしてもです。あの時攻撃したのなら、既に場所は割れているはず」
「あー。違うよ監視長。さっき言った『そろそろ気づかれるだろう』ってのは場所の事じゃない」
「え?」
蒼が、命を指差した。
「命くん。君が彼のことを祖父だと気づいたことに気づかれるだろうと言ったんだ」
「お、俺が知ると、何かあるのか?」
「逆に知っていないと、彼は君に手を出せないんだ」
「な、なんで」
「君のおばあちゃんが、君と彼にかけた呪いがあってね」
「呪い? 『まじない』・・・?」
「樹は、君を攻撃すると、消滅するようになっている」
「へ?」
「君のおばあちゃんも、スタイルを持っていた。そういう、呪いをかけるスタイル―― 多分彼女は、夫が計画していることに気がついたんだろう」
「ば、ばあちゃんが? ばあちゃんは、俺が幼い頃に死んだって言われてたんだけど」
「気づいたというか、誘われたんだろうな」
「誘われた?」
「樹自身に、一緒に新世界を作ろうって、誘われたんだろう。それで、その計画の中に、自分の愛する孫が関わっていたことに絶望し、呪いをかけた」
「それに気づいた樹が、怒りのあまりに妻を殺した――か」
「ま、ここはあくまで推理だけど」
「命くん。君が錠となっていたんだ」
「あの時のお父さまの言葉は、そういう意味だったんですか」
「じゃあ、知ったことで何かあるんですか?」
「彼女のスタイルの条件に、『対象の正体を分かっていないとき』というのがあったんだ」
「どうしてそれを?」
「上田さんと命くんのおばあちゃんは仲が良かったらしい」
「・・・・・・」
「だから、もうタイムリミットは迫ってきてるんだ」
「では、新拠点は、私の家にしましょう」
監視長が言う。
「黒鳥の砦」
「牢獄か。いいチョイスだ」
「住みやすいようにリフォームします。じゃあとりあえず、向こうに着いたら、そこから作戦会議をしましょう」
「さっすが監視長」
「よろしくね」
「ありがとう監視長」
「頼りになるね!」
「よろしくお願いしますね」
「夢喰い・・・」
『私はどこに行っても変わらないですがね!』
「リフォームは手伝わせていただきたいものです」
「ありがとよ、かっんしっちょう!」
とまぁそんなこんなで、最終決戦へ――
続く!
次回から、制裁探偵事務所本編最終章を連載します!
もう一年も終わりですね!




