間話(2)
「自己紹介」
男性がぽつりと呟いた
男性が海を半ば強引に連れ出し、バイクに乗せ、無言でやってきたのが
制裁断定事務所(青)
と書かれた一軒家であった
「・・・・・」
海は唖然としていた。
「ツッコミどころしか見当たらない」
これが第一声だった。
「・・・自己紹介」
「・・・・・・」
「・・・・・・自己紹介」
「・・・え、あっ、はい!」
次第に暗くなっていく男性の声に気づく
慌てて返事をする
「名、は・・・えーと、なんだっけ・・・あぁそうだ」
「・・・・・・」
覚えてろよ
ツッコミそうになった
「名前、は、争谷 蒼。制裁探偵事務所第二部部長・・・だ」
「・・・?」
「君は、砂滑、海君・・・だね」
「あ、はい。そうです」
「面白い名前だね、スナメリは好きだよ」
「はぁ・・・」
「・・・・・・じゃあ、紹介・・・この事務所の紹介から、行こうか」
「ここは、制裁探偵事務所といって、あることを徹底的に行う・・・いわば職場だ」
「職場?」
「君のような子供は初めてだけど、なんというか・・・その、条件は満たしている」
「条件って」
「1、依頼の標的。2、18歳以下。3、スタイルの有無」
「・・・」
「ちょっと難しいかな、わかりやすく説明しようか」
「・・・お願いします」
「ふふ、いい返事だ」
~説明中~
「―――と、これがこの事務所だよ」
「なるほど、よく分かりました」
この人は教えるのがうまい
「ところで、君は、自分のスタイルが何か、気づいているか?」
「あ・・・」
「気づいてないか、そうかそうか」
「・・・」
「君の場合は、『興味があるもの』に対して『絶対的な器用さ』を発揮する」
「器用さ?」
「そう、君が常備しているものは工具だよね?」
「あ、はい」
海は驚くほど多くに工具を持っている。
ドライバーから、いろいろ
「それが証拠さ」
「証拠ですか?」
「ああ、聞いたよ。ジグゾーパズルを3分で完成させたとか」
「ああ」
「それに、テレビを滅茶苦茶にしただとか」
「ああ」
「それも証拠だよ」
「・・・」
わかってきた
「君はロマンがあるから助かったよ、無い人間っていうのは信じないからねこういうの」
「まぁ、そうですよね」
普通は信じられないだろう
こんな現実味のない話
「じゃあ、試しにやってみようか」
「・・・何を、ですか?」
「あやとり」
「あやとり?」
「まさか知らないわけじゃないよね、ただのあやとりだ」
「はぁ」
「好きかい?」
「まぁまぁです」
「そう、じゃあこれを見てごらんよ」
男性、蒼はあやとりを自分の指に掛けた
そして編み出されるその技は、どれもがどれも、不可思議なものだった
「興味が湧いた?」
「はい・・・」
「じゃあやってみてよ」
「・・・」
蒼が、指に掛けたまま海に糸を渡した
海は、それを手に取るや否や、蒼の腕に絡みつけた
関節が逆の方向に曲がるのではないか、と思わせるような形になっていた
「いでで」
「あ、すいません」
「・・・いいんだよ」
糸をほどいた
「これでわかったね」
「はい。あ」
「?・・・どうかした?」
「あの、蒼さんのスタイルって、なんですか?」
「聞きたい?」
「はい」
「んー、まだ言えないな」
「え」
「あ、少なくとも『あやとりの技術が上がる』とかそういうのじゃないからね」
「・・・はい」
「いや、最初は緊張したけど、こう接しやすくてよかった」
「・・・」
「あ、そうだ。君の通り名を考えてなかったね」
「通り名、ですか」
「ちなみに俺は、静蒼無双と書いて『ブルーメルチラス』という」
「かっこいいっすね」
「だろ?」
「他の奴らは、『ブルー』って俺を呼ぶ」
「じゃあ、僕の場合・・・なんでしょうかね」
「君、好きな動物はなんだ?」
「動物ですか?鷹です」
「鷹、『ホーク』か・・・ちょっとかっこよすぎるな」
「・・・」
「君のスタイルは、狐がちょうどいい」
「き、つね?」
「だから、『フォックス』だ」
「フォックス・・・」
「・・・ちょっとカッコよすぎるかな・・・」
「いえ、ありがとうございます。これから僕は、『狐』です」
「そうか、じゃあよろしくね、フォックス」
「よろしくお願いします、ブルーさん」
続く




