制裁探偵事務所―零― 『紫色の戦争』13
「父さん・・・あれ・・・?」
真夜中。
目を覚ましたのは木苺。
「お、俺・・・そうだ、あの男が――」
記憶を辿る。
「ちさとん・・・生きてるかな」
布団から出た。
■ ■
「来たか・・・」
体育館の真ん中で一人立つのは、群青。
言うまでもなく、体育館でさえも血で染まっている。
「・・・・・・」
むせ返るような臭い――その中で、深呼吸をする。
エンジン音が聞こえる中、静蒼無双を構えた。
「・・・・・・」
集中する。
集中――する。
タイヤが擦る音と同時に扉が破かれた――ライトが眩しく照らす。
目を閉じる――血が飛沫を上げ、全身にへばりつく。
――惑わされるな、音を聞け。空気の流れを感じろ――
「―――ッ!!」
目を開く。
目の前、まっすぐに車は向かってきていた――
「だりゃああああああああああ―――!!!!!」
全体重を掛けた――突き。
飛び抜け、ボンネットで受身を取る。
ガラスを突き抜けた静蒼無双は、確実に――その人間の脳を貫いていた。
「や、やった・・・」
人を殺した――紅音を守った――木苺を守った――皆の仇を討った
――千里の、仇を討った。
「ふ、ふう・・・」
■ ■
「表群青!!!」
車の中の人間から、静蒼無双を引き抜いた時、紅音が到着した。
怪我はしていないようだ。
「無事!?」
「――大丈夫、犯人も倒した」
「よ、良かった・・・私、スナイパーライフルの準備に手間取っちゃって・・・」
間に合わなかったと思った――、とその場に、へなと座り込む紅音。
群青がその隣に行こうとした時――
「きゃあああぁぁぁぁぁあぁぁあああ―――!!!!」
すぐ近くで、悲鳴が聞こえた。
――体育倉庫で、悲鳴が聞こえた。
扉が開かれる――中から、体操着の女の子が出てきた。
「たッ――助けて――」
「な――」
紅音は黙って銃を構えた。
群青は、その女の子に駆け寄った。
「ど、どうしたんだ――!?」
「う、うちら――男の人に、ここが安全だからって、ここにつれてこられて、くっ、車の音がして――それから、それからッ」
「落ち着け――何があった――」
「あ、危ないからって、ここにいろって言われて――そしたら急に、友達を、な、ナイフで刺して―――あぐっ」
呻いて、ぐったりとする女の子。
「表群青――!! しゃがめ!!」
「――!?」
急な紅音の声に反応する群青。
後ろに倒れるように下がれば――そこに居た。
「と、藤堂さん――!?」
「うふふ」
ばぁん・・・と、銃声が鳴り響いた。
「と――藤堂さんッ!! 紅音――何やってんだ!!」
「その女の子の背中を見て!」
見れば、背中には、ナイフが刺さっていた。
ちょうど心臓部分――もう蘇生は不可能だろう。
「う、うお・・・」
群青が驚いたのは、紅音の判断力の高さだった。
一瞬で、そんなことを――人を殺そうと――
「な、ナイスだ・・・紅音」
背中のナイフを抜き、その場に女の子を寝かせる群青。
――安らかに、と立ち上がる。
「藤堂さんは、敵、だったのかな」
「どうだろう・・・そんな風には見えなかった」
「そうだね・・・でも、一瞬――あいつ、うふふって笑ってた」
「そんな笑い方する人じゃなかった」
「うん」
「ここに居たのか!!」
現れたのは、虎徹だった。
「虎徹さん――!?」
「ここは何だ? 最近の学校ってのはこんなに物騒なもんなのか?」
「・・・」
虎徹が言う。
「今連絡が入ったんだが、木苺もさっきここに到着したらしい。体に痛みは感じないって言っていたが・・・」
「そ、そうですか・・・」
「今は武道場に居るって・・・言っていたぞ」
「俺が行ってきます――虎徹さんと紅音は、他に生存者が居ないか探してきてください」
「おうよ」
「分かった」
「では――」
■ ■
武道場――
「き、木苺!」
剣道部が使う床の上で、正座をし、目を閉じている木苺。
「――そこに座れ」
と言った。
群青は、――ここ? と言いながら、木苺と正面で向かい合う形で座った。
「表群青――おいらを殺した――ああ、また会えた――殺せる――殺すことができる」
嬉しいな――と彼は、口を裂くように、笑った。
「うふふ」




