制裁探偵事務所―零― 『紫色の戦争』11
千里が死んだ。
そんな時、要は学校の中の生き残りを探していた。
「・・・息の音と、夢は察知できるのですが・・・」
彼のスタイルは、『夢物語』。
『対象を探しているとき』『対象の無意識を見ることができる』
「群青くんは無意識になりやすかったんでしょうね・・・」
そんなことを言いながら、残りの教室を探す。
「この惨状がトラウマになって、無意識が壊れているとでも言いましょうか」
はぁ、と息をついて
「うー・・・ん、こっちの棟にいると思いましたが――移動したんでしょうか」
血しぶきが塗られた窓の隙間から、反対側を見る。
「・・・ざっと、多く見積もって、5人ですかね」
生き残りは、絶えず移動している。
「『探偵失格』・・・あの方から付けられた二つ名は、案外合っているのかもしれませんね。面倒だ」
大きく腕を振り下ろした。
殴られた壁はびくともしなかった。
「いたた・・・少しイライラしますねぇ・・・」
彼の身体能力に、目立った特異は無かった。
■ ■
黒い塊の正体は、車だった。
ツーシーター――だが、今は関係ない。
千里を『喰らい』、大きなブレーキ音を響かせ、こちら側を向いた。
今は停止している。
「紅音、立て、逃げるぞ・・・」
「うっ、ひぐ・・・ぅあ――」
「黒崎紅音!!! 逃げるぞ!」
「・・・ぅうぐぅうう!!!」
紅音は立ち上がり、制服の袖で涙を拭った。
車の方を見る。
中型の車だ――フロントガラスから、運転席は見えない。
ただ、異色を放つのは、そこじゃない。
車体の至る所に、刃物が取り付けられていた。
「ギラッギラだな・・・はは」
群青は弱気な声で言った。
ライトが点灯した。
「行くぞ!!」
学校へ走る。
室内ならば入ってこれないだろうと考えた。
「はぁッ! はぁッ!」
全速力で走る。
紅音が持っている弾丸の数は、ブラック・ホークには15、スナイパーライフルには4の弾丸が用意されている。
「4って流石に少ないでしょ・・・」
見ず知らずの他人にここまでしてもらっておいてって話だが
「俺は体育館に行く! 紅音は校舎に!」
紅音が頷くと、群青はさらにスピードを上げた。
走るのは得意らしい。
「・・・」
振り返りながら、足を止める。
エンジン音が聞こえてきた――今走り出したらしい。
ショルダーバッグからブラック・ホークを取り出す。
「・・・・・・」
拳銃なんて使ったことはないけど――
「いける気がする」
目が紅に光った。
気が静まる――雑音が消えた――目が乾かない――震えが止まった
耳から銃口を精一杯遠ざけて、片目をつむって先端に合わせた。
――光が目の前に現れた。
「――っ!!」
ばん、ばん
二発、前輪を狙った。
一発は地面をえぐり、二発目は見事命中した。
「やった・・・」
銃をしまい、一目散に逃げる紅音。
その車は、圧倒的にスピードが落ちていた。
「校舎・・・」
一階の教室が並ぶ廊下に飛び込む。
「はぁ・・・はぁ・・・」
壁にもたれかかる、息を整える。
――時間は無かった。
「――っ!」
まるで学校を『喰らう』ように、道を砕きながら進んでくる。
声は出ない――どんどん距離が詰められる。
その車にとっては、道でない道などないのだ。
「二階ッ!!」
階段を上る。
その車も階段を登ろうとしたが、その階段ごとえぐりとってしまっていた。
「きゅ、九死に一生を得た・・・?」
ひとまず、胸をなでおろす紅音だった。
■ ■
「はっ・・・ここは!」
木苺の部屋。
まだ木苺は眠っている。
「なんだ・・・俺らしくもねぇな」
轟虎徹が我を取り戻した。
「木苺・・・お前のことぁ、信じてるからな」
そう言って、部屋を出た。
「・・・あいつらはもう行ったのか」
「どこにでしょうね」
「――!?」
扉を開けたそこに、居た。
「おめぇ・・・誰だ」
「失礼。こうした方が記憶に残ると思いまして――後で会っていないなどと思われては困りますからね」
「・・・誰だっつってんだ」
「私――レビリオン精神病院の院長兼取締の『斎藤樹』と言う者です」
「斎藤・・・?」
そう言って、彼は――『黒崎艾の姿をした』人間は――微笑んだ。




