制裁探偵事務所―零― 『紫色の戦争』2
「・・・・・・」
「・・・・・・」
次の日の朝。
紅音は、僕が着いた時にはもう座っていた。
まるで機械のように、綺麗に。
「おはよ、表くん・・・」
「ああ、おはよ。千里ちゃん」
少ししてから、千里ちゃんもきた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
彼女はなお喋らない。
「・・・・・・」
僕は、少しイラっとしてしまった。
無視すればいいのに、そんな感情は――
「なぁ紅音・・・挨拶くらいしたらどうだ?」
と、言ってしまった。
後でハッと気づく――自分の愚かさに
しかし、返って来たのは意外な反応だった。
「私は――他人とコンタクトを取らない・・・」
結論を言ってきやがった。
この野郎。
――まぁ、声が聞けただけよしとするか。という目を千里ちゃんに送ったら、頷いてくれた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
今日、紅音はそれ以上喋らなかった。
■ ■
「おかえりなさい、紅」
「ただいま、お父さん」
紅音。
黒崎、紅音。
「夕飯は、あと少しでできるからね」
「・・・・・・」
彼女は、父子家庭の中にいるようで。
「紅、課題終わらせときなさい」
「分かりました」
返答はどこか機械的。
「また呼ぶからね」
「・・・・・・」
そして、『お父さん』と呼ばれた人。
年は、40代後半くらいだろうか――スラリとした肉体。
「あの子には、心がないのだろうか・・・」
ここで、紅音の出生を書いておこう。
まず、母『黒崎艾』と元父『神無月億輔』との間に生まれた。
今の『お父さん』と神無月億輔は別人である。
母、黒崎艾は神無月億輔と離婚。
後に、現在の『お父さん』である『伊集家宣』と再結婚。
しかし、紅音がまだ幼い頃、とある殺人者に襲われ他界した。
つまり、血が繋がってないとはいえ、立派な家族であるに変わらないのだ
「・・・・・・」
この物語には、彼らの因縁も関わってくる。
■ ■
「ぐんじょー!」
「ういっす」
剣道部。
僕は剣道部に所属していた。
「やるかぁーっ!」
「おう」
妙にテンションが高い友人。
名を、『轟木苺』という。
「やっぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああ――――――ッ!!!!!!!」
「ヤァッ―――――――!!!!!!!」
ぶつかり合う音が響く。
木苺は、父が刃物を取り扱う仕事という理由で剣道を始めたらしい。
僕は護身用に。と思ったから。
「――――――!!!」
「―――!!」
実力は互角。
もはや決着すらつかない。
「やっぱぐんじょー強いわぁ」
「そういうのは負けてから言え」
妙に気が合うから、それなりに付き合いは良い。
部活が終わった後の出来事――。
「そういやぐんじょー」
「んー?」
「前に親父の仕事見たいっつっとったよな」
「あぁ、そういやそんなこと」
「いいぜ、見せてやるよ」
「本当か?」
「ああ! 同じ光物好きだからな!」
「・・・・・・おう」
僕は、別にそうでもなかった。
工場はひっそりとしていた。
「やぁやぁ親父」
「なんだ木苺、どうした――って」
「友人のぐんじょーだ」
「――どうも」
「・・・おう」
どうやら休憩中のようだった。
タンクトップのいわゆるガテン系。
ただ、何というか、ただ刃物を取り扱うというよりは、『この人自身が刃物』みたいな感じが――。
「まぁ見てけよ。お前さんの期待に答えれるかどうかは分からんけどな」
「ありがとうございます・・・」
名前は、『轟虎徹』というらしい。
日本刀みたいな名前だなぁと思いました。
「こっちー」
と木苺は、店に並ぶ包丁や鋏たちを通り過ぎて、奥の扉へ入っていった。
「そっちなのか?」
「そうだよ」
変な会話だ。
そんなことを思いつつ、言われたとおり中に入ると――
20~30の数の、日本刀が展示されていた。
というか、刀ってなんて数えるんだろ――
「この辺が『太刀』で、19振ある。んで、太刀っつってもそれぞれ名前が付いてるし、特徴も違うから、なるべく名前で呼んであげて」
木苺が説明してくれた。
そんなに有るのか・・・。
「こっちが短刀とか、脇差とかの類ね。結構便利だよ」
何にだ。
まあいいと思う。
僕はときめいてしまった。
「この、『静蒼無双』ってやつは・・・」
「・・・!」
僕は、恋をしてしまったのかもしれない。




