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制裁探偵事務所―零― 『紫色の戦争』1


「おっはよぉー!」

 元気な声で教室に入ってきたのは、『神威(かむい)千里(ちさと)』ちゃんだ。

「おはよ、千里ちゃん」

「おっはよ! (あらわし)くん!」


 まだまだ青春の甘酸っぱい思い出が進行形のとき。

 高校生に成りたてのとき。


 そんな通常な日々が続くことを僕は願っていた。


 この物語は、『制裁探偵事務所』が成り立つ前の

 ――世界樹がまだ存在していない時の、紅と蒼の二人の恋物語である。


「――・・・」

 高校生活が始まってから、正確にどれだけの時間が過ぎたかわからない。

 この僕、『(あらわし)群青(ぐんじょう)』は、時間を無駄に過ごしてきた。


「・・・なんか、いつもと雰囲気が違うな」

 そう思った。

 だけのこと。


 ガララッとドアが乱暴に開いた。


「・・・誰?」


 紅い転校生。

「・・・・・・」

 彼女は、僕を見て、何も喋らなかった。



 ■     ■



「・・・・・・」

「・・・・・・」


 まさか、隣の席になるとは思わなかった。

 気まずすぎると僕は思う。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 彼女の名前は、『黒崎(くろさき)紅音(あかね)』と言うらしい。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 無口すぎる。

 隣にいる僕の身にもなってみたらどうだ・・・。

 と思っていたら――


「・・・・・・」

 彼女がこちらを向いた。

「えっ?」

 そっと、机の下に手を伸ばす。

「あ」

 消しゴムが落ちていた。


「はい」


 苦しそうだったので、拾ってあげました。

 彼女から言葉はありませんでした。悲しいです。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 しばらく、そんな妙にはりつめた空気がそこにあった。


「あーらわーしくん!」

 千里ちゃんの声。

 まるで天使のよう・・・。


「隣の子、名前なんていうの?」

「黒崎、紅音・・・らしい」

「ちょうど聞いてなかったんだ! ありがと!」

 そう言うと、彼女は黒崎の方へ顔を向かわせ、


「よろしくね、黒崎さん!」


 と言った。

 対する黒崎は、


「・・・・・・」


 と何も言わなかった。


「む、無口な子なんだね・・・」

 千里ちゃんも引いていた。


「そうだね・・・」



 それが、僕と彼女との出会い。

 まぁ、何が起こるかわからないって感じかなぁ・・・。


「これから、大変なことになる気がする」


 あくまで、気がしただけ。



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