制裁探偵事務所―蒼― 『霞ヶ月のかぐや姫』10
「あ、ああああああああああ!!!!」
かぐやの声。
「そ、そういうことだったのか・・・私――『妾』は――!!」
声が、段々と暗くなっていく。
「・・・監視長――感謝の意を表そう――妾は、やっと思い出すことができた」
滑らかに動く漆黒の髪。
明らかに、先程までのかぐやとは、まるで違っていた。
「かぐやさん・・・?」
「神技『月夜見』」
かぐやが言った言葉の後、街の空が途端に暗くなり、夜になった。
「よ、夜?」
今まで黙っていた遊炎魔が口を開いた。
「かっ、かぐや――早く富士山頂へ!」
「分かっている!」
そう言って彼女は、『空を飛んだ』
「えっ!?」
「掴まりなさい!」
「お、おう!」
監視長、遊炎魔と二人と手を繋いだ。
「行くぞ!」
顔の形が歪むほどの、猛スピードだった。
■ ■
「狐!!」
山頂。
狂兵器は驚愕した。
「『磁力を操る』スタイル――か!!」
「ほぉ、まだ二回しか使っていないのに――よく分かりましたね」
「ぎははは! ちっ、笑えねぇっての!」
腹に大きな穴を空けた狐。
「狐――すぐに砂城のところに連れてってやるからな!」
「れ、れくい――え、む・・・」
「喋るな・・・! 死んだら生き返ることはないんだぞ!!」
「・・・・・・」
狐にはまだ息があった。
「暮ィ・・・っ!!!!」
「怖いですよ、そんな顔で睨まないでください」
「てめぇは・・・この俺がぶち殺す」
「まぁ、精々頑張ってください」
「――ッ!!!」
1000000のスタイル。
聞こえはいいが、戦いで使用できるものとなれば、それはかなり制限される。
「だららららららァ――ッ!!!」
しかし、それでも狂兵器は、強かった。
ただ、暮が『早かった』だけで。
「『空磁石』!!」
暮の磁力に、ラグは存在しない。
力は物に干渉し、現象を発生させる。
「うぐぅ――!!」
「・・・ふっ」
暮が両手を挙げた。
「・・・あぁ?」
ちょうど麓にあった、工事現場。
その鉄骨を、持ち上げた。
「なっ―――!!!」
「私に、勝てるとでも?」
とてもじゃないスピードで、鉄骨がこちらへ飛んでくる。
「ぐっ―――だらァッ!!!!」
それを、狂兵器は受け止めた。
「うおりぃゃあァ―――!!!」
「ほう、なかなかの力ですね・・・しかし磁力は、底がないんです」
同じ大きさの鉄骨が、4本飛んできた。
「さようなら、戦士よ」
「くっそおおぉおお!!!!」
「ここまで、よく頑張った」
唐突の出来事だった。
『ばらばらに切断された鉄骨』が、狂兵器を通り越して、暮の元へ飛んでいったのだ。
「あとは、俺に任せなさい」
「あ、蒼・・・さんっ!!!」
目の前に立っているのは、日本刀を片手に持ち、目が青く発光している蒼だった。
そんな蒼を、狂兵器は初めて見た。
「そ、その目は・・・?」
「今の俺は、蒼。それだけのこと」
「あなたは・・・やっと来ましたか、『静蒼無双』」
「待たせて悪かったな、クソ野郎」
啖呵を切った時、後ろから、声が聞こえてきた。
「蒼さ~~ん!! 狂兵器~!!」
「来たか・・・」
監視長、遊炎魔、かぐやの登場。
「ひっ、姫!!」
「今の貴様に、姫と呼ばれる筋合いは無いッ!!」
「き、記憶が、お戻りになられたのですね」
「口を慎め愚か者! 貴様には失望した!!」
「――かぐやさん・・・」
「蒼、其方には世話になったな・・・有難う」
「いや、いいんです・・・では、けじめ――つけましょうか・・・遊炎魔!」
「はいよ」
前線に立つ二人は笑い合う。
遊炎魔は、かぐやが言った言葉を思い出した。
「ちょっ、かぐや! 早い! 早い!!」
「・・・遊炎魔」
「ん? なんだよ」
猛スピードで飛んでいる最中、かぐやが言った。
「妾の神技について、話すことがある」
「神技・・・スタイルか」
「妾の神技は、特に『覚悟を決めること』が主体となっている。その中、こんな神技が存在しているのだが――」
「ああ? 勿体ぶらずに言えよ」
「『覚悟している人の名を呼んだとき』『その人の神技を進化させる』」
「進化・・・だと?」
「そう。これをお前に言ったのは他でもない・・・お前、自分の強度に満足していないだろう」
「・・・まぁな」
「妾は、お前に、この神技を当てようと思う」
「好きにしろよ」
「そうさせてもらうが、遊炎魔。一つ問題がある」
「問題だぁ?」
「この神技は、6分の1の確率で失敗するのだ」
「失敗」
「そう。失敗をしてしまったら最後、二度と神技は使えなくなるだろう」
「なんだよ、そんなの問題でもなんでもねぇじゃねぇか」
「なに・・・?」
「俺様ァどうせ『戦闘要員』なんだ。力を失えば、代替品を探してもらうだけだ」
「・・・十分な覚悟だ」
「そりゃどうも」
「ただ、初めから失敗することは良くない。劣勢になったとき使わせてもらう」
確か、そんなことを言っていたな――と。
「まぁ、頑張りましょうや蒼」
「共闘は初めてだな、遊炎魔」
この間、わずか2秒。
「俺様に惚れるんじゃねぇぜ? 暮」




