制裁探偵事務所―蒼― 『霞ヶ月のかぐや姫』8
お久しぶりです。
「ん・・・うわっ」
一通りの治療が終わり、ちょうど昼頃。
傷が無かったかのように回復した萌九頭は、自らの携帯の着信履歴を見て、ぎょっとした。
「なんだこれ・・・214回も・・・蒼さん?」
確かに蒼の番号だった。
「・・・・・・」
かけ直す。
すると、出たのは女の人の声だった。
「もしもし・・・?」
『あぁ、もしもs――』『萌九頭くんかい!?』
食い気味に、蒼の声が入ってきた。
「蒼さん・・・はい。萌九頭です」
『いっ、今どこにいるんだ?』
「あー、えーと・・・」
萌九頭は、彼女、砂城の居場所は知っていた。
――場所。
かぐやの因縁。
「富士市です」
『富士・・・? え、今なんて言った?』
「富士市です。あの富士山の麓らへんの」
『・・・っ。おいおいまじかよ――今そっちに向かってる! 今から言う場所に来てくれないか!?』
「わ、分かりました・・・!」
―――。
「――そっ、そんな・・・。なんて運命」
『そう思うが、思っている場合じゃないぞ! 他の皆は!?』
「今、治療中です・・・。あ、監視長」
「あれ、狂兵器。誰に電話してるの? 珍しい」
『治療!? 治療ってどういうことだ!?』
「俺達、『秋鳴 暮』に―――」
『秋鳴・・・? ―――!!』
「・・・? 蒼さん?」
「え、蒼さんと電話してるの? ちょっとかわってよ」
「え、いや今は――」
『なるほど・・・な』
「蒼・・・さん?」
『全部わかった。全部。俺の推理が正しければだが』
「わかったって何が――」
『全員の治療が終わり次第、すぐさっき言った場所に行ってくれ!! 俺もすぐ行く!!』
――と、電話を切られてしまった。
「あ、蒼さん? 蒼さんっ!」
「切れちゃった?」
「切られた・・・」
「え? 蒼さんが自分から電話を切ったの?」
「ああ、しかも乱暴に」
「ありえない・・・蒼さんはどんな電話でも相手が切るまで待つのに・・・」
「・・・・・・」
「れ、狂兵器?」
「俺にも、思い当たる節がある・・・」
「?? なんのこと?」
「これら一連の事件のこと!」
萌九頭が監視長に顔を近づけた。
「えっ・・・? ちょ」
「俺を許可してくれ・・・監視長」
「え? 別にいいけど・・・」
秋鳴 暮――浮雲 証――三日月かぐや
「俺は、俺達は浮雲証を探していた。そのとき、秋鳴暮に攻撃されたんだ」
「う、うん」
「秋鳴はなんと言っていたか。『皆さんと同じ、浮雲証様を探しております』」
「・・・」
「この言葉から、『俺達が浮雲証を探していることを知っている』『浮雲証は秋鳴にとって目上に値する人物である』『俺達の顔を知っている』ことがわかる」
「最初の二つはわかるけど・・・三つ目は?」
「俺達を特定できたのが大きな理由。そしてそこから、この一件の関係者と繋がりがあるということもだ」
「・・・う、裏切り者ってこと?」
「違う・・・俺達4人は少なくとも、知り合いでは無かった」
「誰も反応しなかったから」
「そう・・・蒼さんも、人を裏切れる人じゃない」
「それは私も分かるわ」
「そして・・・」
「依頼人、ってことね」
「そういうこと」
「三日月かぐやと秋鳴暮は、関係を持っている」
「じゃ、決まりだな」
「え、ヒナちゃん」
「要するに、かぐやさんを見つければいいの?」
「事情も話してもらわないといけませんね」
「え」
「行くわよ狂兵器!! ――許可するわ!!」
「はっ、やっとお熱い展開になってきたな!」
「この謎には、興味がそそられるね」
「ぎは」
萌九頭・・・いや、狂兵器が笑みを浮かべた。
「よっしゃ! いっちょ蒼さんが来る前に解決しちまうか!」
「「「おー!!」」」
「くれぐれも無理はしないようにねー」
砂城が彼らを見たときには、もう彼らは出発していた。
「・・・まぁいいか」
彼らとは、また会うと思うし・・・。
「頑張ってきなね」
■ ■
「紅っ、ここ何処だ!?」
「うっさいなー!! そんな怒鳴らくてもあと1時間ちょっとで着くっての!」
「くっ――!」
珍しく取り乱す蒼。
その眼が、青白く輝きだした。
「ちょ、蒼! 眼!」
「えっ? うわ、なんで」
「気をつけなよ・・・富士山消し飛ばさないようにね」
「・・・わかってる」
その赤い車は、猛スピードで走り去っていった。
なぜか、左手首を骨折してしまい、幸いにも無事だった右手で、この話を書いております。
そして、先日07/31 19:48を持ちまして、この制裁探偵事務所は一周年目を迎えることができました。ありがとうございます。おめでとう。
これからも、どうぞ制裁探偵事務所を、よろしくお願いします。




