制裁探偵事務所―蒼― 『霞ヶ月のかぐや姫』5
「姫・・・ですか」
「やはり、これだけは現実味に欠けますよね」
「はい・・・それは、ただ単に信じることはできそうに無いです・・・すみません」
「ああっ! あなたが謝る必要はありませんよ――なにせ、私でさえ分からないものですから」
「・・・え?」
「その召使が言うには、どうやら私は姫だそうなんですが、私の神技――スタイルのおかげで、忘れているようなんです」
「忘れている? スタイルのおかげ? どういうことです?」
「私は、いくつかスタイルを持っているのです。その内の一つに、『忘れる』という力を持つ物があるようでして」
「それは何とも、便利なスタイルですね」
「そう思いますか? 私にとっては、邪魔なだけなんですけど」
「都合のいいことだけ覚えていられる。なんて素敵なことでしょうか」
「自らのイデアに飲み込まれたら最後、ただの壊人になってしまいますよ」
「・・・それもそうですね」
と、ここで、かぐやのポケットから着信が届いた。
「あら、失礼」
「いえ、気にしませんよ」
「少し席を外しますね」
「分かりました」
数分したあと、かぐやが席に戻ってきた。
「では、話を戻しましょうか――かぐやさん」
「いえ、そのことなのですが」
「はい?」
「どうやら、浮雲証――誘拐されたみたいです」
「ゆっ――誘拐・・・!?」
「ええ・・・今かかってきた電話は、柔らかく言えば脅迫の電話。『不老の子供は預かった』とだけ・・・ああ、それと、返して欲しいのならばということで、場所を指定してもらいました」
「そ、それはどこです?」
「静岡県、富士市」
「富士・・・!?」
「電話の相手が言うには・・・『あなたに最も縁のある場所』と」
「竹取物語・・・!!」
「日時は、来週・・・準備、できますか?」
「・・・はい」
■ ■
「・・・ふぅ」
そこは、竹取ランドの裏にある倉庫。
「やはり、鈍感でいらっしゃる」
やせ細った、執事服を着た男性が言った。
「しかし・・・鈍感と言えばこの子達もそうでしょう・・・」
彼が立っている、その四方には、狐、監視長、狂兵器、遊炎魔が、うつ伏せに倒れていた。
「実力は、かなりあるようですが―― 私が10とすればこの子達は全体で1000もいいところでしょうが・・・」
見れば、狂兵器は、監視長の手を握っていた。
「私の神技をもってすれば、そうたいした脅威ではないことは明らかです」
彼―――秋鳴 暮は、その光景を見下し
「私こそ、『新世界』を牛耳るに相応しいのです」
―――笑った。
「全ては、世界樹のために」




