制裁探偵事務所―蒼― 『霞ヶ月のかぐや姫』2
「――失踪・・・ですか」
依頼等の話は、蒼一人で聞くことになっているので、今、事務所内に居るのは、争谷蒼と三日月かぐやのみである。お茶と、お菓子が置いてある(柿ピー)。
「えぇ――すみません、先ほどは見苦しい姿を・・・」
「いえいえ、気にしていません。ここに来られる方の大半は、緊迫した状態でいらっしゃるので」
赤面するかぐやをなだめる蒼。
「その、失踪したお子さんの、詳細等をお教えくださいますか?」
「・・・あ、はい。年は、ちょうど6歳・・・小学校1年生に値する年齢です」
「6歳・・・それで?」
「性別は男の子です。あと、白い髪をしています」
「白髪の男の子・・・」
すごい、子供だな。と蒼は思った。
「今までの情報のみで、かなり捜索は楽になると思いますけど、一応、お名前も――」
「はい―― 浮雲 証 と言います」
「うきぐも、しょうくん――でよろしいですか?」
「そうです、浮く雲の証と書いて、浮雲証」
「・・・はい、分かりました――それで、何か場所の心当たりなどはありますか?」
「すみません、それだけは、私の神技をもってしても分かりません――」
「あ、あの、先程も仰られていましたが――神技、とは?」
「・・・? それは、貴方達の方がよく知っている、と思いますが」
「――ああ、スタイルのことですね。分かりました」
「貴方達は、神技のことをスタイルと横文字で呼んでいるのですね、格好いいです」
「ありがとうございます。しかし、あなたのスタ――神技、と言うのは?」
「気を使わなくても、スタイルと言って下さり結構ですよ。そうですね、うまく説明ができませんね――またの機会でもよろしいでしょうか?」
「――はい、分かりました。では、これで大丈夫ですか? 大丈夫なら――」
「ああ、もう一つ、言い忘れていました」
「あ、はい。なんでしょうか?」
「証は、神技を使います」
「・・・」
■ ■
「結局、ただの捜索になりそうだよ」
「ただの人間一人を探すのを、これほどまでに面倒と思ったことはないですね」
「そう言うな夢喰い。許可をくれれば、早く終わるように努力するよ」
「それなんだが」
全員が戻った事務所内で、彼ら彼女らは話していた。
「どうか問題でも? 蒼さん」
「対象となる、その男の子、浮雲証くんは、どうやらスタイルを使うらしくてな」
「スタイルぅ? 一体どんなだ?」
「スタイルを無効化するスタイルだよ」
「・・・」
「これは、皆にとって、とても致命傷となることじゃないかい?」
「た、確かに――」
「俺たちは、スタイルを抜きにしたら、ただの人間だからな」
「君が言うと説得力があるね・・・」
「それでも、どうしますか? いくら私でも、スタイルの無効化を無効化するなんてめちゃくちゃなスタイルは作れません」
「――まぁ、こういう時のために、俺たちには足がついているんだよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
4人とも完全に沈黙。
「まじすか」
「まじっす」
制裁探偵事務所史上最も過酷で地道な、人探し。
開始。
■ ■
「ただいま。暮ー、いたー?」
彼女は、失踪した少年の安否を問うが、答えはなかった。
「まだ探してんのかな、あいつにしちゃあ時間がかかりすぎな気もするけど――」
彼女は、ここで完全な対応をとらなかったことを、後後、後悔することになる。
「ま、いっか」




