制裁探偵事務所―紅― 『七色の魔法使い』9
「紅!!紅ッ!!」
英雄は、アルトが創り出した島を捜索していた。
「くそ・・・!なんでこんなに広くしたんだッ!!!」
深い深い緑の樹木が生い茂る、これが天然ならば世界遺産の登録もありえるだろうそんな環境。
「だが、不気味なのが――」
生き物が、いない。
そもそもついさっき創ったばかりの島だ。無理もないだろう。
だが、それにしても、気配が無さ過ぎる。
「この木も、本物なのかわからねぇ――」
目の前に存在する木に触れる英雄。
「俺の足音のみだ。師匠やアルトとの戦闘音すら聞こえない」
考察してみる。
「まるで、コピーのようだ。レプリカ――というか、偽物か?」
この考察は大方あたっていることを、彼は知る余地もないが。
「―――!!」
その先で、紅がつたに捕われているところを見つけたのは、必然ではない。
「紅!!紅!!!」
揺すり起こす英雄。
首元に手を当て、脈を確認する。
どうやら、無事なようだった。
「よ、良かった――紅・・・」
一息ついた刹那――
「―――ッ!?」
目の前の地面が上へと飛び跳ねた。
「な、なに――!?」
そしてそこから、大柄の男とエプロンドレスに身を包んだ少女が飛び出てきた。
「屍薔薇ソプラ・・・!」
ここまで激戦をしていたようだ。
「がぁ――!!」
頭上の土の塊を蹴り、ソプラは少女に攻撃を仕掛けた。
「あああぁ――!!」
少女は身を捻り、その攻撃を躱す。
そして手にしていた『それ』をソプラに突きつけ――
「白黒暴徒――ッ!!!」
引き金を引いた。
途端ソプラの頭部にて爆発が起こり、白黒暴徒は爆風でこちらへ飛んできた。
「うぉあッ――とと」
見事白黒暴徒を英雄は受け止めた。
「白黒暴徒ッ!!大丈夫か!?」
「ひ、英雄・・・心配ありません」
すぐに立ち上がる白黒暴徒。
「わたくしは、貴方方のために――」
そうとだけ言って、同じくして飛んでいったソプラの方面へと走っていった。
「・・・」
「英雄」
「!?」
呆然としていた英雄の背後には、ボロボロの守人がいた。
「でぃ、守人!?大丈夫かお前――」
「身体に何ら支障はありません。ですが、少々疲労気味です」
「ひ、疲労?」
「ええ。白黒暴徒が持っていたジェットパックで、入口から出てきたのですから」
「じぇ、ジェットパック・・・」
「・・・紅は?」
「大丈夫だ・・・無事だよ」
「そうですか、それは良かった」
と、紅へ近づく守人。
「紅の体を調べます。英雄、あなたは援護を」
「し、調べるって――」
「早く」
「―――はい!!!」
そう言って、英雄は走り出す。
「英雄ッ!!!」
しかし、その足は止められた。
「る、紅!?」
彼女によって。
紅は、ふ、と軽く笑った。
「私は何ともないんだけどね・・・ちょっと体が動かない――なんだろうね、ノッキングでもされたのかもなー」
「・・・」
「守人、私のスーツの中に――」
「・・・はい、わかりました」
そう言って、守人は紅のまだ綺麗なままのスーツの内側に手を突っ込んだ。
「ちょ、守人そこは違うって――うひゃひゃひゃ」
「あ、ごめんなさい」
「・・・」
英雄は何をすればいいのかわからない状況だった。
「――そう、それだ。それを英雄に渡してくれ」
「え・・・これをですか?」
「何だ?なにか問題があったか?」
「ひ、英雄は銃を使ったことはないはずです――」
「大丈夫だよ、心配するな――な、英雄?お前は、気づいたんだろ?」
「・・・」
ただ言葉を発することはなく、静かに頷いた英雄。
それを見た紅は微笑み、そうか、とだけ言った。
「では、英雄。これを」
渡されたそれは、拳銃。
「スタームルガー『ブラックホーク』」
「ぶ、ブラック・・・?」
「ブラックホークだ。私が愛用している拳銃だよ」
「・・・」
「大丈夫だ、心配するなよ。それは初心者でも扱いやすい――形もかっちょいいしな」
「そうですか・・・」
「大体の使用方法はわかるな?」
「はい、紅を見ていましたから」
「そうか、じゃあ行ってこいよ――凄惨な男に、制裁を与えてこい」
「――はいッ!!」
そう言って、英雄は消えていった。
次回完結(予定)




