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制裁探偵事務所―紅― 『七色の魔法使い』6


「――しっかし、驚いたなぁ」


天災島から少し離れたところにある、紅達が天災島へと出発(出航)した港のある町。

その海沿いに位置する民家に、命と幸と凪沙と日露璃が集まっていた。

細かく言えば、命は海の幸をたらふく食べ、幸は台所を手伝い、凪沙も同じく手伝いと掃除、日露璃はどこかへと消えた。


「まさか、海に浮かんでるなんてな」


その民家の主人は紅達を送った張本人。

鋭い鑑定眼を持つ健康的なおじさんだった。

酒を飲み、命と話している。


「俺たちはまるで覚えていないんすけど、本当に浮いてたんですか?」

「おうよ、俺の目に間違いはねぇ――ちょっと興味本位で近づいてみればよ、人が4人海に浮いてたんだよ、笑えるよな」

がっはっはっは、豪快に笑う。

命は苦笑いだ、無理もない。

「本当、すみません。送ってもらうだけでなく、食事まで――」

「気にすんな、同じ人間じゃねぇか」

「・・・」


そこで、命は自分の記憶力の限界に挑戦してみる。


凪沙を見つけた俺と幸くん→突如背後に響く青年の声→現在

「・・・・・・」

わけがわからないのも程々にしとけっての


「ごちそうさまでした」


言って命は、失礼します、とおじさんに断ってから、外に出た。

風が強い。


「薔薇・・・」


思い返す。

そうだ、俺はマドウと戦って、俺自身のスタイルを見つけたんだ。


「紅さん・・・」

彼女の推理は、的外れだった。

「戦ヶ丘、紅」

『自分が第三者の時』『身体能力が上がる』なんて、英雄(ヒーロー)とは呼べない。

それ以前に、違うシチュエーションでも英雄(ヒーロー)は発動していた。

闘々龍萌九頭、狂兵器(レクイエム)と戦った時も、そうだった。


「マドウ、ありがとう」


深呼吸して――海に飛び込んだ。


それほど深くはない。

ただ、妙な胸騒ぎが、彼の行動を促した。

「――ぷはぁっ!」

そして、海から上がる。

それだけでよかったのだ。


目を覚ますだけで


「俺は、何をやっていたんだろうな」


笑える。

笑ってしまう。

「よし」

と気合を入れ

視界を前へと向けた。


そこに



戦ヶ丘紅が立っていた。



「――え」

「よぉ、少年」

そこにいる紅は、命の名前を口にしなかった。


「べ、紅さん!」

「・・・」

喜ぶ命を見て、気まずそうに頭を掻く紅。


「あー・・・と、すまんな、少年。今の私は、紅――『銃器式紅一点ブラック・イン・ルージュ』の戦ヶ丘紅ではない」


「・・・?」

一瞬、言葉を理解できなかった命。

しかし、次の一瞬で、理解した。

「じゃ、じゃあ」

「名乗れと言われる前に名乗らせてもらう」

にや、と笑ったそれは、その紅のままの口調で、言った。



「僕は、『絶対』であり『混沌』であり『虹』であり『奇跡』であり『開闢』であり『終焉』


――青薔薇アルトだ。


以後、よろしく頼むよ」

「あ、あお、ばら?」

命はその名前に聞き覚えがあった。

【青薔薇アルトさんで、はい、分かりました】

始まる前の、プロローグ地点で、紅自身が言った。


「悪いけど、諸事情で姿と声は公表できなくてなー。許してー」

おちゃらけた様子のアルト。

その仕草、声は明らかに紅のものだった。


「あ、そういえば君達を海へ追い返す前にもう声はバレちゃってんな、まぁいいか」

あー、あー、とマイクのテストをするように声を何度も出すアルト。

そのうち、声が変わっていった。



「それじゃあ改めて、待ってるよ、少年くん」



声は、明らかに紅のものではなかった。

それこそ、聞き覚えのある青年の声。

それを理解する暇もなく、気がつけば、彼女(彼)は消えていた。


「・・・青薔薇アルト、何者だ?何が目的だ?紅さんを拉致って――」

ぶつぶつと呟く命。


「・・・行くか」


と、幸と凪沙を呼びに行った。

説明途中で服がびっしょり濡れていることを問い詰められたが、人に言えるような事ではないので誤魔化した。


「青薔薇アルト・・・」

「何者なのでしょう」

「それを、確かめに行くんだろうがよ」


おそらく、日露璃はもう出ているだろう。


「行くぜ」


制裁探偵事務所(-紅)再び、出航。



■      ■


「ふむ、なかなかいい眼をした少年だったよ、名前は確か――齋藤命・・・だったかな?」

再生(リバース・ガーデン)の最深部。

そこに、一人の青年と一人の男性と一人の女性がいた。


「ねぇ、紅さん?」


皮肉っぽく笑うのは青年――青薔薇アルト。

「はん、制裁探偵事務所(ウチ)をあんま舐めてっと、痛い目合うぜ?青少年」

それをさらに皮肉で返すのは――戦ヶ丘紅。

両手を拘束され、磔にされている。

「ふふ、まぁ、少しだけ期待させていただきますよ」

ちら、と男性の方を見るアルト。


「なんだ息子・・・言いたいことでもあるのか」


男性はどうということもなく、家族のように言った。

それを受け、別に、と家族のようにアルトは返した。

「僕の興味は俄然あの少年くんに向きましたよ、あとは――狼男くんですかね」

品定めをするかのように淡々と言葉を発するアルト


「あの二人の力が、欲しくなってきましたよ」


「―――!?」

紅は鳥肌が立っていくのを感じた。

アルトの舌舐りで、恐怖した。

「じゃあお父さん、あとの罠師さんとメイドさんを頼みますよ」

「ああ」

単なるやり取りの中、紅は少しだけ、心に不安を感じた。


「絶対に、生き残れ」


と、二人に聞こえない声で、叫んだのであった。





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