制裁探偵事務所―紅― 『七色の魔法使い』5
「――ちくしょう!なんだってんだ!!」
英雄――もとい命は苛立っていた。
通路を歩き回っているうちに守人、幸との合流は果たせたのだが
「ちッ」
露骨に舌打ちをする。
白黒暴徒――凪沙、紅――紅の姿がない。
二人は探しているのだが
「どんだけ広いんだよ!馬鹿か!?馬鹿なのか!?」
この通り。
幸は普通に探している。
もはや幸には手持ちの道具が銃しかない。
全て置いてきたのだ。
「・・・」
正解だろうと思う。
実のところ、3時間ほど彼らは歩き回っている。
正直、疲れる。
「べーにさーーーーん!!なーぎさーーーーー!!」
呼びかけても返事はない。
くらいのことはもう知っている。
幸だけでなく、命も知っているはず。
「あぁったく!!まさか負けたんじゃねぇだろうな!」
苛立ちを隠そうともせず、ずかずかと歩いていく命。
時折姿を現す部屋も、ひと部屋づつ調べる。
それで、3時間。
「はぁ・・・」
幸にとっては、正直辛いところだろう。
「あっ」
命が言った。
その声の調子で、分かった。
「凪沙さん!?」
「凪沙!!」
幸と命が駆け寄る。
「おいッ!!しっかりしろ!凪沙!!」
すごい勢いで凪沙の肩を揺らす命。
心情は察するが、このままでは肩が外れかねない。
「ちょっとどいてください」
「どいてって――ちょ」
「僕に任せて!!」
外見で見られる傷はほんの少ししかなかったから、ダメージは分からない。
――だからこそ、だ。
同じ事務所の人間として、あの凪沙がこの程度の傷で倒れるわけがない。
何か、特別な何かをされたとしか――
「―――え」
幸は思った。
外の傷を付けずに、心に傷を負わせる人なら知っている。
知っているが
「なん、で・・・」
必ず、それには症状が出ると確信していた。
小刻みな震え、体温の上昇、血圧の高騰。
しかし凪沙には――それが無かった。
「・・・」
何の証拠も残さず
「・・・」
何の症状も出さないまま
「・・・」
人をこんな風に出来る人間なんて
「わけが、分からない・・・」
呟いた。
結論を。
分から無さ過ぎる。
「何・・・」
混乱する。
「・・・・・・」
頭の何かが外れた感じがした。
まるで、僕自身が『屍』になっていくような―――
「幸!!」
突如、我に返った。
命の拳が目の前で静止している。
「・・・・・・」
言葉も出ない。
「大丈夫か?立てるか?俺が誰かわかるか?」
「・・・・・・あ」
良かった。
命さんが居なければ僕は
「野暮なこと考えんな、仲間だろうが」
命は照れくさいように言う。
「大丈夫です、立てます。貴方は僕の大切な仲間、英雄です」
と、幸は口早に言う。
それを受け、命は嬉しそうに「うん」と頷いた。
「しかし――状況が意味不明なのは変わんねぇな。凪沙はこんなんだし、紅さんは見つからんし」
命が話を戻した。
それはそうだ、そもそもこんなことをしている場合じゃない。
「ですね、でもとにかく、凪沙さんが見つかったことはプラスです。気がついたら、何があったか聞きましょう」
幸が提案する。
「ま――そーだな」
命はそれに賛成したようだ。
しかし、ここは『腐敗した庭園』こと『再生』。
そんな平和な時など、続くわけがなかった。
「やぁ」
背後から、声がした。
しかし、二人は向かい合っている。
その二人が二人とも、背後に音を聞いた。
「今回の攻防はここまでだよ」
声は淡々と続く。
青年の声。
「『銃器式紅一点』は預かった。我々は次の段階へと駒を進める」
「な・・・」
「誰だ!!」
「全てを知りたくば、また、万全の状態で来ること。さもなくば」
その声は、確かに、耳元で聞こえた。
ぞっとする、声のトーン。
「死ぬよ」
「―――!?」
視界が暗転した。
訳が分からなかった。
その場にいた3人と、誰も知らないところで1人。
命、幸、凪沙、日露璃。
「――――」
ここからは、彼らが主役だ。




