制裁探偵事務所―紅― 『七色の魔法使い』1
この話は、紅の所に入ってきた依頼の話。
「くぁー、うっめぇーな!おい!この野郎!!」
「褒め言葉として受け取っておきます」
夕飯。
戦ヶ丘紅、齋藤命、姫劉院幸、明日来日凪沙の4名が食卓を囲む。
黄色を超え、もはや黄金とも言える輝かしい色を放つオムライスが、今日の献立だった。
命と凪沙が作ったのだ。
「さすが命さんと凪沙さんのコンビですね。格が違うというか」
「へへ、まぁな」
命は嬉しそうに鼻をこする。
「だがよ、お前の料理の腕も凪沙が来てから随分と上がったんじゃないか?命」
「ですね。とても勉強になります」
「いえいえ、わたくしは何もしておりません」
「嫌だなぁご謙遜?はっ、自信持てよ」
「そうだぞ凪沙。お前は他人に誇っていい才能がある」
「・・・ありがとうございます」
他愛もない会話をする。
幸せと言い換えてもいい雰囲気だ。
「ふぃ、ごちそうさん」
「ごちそうさまでした」
「「お粗末様です」」
「息合ってんなぁ」
「羨ましいです」
と、そこまで喋った。
プルルル、と電子音が流れる。
「およ」
事務所用の電話だ。
紅は腕を伸ばし(椅子に座ったまま伸ばしたのでひっくり返った)受話器を取った。
「はい、こちら制裁探偵事務所です」
営業モード。
「依頼ですね?少々お待ちください」
電話の横に置いてあるメモ用紙に手を伸ばす。
そしてペンを取り、キャップを開ける。
「では、お名前をお教え下さい。はい、青薔薇アルトさんで、はい。分かりました」
スラスラとメモ用紙に書く紅。
見れば平仮名だった。
「依頼の内容は、えーと・・・あ、はい分かりました。それでは」
電話を切る紅。
「紅さーん」
椅子に最大限もたれかかった状態で命が言う。
「依頼って何ですかー?」
「さぁ」
「さぁって」
紅の言葉に驚きひっくり返る命。
「いてて、さぁってなんすか」
「分からん。明後日ここに来るんだってよ」
「そっすか」
「そっす」
「ま、結構ヤバめらしいから、準備しとけ」
「え?あ、はい」
「休息を怠るなよ」
「はい」
「うぃー」
「分かりました」
と、事務所にいる4人が解散した。
そのころ、日露璃は――
「むー」
『なに悩んでんですか』
「いや、ね?どーしても納得いかないことがあって」
『はぁ』
「おれが命と会ったとき、月ってどんな状態だった?」
『え?月っすか、えーと・・・三日月ですね。それがどうかしましたか?』
「気づかねぇか?おれは満月か新月のときにしか動かないはずだ」
『あ、そういえば』
「変だろ?あのときは、何だろう。行かなきゃいけないって言う感じが」
『謎ですね』
「ああ謎だ」
KOIと何気なくはない会話をする。
「・・・」
『オートさん?』
「・・・・・・」
『おーい、オートさんって』
「・・・あ、あぁ悪い悪い。それで?」
『あのですね、事務所の方々から連絡が』
「ん?依頼か。おれが出なくちゃいけないのか?」
『みたいですねぇ』
「どんな依頼だ?」
『さぁ』
「さぁ?」
『これっぽっちも分かりませんよ。なにせ情報がありませんから』
「あぁ、そう」
ため息をつく日露璃
『あ、依頼主の名前も聞いておきますか?』
「ん、おう。聞いておこう」
『青薔薇アルト』
「―――」
『だそうですけど、ご存知ですか?』
「――いや、危険だ。危険すぎるぞ今回の依頼は」
震える日露璃
『え?そ、そんなにですかぁ?』
「そんなに以上だ。以上で異状で異常だよ・・・今回はやめておいたほうがいいって伝えてくれ」
『わ、わかりました』
メールが送信された。
30秒後に返信が
「早いな・・・」
『えーと、ふざけるなよサボリがごちゃごちゃ言わずに手伝え。だそうです』
「・・・KOI。今から言う文章をそのままメールに乗せて返信してくれ」
『・・・はい、分かりました』
「青薔薇アルトという人物は天然に存在する者ではない。腐敗した天才の機関『腐敗』によって人為的に作られた人型の兵器である。彼には決して関わるな。おれはそれを望む」
『・・・』
「できたか?」
『えぇ、はい。それよりもオートさん、その、本当なんですか?その話は』
「本当だよ。紛れもなく本当だ・・・なにせ、おれの『狼男』もあいつへの過程として作られたのだからな」
『・・・まじっすか』
「まじだよ。全く、まぁ精々腐敗を破壊、沈没させたおれ達に恨みを持ち、復讐を考えてこの状況ってところかな」
『えげつねぇっすね・・・』
「本当だっての」
日露璃は立ち上がり、衣服の準備をする。
『オートさん?あれ、何やってんすか?』
「準備だよ準備。どうせ何言っても聞かねぇだろあいつらは」
『ですけど・・・室内ですよ?多分』
「場所か?まぁ、おおよその場合はそうだろうが・・・」
にやりと邪悪に笑う。
「CP室があるじゃんか」
『ままま、まさか』
「おう、行くぞ」
『私もですかぁああああ』
そして新月の夜。
彼と彼女はその家を後にした。
■ ■
「本日はわざわざ僕のために時間を空けていただき、誠に感謝しています」
「いいんだよ、うちは探偵事務所だから」
「制裁・・・でしょう?」
「・・・」
「探偵事務所とは言っても基本はボランティアなど地域地方への協力助力、しかしその裏では『スタイル』という人間の上位能力を巡り、暴力、殺人以上の事件を担当」
「・・・80点だね、青薔薇アルトさん」
「・・・そりゃどうも」
事務所内一室。
そこには、紅と青薔薇アルトが対峙して座っている。
「まぁそれだけでも説明はつくし、どんなことをしているのかさえ分かればそれでいいから――あえて補足はしないけどね」
「さいですか」
「それで?そこまで調べているのなら、依頼はヤバイんだろ」
「ええ」
アルトは紙を取り出す。
「んー?地図、か」
「はい、依頼の内容の前に、少しばかり説明させていただきます」
「おう」
「先日、といってもそれなりに前ですね――貴方がたの活躍により、『腐敗した天才』こと『ラフレシア』の本部、天災島を潰しましたよね?貴方がたは『ラフレシア』内の人間は全て始末し終わったと考え、もう忘却の彼方だとは思いますが・・・それがそうもいかないんですよ」
「『ラフレシア』絡みの仕事か・・・」
はぁ、とため息をつく紅。
「正確には違います―――」
アルトは、手を銃のように畳み、紅に向けた。
「『ラフレシア』の残党。『腐食の広がる庭園』こと『再生』です」
「・・・・・・」
紅は驚いた。
「あの機関の・・・残党だって?リバース・ガーデンって――その情報は確かなのか?」
「ええ、紛れもなく確かです――蠢き犇めくあの不愉快な団体は、まだ残っています」
紅に向けていた指を下ろす。
「僕からの依頼はそれです――『再生』の殲滅。これにあります」
「・・・情報は?」
「機関に属する人間の数は8人です。場所は前回と同じ場所に」
「天災島は、潰したはずだが」
「建てたんですよ。新しく」
「・・・・・・」
深く考えるように俯く紅。
「ふぅん、そ。分かったよ――それで、いつやればいいんだ?」
「少なくとも今月中には開始して下さい。あいつら、何かやるっぽいですので」
「分かった。君は同伴するのかい?」
「いえ――僕は」
立ち上がるアルト。
「待機させていただきます」
「・・・了解だ。それじゃ、知らせを待っていることだな」
「はい」
アルトが部屋を出て行った。
「・・・『再生』か」
紅は考える。
「聞いたこともない、『ラフレシア』の残党だって?ありえない・・・私達が潰したはずなのに」
ぶつぶつと独り言のように喋る。
「それとも、ただのガセか?いや、今回は違う。空気が――張り詰めたこの場の空気が違う・・・」
この辺まで喋ったか、
買い出しに出ていた、命と幸と凪沙が帰ってきた。
「ってことからすると、あの時俺んところに持ってきた弁当はお前が作ったんじゃなくコンビニの弁当の具材をメインだけを入れまくった物ってことだな?」
「そうですよ、前にも言いましたよ?僕は料理ができないんです」
「そーいやそんなこと聞いたっけなぁ」
「わたくしが料理をお教えしましょうか?」
「・・・僕はどんなコーチの方が就いたとしても必ずピーナッツバターの味にしかならないという伝説を持っているのですよ」
「なんだその無駄な才能。スタイルかよ」
「かもしれませんね」
「帰ってきたか、諸君」
「うぃす、ただいまですねー」
「ただいまです」
「・・・・・・」
命の手にはコンビニのレジ袋がぶら下がっていた。
「買ってきましたよ。えーと、『スウェーデンの鮭に名古屋コーチンの卵を使用したツナマヨスパゲッティ』でしたよね」
「――ああ、間違っていないよ」
「で、どうでしたか?青薔薇アルトという人は」
「好青年だったよ」
「依頼の方は?」
「・・・食べながら話そう」
「・・・はい」
コンビニの袋から『スウェーデンの鮭に名古屋コーチンの卵を使用したツナマヨスパゲッティ』『特製冷やし中華』『カキフライ弁当(半額)』『フランスの一流シェフが認める味!ミートスパゲッティ』を取り出す。
「なんかスパゲッティが被ってるな」
「気にするな命くん、それで依頼なんだが」
そして説明する。
アルトが残した言葉、情報。
『再生』の存在。脅威。
凪沙は『ラフレシア』での一件のことを知らないので、1から説明した。(大体3ほどで理解したらしい)
「・・・信じられますか?」
「さぁな、五分五分といったところか?」
「・・・」
「でも、面白そうだな」
「面白い面白くないの問題ですかこれは」
「だな、私が独断で決めることじゃ、ないな。この依頼は・・・かなり危険だ」
「本当だったら、ですよね」
「そうなる」
「僕は行きます。おずおずと待っていることは出来そうにもないでしょう」
「右に同じですよ・・・まぁ、ある程度死ななように頑張ります」
「貴方たちが行くのであれば」
「決定だな」
「あれ、日露璃の奴は?」
「ああ、あいつか?あいつは2日ほど前に出発したらしい」
「早っ」
「それで、今は海を渡っているらしい」
「泳いでるんですかっ!?」
「誰がんなこと言ったよ。船だよ。手漕ぎらしいけど」
「・・・」
とまぁそんなこんなで、
制裁探偵事務所紅御一行――『腐食の広がる庭園』こと『再生』へ出発。




