メイドの場合(中)
「申し訳ありませんでした。主人には『ご友人』として招待させましたので・・・」
別室(彼女の部屋)にて会話は進められる。
「まぁ、別に言いにくいならそれでいいんだけどよ・・・」
「今現在、あなたがたの正体を知っているのはわたくしのみだと思います」
「・・・」
命の気遣いを無視して話を進めるメイド。
「それでは改めて自己紹介させていただきます――わたくしは日本よりこの邸に仕えております、明日来日凪沙という者です。何卒よろしくお願いいたします」
「ああ、戦ヶ丘紅だ」
「姫劉院幸です」
「俺は命だ、よろしくな」
「もう存じておりますが、齋藤様・・・でよろしいですか?」
「・・・?」
ん?
誰のことだ?
「ですから、あの、命、様?」
「えっ、お、俺か!?」
「えぇ。齋藤命様でいらっしゃいますね」
「さ、いとう?」
「あ、違いましたか?」
「いや―――それがな・・・」
・・・・・・
「記憶、喪失の類ですわね」
「やっぱりそうか・・・」
「しかもそんなに重点的に・・・これは―――」
「・・・?」
「誰かが意図的に記憶を奪った・・・と考えた方が納得できますわ」
「意図的に?」
「ええ」
「おーい、もうそろそろいいかー?」
メイド、凪沙と命の会話に飽きたらしく、紅と幸はそこに置いてあった椅子に腰掛けている。
「あ、申し訳ありません・・・」
「いいよいいよ、それで?」
「依頼に関しての説明・・・ですか」
「ああ、頼むよ」
命は壁にもたれ、幸は扉の前に立ち、紅は凪沙の目の前に立つ。
「簡潔に言えば、この家を潰して欲しいというのがわたくしの依頼です」
「潰す?この家を?」
「ええ、先日、調べ物をしてまして、地下にある図書室を探索していました時――」
凪沙の声が低くなる。
「隠しの扉を発見してしまいましたのです」
「隠し・・・ねぇ」
「その時は、忠誠心よりも好奇心の方が先に出てしまい・・・扉の奥へと進んで行きましたところ、とんでもないものを見つけてしまいました」
「それは?」
「人間を製造する機械です」
「・・・っ!?」
「にわかには信じがたいことです。この世にこんなものが存在するなど」
「・・・続けて」
「しばらく唖然としている間に主人と奥様が入ってきまして、こんなことを喋っていました」
「・・・」
「『完成までもう少しだ。これを世界樹へと献上すれば、私はヨーロッパの覇者となる!!』」
「せ、世界樹・・・!!!!」
「その名に聞き覚えがありますか」
「い、いや、それで・・・?」
「先程も言った通り、この家ごとあの機械を潰して欲しいのです」
「報酬は?」
「この家の総財産でいかがでしょう」
「OK、交渉成立だ」
「でも、ゆっくりするわけには行きません。どうせここでの会話も筒抜けとなっていることでしょうから、早く実行に移りましょう」
「ましょう・・・って」
「わたくしも手伝います」
「おいおい、大丈夫なのか?」
「ええ」
そして彼女は、一つの鈍器と一つの銃器を取り出した。
「これでもわたくし、ここら辺では『メイド服を被った鬼』と呼ばれているんですよ?」
「・・・はっ」
右手には鈍器、左手には銃器。
右手に持つ鈍器は、先端に、とてもえぐい形をした鉄球が取り付けられて、後方には鎖が繋がれている。さらに鎖の先には、三方向に出っ張った形の取っ手が付いている。
左手に持つ銃器は、説明は不要だろう――ロケットランチャーである。
「あんたも、その立ち振る舞いからして、私達と同類っぽいな」
「なんのことでしょうか」
「いや、なんでもない」
その会話が終わったあと。
その邸中に、警報が響き渡った。
「さぁ行くぞ命くん幸くん!!」
「はい!」
「・・・」
沈黙で答えた命。
これまでには無い、難しい表情をしていた。




