親不孝物の場合(下)
「・・・う、うぅ」
朦朧とした意識の中、目が覚めた。
「―――つっ」
頭が痛い。
やっぱり、殴られた・・・か・・・
「お目覚めかい?にーちゃん」
「っ!!お前は――がっ、」
途切れ途切れの意識
視界と認識が噛み合わない。
なんか、ぼやけて見える
「たーいへんな事してくれちゃってまぁ・・・お影でウチの面子が丸潰れだよ」
渋い声、の気がする
それと、煙草臭い・・・か?
「お・・・お前、はっ」
くそ、言葉が繋がらない
「大丈夫大丈夫。これ以上はにーちゃんには危害を加えないから」
「く・・・」
「そ・の・か・わ・り」
「え・・・?」
「ジャーン!!」
急に閃光が突き抜けた。
目がくらむ。
「うっ・・・」
「見覚え、あるかな?」
「なん・・・」
しっかりと、捉える。
目を、合わせる
見ろ
感じろ
「おっ――親父!?」
そう
そこに居たのは、張り付けにされた俺の父親の姿
なんというか、酷かった
「これからー、君の親父さんをフルボッコにしまーす」
「はっ――!?親父は関係ねぇだろ!!」
「拒否権は、無いよ」
パチン、
渋い声の男が指を鳴らした
「くっ――お前、俺が何をしたって言うんだッ!!」
「えっ?」
どよめいた
ざわめいた
「ふん、こいつが証人さ」
と、指差されたのが、見覚えのある男性だった。
「あっ」
あの時、ボコボコにした、メリケンを落とした男性
「なんで――あんたが・・・」
ショックのあまり、五感が安定してきた
「ぼっ、僕は・・・このグループの一員なんで、さっささっきの借りは、こここで返そうと、お思って」
「まじかよ・・・」と思った。
「んじゃあ、納得してくれたかな?」
「は?」
「SHOW TIMEだ!」
「まっ、まさか」
父親に向けて、散弾銃を向けた
「おっ、親父ィ!!」
反応が無い
「ふふ」
「や、やめろ・・・!」
た、助けて
「ふふふ」
助けて・・・
「やめろォ・・・」
「ふふふぁははははは!!!」
助けてッ!!!
「やめろおおおおおぉぉぉぉ!!!!!」
バキュン
「・・・え?」
銃声が、聞こえた
「な、なんだ?」
男も、気にかける
父親に向けた散弾銃も、一時下げられている
バキュン
「ま、まただ」
「一体、なんだ?」
バキュン
「おい!様子を見て来い!!」
「はっ、はい!」
男が、何人かを後ろへと動かす
バキン、バキン
「・・・何の音だ?」
後ろを振り返る
何人かの男達が、後ろにある大きなシャッターについた時
瞬間
刹那
ドン
「うっ――うおっ!?」
思わず慌てふためく
シャッターが、吹っ飛んだ
「え、ぅぇえ!?」
男も、驚く
「・・・・」
爆発したシャッターから出てきたのは、女性だった
黒いスーツに、白いシャツといった、事務的な格好をしている
胸元だけ、大きく露出している。
そして、その片手には、拳銃が握られていた
「ったく、おいおいおいおいおいおいおいおい命くんよぉ」
その女性は、かけていた戦争に使うようなゴーグルを上げて、俺に喋りかけた
そう
紛れもなく、「命」というのは、俺の名前だ
「ふ、なんだ?味方の登場かにーちゃん!だが残念だったn――」
「あ、ちょっと黙ってて今最高にかっこいいとこだから」
男の台詞を無視して、喋りかけた
「正義の味方ってのも悪くはねぇんだけどさぁ、正義の味方をしてるだけじゃ、勝てるとは限らねぇっての。そんなのはもう古い古い」
「・・・・」
「私は、強き者を正す、制裁探偵事務所第一部部長戦ヶ丘紅」
「強き、者を・・・正す?」
「そう。だから常に最強」
「・・・」
傲慢な人だった
「今から、お前の『正義の味方』なんていうくっだらねぇ信念ブチ抜いてやる」
「・・・え?」
一瞬の出来事だった
彼女は上にあげていた拳銃を一発放ち、その反動で銃口を前方へと向ける
バン、バン、バン
三発打った
その弾丸は、父親を狙っていた散弾銃と、父親を張り付けにしていた杭を打ち抜く
散弾銃は飛んで行き、父親はその場に倒れ込んだ
そして、渋い男の方を打った
バン
弾丸は男にジャストに当たり、男はうずくまった
「う、うう・・・」
「す、すごい・・・」
思わず、感嘆の声を漏らしてしまった
「褒めても何も出ねぇぜ」
ニヤと笑ったその女性は、男に話しかける
「おうおっちゃん。諦めろや、もうそろそろサツが来る」
「て、めぇ・・・何者だ」
「言わなかったか?
―――強き者を正す者、だよ」
「くそ・・・俺の負けだ・・・・・・なぁんて」
がばっと起きる男
「言うとでも思ったかァ!!」
「ふん」
女性は、酷くつまらなさそうな顔をして
「おい命くん、立てよ」
蹴ってきた
案外痛かった
「ほら、上見ろ」
「・・・?」
上には、倉庫の天井から吊るされている大きな電灯がグラグラと揺れていた
「私の初発だ」
「あぁ」
「あれはもうそろそろ落ちてくるぞ」
「・・・What?」
「だから、落ちてくるんだよ」
「・・・Where?」
「Here」
「嘘・・・」
「ホント」
「それで、俺にどうしろと」
「あれが落ちてきた瞬間に蹴っ飛ばして、あの男の方へと飛ばせ」
「・・・はぁ?」
「安心しろ」
「え・・・」
「あいつは敵で、私は標的だ」
「・・・!」
彼女が言った言葉
それが、魔法の呪文のように思えた
身体中から、力が溢れ出る
あの時の感覚だ
「・・・OK?」
「オーケイ」
ニヤと笑って
「何ゴチャゴチャ話してんだ!手を挙げて頭の後ろで組め!!」
「「リョーカイ」」
二人の声がハモった
そして、女性が地面を踏んだ
ドン
その振動は、倉庫全体に響き、天井まで達した
「命くん」
「はい」
俺が返事した直後、電灯が落ちてきた
「なっ、なんだぁ?」
男は慌てる
「やれ」
それが、幕引きの合図だった
かるく、足を引き、一回転してからの横蹴り
電灯を直撃し、飛んでいった先には男
「わ、わわ――」
ずぅん
沈んだ音がした
「どうだ、命くん」
「え?」
男の方向を見ながら女性、紅さんは俺に話しかけてきた
「『正義の味方』と『強き者を正す者』と、どっちになりたい?」
「え・・・」
少し、迷ったものの、答えは一瞬で出た
「あなたに、ついて行きます」
「・・・いいだろう」
フフ、と笑い
「まずは、お前家に帰ってお袋さんに謝ってこい。話はそれからだ」
と、背中を叩かれた
その痛みは、身にしみて、心の奥底まで届き
そのまま、倒れた
続くッ!!




