狼男の場合(下)
「うううー、くそー、今回は見逃してやるー」
「覚えていろよー」
五段積みになったイエティレンジャー(自称)を背に、命と俺は向き合う
「や、やっぱり・・・」
本当は逃げたかったのだが、まぁ逃げ道などなかったわけで
横に立ち並ぶアパートに飛んでいけばいいのだが、それでは今後の行動範囲が狭まるわけで
ここは、1を選ぶことにしよう。
うん、賢明な判断ですね(笑)
「あ、あの・・・」
なんだか口ごもる命。
「あ、ありがとうございました」
「・・・ん?」
「あの時は、ありがとうございました・・・あなたは、僕の命の恩人です」
「・・・」
おおっと?
このパターンは予測していなかったぞ・・・
「あ、あの時、あなたが助けてくれなければ、僕は今存在していませんでした」
「・・・」
さっきまで追いかけられていたがためになんだか実感がわかないな
・・・・・・
まぁ適当にはぐらかすか
「あ、あぁあの時の、ねー、うん気にしなくていいよ、おれは未来のみを見据えてるからね」
「そこでなんですけど・・・」
あ。
いけない、フラグが立った
「ぼっ、僕に戦い方を教えてくれませんか!?」
はいフラグ回収ー
「は、はぁ?」
わざとわからないふりをしよう
「弟子にしろってことか?」
「そう、ですね」
「何故?」
「えっと、簡潔に言えば強くなりたいんです」
「・・・」
「・・・あの時の戦い方を見て―――思ったんです」
「何を?」
「野生です」
「野生?」
「そうです、あなたの戦い方は、僕にはない、もっとギラギラとした何かがある」
「・・・」
「それを、教えて欲しいのです」
「ふむ、まぁ弟子を持つのは初めてだし、おれ自身の力にもなると思うな」
「じゃ、じゃあ!!」
「だが断る」
「え」
「面倒なことは嫌いなんだ。ましてや人を育てるなんてもってのほか」
「な・・・」
「ただまぁ、そうだな・・・」
「え、なんですか」
「満月と新月の夜にのみ、おれは活動する」
「えっ」
「あー、今のは独り言だ。気にするなよ」
「あ、はい」
「それと!」
「え?」
「おれの家を突き止めようなんて馬鹿なことは考えるんじゃねぇぞ、まぁその頃にはお前は八つ裂きに――」
「わ、わかりました!それ以上いうといろいろまずいと思うので!!」
「ん、そうか」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「じゃあ、おれは帰ってもいいんだな」
「あっ、はい。ありがとうございました」
ふむ・・・
助けた覚えなんてないんだけどな
いや
あいつも同類ってこともありえるのか
ま、考え過ぎかな




