狂兵器の場合(下)
「・・・・・・」
立ち去る命を呆然と見送る萌九頭
「・・・!」
丸められた紙くずが転がってきた
『果たし状』
なるものだった。
「場所は廃ビル・・・明日の正午か・・・」
そして、現在に至る
時刻は11時55分
そこには、萌九頭の姿があった
「・・・・・・」
50階からなる高層ビル。
経営していた会社が倒産したため、現在は廃ビルとなっている。
その屋上に、ただ一人。
「・・・・・・」
萌九頭は立っていた。
手には木製の手枷、足には鉄球が付いている。
そして、
ガラーン、ガラーン
近くの公園の時計塔が、正午を知らせる。
「・・・・・・」
そして、屋上の扉が開く。
重たい音をたてて
「・・・・・・よぉ」
「ふん」
それだけだった。
二人が交わした会話は、それで途切れた。
萌九頭が重たい足を上げ、命が軽い身体を飛ばした。
「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ――――――!!!!!」
「ああああああああああぁぁぁぁ―――――!!!!!!」
萌九頭が振り回した鉄球が命に当たる。
「――――うっ、ぐうううう、ううう!!!!」
そして、そのまま、吹っ飛ばされる。
命は屋上の淵に立たされた
「ぐぅぅうう―――」
「・・・命さん」
そこで、萌九頭が口を開く。
「俺達が今ここで争う理由なんて無いんじゃないか?」
「・・・うっせぇんだよ」
「・・・」
「てめぇ!!!そういう理由やら理屈やらで人生生きてるんだったら悲しいぞ!!」
「は、はぁ?」
「お前がじゃない!周りの皆が悲しむんだ!だから俺は!!」
命はフラフラのまま、萌九頭を指差した。
「お前の歪んだ悩みに制裁を与えるべく、制裁探偵事務所の一員として、お前と闘う!!!!」
「・・・っ!!」
「いくぞ『狂兵器』!」
「くっ・・・!!」
命は、先ほどとは比べ物にならないくらいのスピードで、萌九頭に飛び込んだ。
いや――
ここではもう、英雄と呼ぶべきだろうか?
「――――ッ!!!」
「らああああああぁぁぁぁぁぁ―――――!!!!!」
萌九頭の目の前で静止し、足を払う
「なっ――!!」
「まだぁ――!!!」
そのままの勢いで上段を狙う
足を回す
「ちっ――」
「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――――!!!!」
回転の勢いを殺し、正拳を放つ
「がはぁァッ!!」
その場に、膝をつく萌九頭
「・・・命、さん・・・」
「今の俺は、英雄だ」
「英雄・・・あなたは、なぜ動ける?」
「・・・」
「あなたのスタイルは・・・第三者でのみ発動するはず・・・なのに」
「海から聞いたか」
「あぁ・・・」
「・・・詳しいことはわからねぇが――」
「・・・?」
「二つ目のスタイルだな」
「・・・」
「これこそ、真実の英雄だ」
「・・・英雄・・・」
「なんだ」
「俺を、許可しろ・・・」
「・・・?」
「俺も、今のあなたと全力で戦いたい・・・」
「ふん、そうかよ」
タン、と後ろに下がり
「萌九頭、お前を許可する」
と言った。
ガチャン
萌九頭の足枷が外れた。
ガチャン
萌九頭の手枷が外れた。
「・・・・・・」
深い深呼吸をする。
「・・・・・・」
息を吸う。
そして――――
「がああああぁあぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁああぁぁあああああああああああああああああああぁあ――――――ッ!!!!!!!!!!!」
咆哮を上げた。
「ぎはは・・・」
そして笑う
「・・・・・・」
英雄はそれを黙って見ているしか無かった。
その迫力に、気圧されているからだ
「英雄おおおおぉぉ・・・」
「お前は・・・」
「『狂奏曲』」
「くっ――!!」
萌九頭は、そのままの姿勢から、唐突に回転しながら突撃してきた
まるでSFホラーのような動きで、
「『交狂曲』」
英雄の腕に自らの腕を絡ませる。
そして、そのまま扉の方向へと投げつけた
「がっ!!」
「・・・・・・」
英雄も、すぐさま立ち上がるが、その光景に唖然とする
「なっ・・・てめぇ!!」
萌九頭は、両手をポケットに入れていた。
「舐めやがって・・・!!!」
「ぎははは!!!驚いたか!?驚いたか!!?今までの攻撃は全てよけれるはずだぞ!?どうした英雄!」
「――!?」
唐突に喋りだす萌九頭
「今の俺様は発動を許可された萌九頭だ!ぎははは!!!そう簡単に勝てると思うなぁ!?」
「へっ・・・」
汗を垂らす命
「なんせ許可された俺様は人呼んで『狂兵器』!!1000000のスタイルを持つ化物なんだからな!!!」
「自分で自分のこと化物って言う奴ぁ、イカれてるんだぜ?」
「ぎはははははは!!イカれてる?ぎははは!!そいつは俺様のためにある言葉みたいなもんだぜ!?ぎはははは!!!」
「それで?そのハンドポケットも1000000のスタイルの中の一つだったりするのか?」
「正解!!ぎはは!舞踏嵐ってな!!今のは即興で考えたんだぜ!ぎはははは!!!」
「はっ、じゃあ、行くぜ!!!」
「来いよ英雄。あんたの全部、見せてくれよ」
そしてぶつかる
英雄と狂兵器が、ぶつかり合う
「ぎはははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」
「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――!!!!!!!!」
その叫びは、街中に響き渡った。




