狂兵器の場合(上)
監視長と萌九頭が制探事務所に入った三週間後。
徐々に精神的な壁は減っていき、仲は深まっていった(多分)
「・・・」
髪の長い人がいる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
黒髪の人がいる。
子供がいる。
男性がいる。
そこは、制裁探偵事務所第二部の中。
「・・・・なぁ」
子供が男性に問いかける。
「・・・空気重すぎだろ」
「・・・・・・そうだね」
男性がため息をつく
そして、
「あぁ、もうこんな時間だ!早く夕食の準備をしなければ!」
と言って、そそくさとその場から立ち去った
「・・・・・はぁ」
「あなたも大変ですね海さん」
「え?」
「あんな上司を持っては気が持たないでしょう?」
「い、一応あなたたちの上司でもあるんですけどね・・・」
「あ、そういえばそうでしたね」
「そういえばといえば、そういえば監視長」
「なんですか?」
「あなたのスタイルって一体何ですか?さっぱり予想がつかないんですが」
「ここでは言いたくありません」
「そうですか」
「深夜に私の部屋に這いよれたら教えてあげないこともないですが」
「・・・小学生相手に何言ってるんですか」
「いえ、至って真面目ですよ?」
「・・・・・・」
「まぁ私の監視から逃れられたら、ですけどね」
「遠慮しときます」
「残念ですね」
「そうですか」
はぁ、とため息をつき
「じゃあ僕は一旦命さんのところへ行ってきます」
「命・・・って、第一部の、ですか?」
「えぇ、あの人って結構料理上手なんですよ」
「・・・そうですか」
「なんだかんだ言って僕の分まで作ってくれますからね」
「・・・・・・」
「・・・監視長?」
「興味が湧いてきました」
「へ?」
「今日はハヤシライスにするつもりでしたが、いいですよね?『狂兵器』」
「・・・」
『狂兵器』と呼ばれた長い髪の男は、ゆっくりと俯いていた顔を起こし
「あぁ、なら俺はそのへんで鹿でも狩って食うかな」
「いやいや」
さすがにツッこむ海
「君も食べに来たらどうですか?それこそ蒼さんじゃないですけど、大勢の方が楽しいだろうし」
「・・・いいのか」
「命さんなら、受け入れてくれると思います」
「・・・そうか」
こうして、三人は命の部屋へと向かうことになった
ガチャ、とドアが開く
「・・・・・・おう、海か・・・って」
「お邪魔いたします」
「お邪魔します」
「・・・・・・へへ」
「・・・今日は人が多いな」
「ごめんねー」
「別に謝らなくていいよ。二人分作るのと四人分作るのとはそう変わらないからな」
「やっさしー」
「えーと、確か初対面だったよな」
「ええ――」
と、続ける
「私は監視長です。今のところ、名乗れる名前はこれだけです」
「俺は闘々龍 萌九頭だ、あ、いや、です。よろしく」
「俺は命だ、『いのち』って書いて命。よろしくな」
「命さんは、苗字は何というのですか?」
「苗字・・・苗字ねぇ。そいえば何だったかなー、ここに入る前までは知ってたんだけどな」
「記憶喪失・・・か?」
「まっさかそんなこと」
「こっちの世界では珍しくないことだ・・・」
「・・・お、おう」
会話が一段落つき
「一応今日は鍋にした。ここんとこ寒いからな」
「そういえば今日から11月でしたね」
「俺がこの事務所に入ってもう2ヶ月かぁ・・・月日ってのは短いもんだな」
「そうですね」
「ああ」
なんてことのない会話を繰り返し、共に夕食を過ごした4人は、やがて命の部屋を後にした
「そーいえば、苗字かぁ・・・なんだったかなぁ・・・うーん」
「困っているようですね」
「ああ、ちょっと苗字がな・・・ってうお!」
「どうも」
「なんでここにあんたが居るんだ幸くん」
「ここに居てはいけない理由でも?」
「ここに居てもいい理由も無い」
「まぁフィフティフィフティってことで」
「・・・・・・」
「それで、苗字でしたっけ?」
「あ、あぁ。どうも思い出せない」
「ありきたりでしたか?」
「いいや」
「珍しいものでしたか?」
「いいや」
「何文字でしたか?」
「さっぱり」
「・・・さっぱりですか」
「あぁ。苗字に関しての記憶が無いんだ。監視長に言われるまでは苗字なんて考えてなかったし」
「・・・記憶が飛んでますね」
「そう考えたほうがいいのか」
「ですね・・・というわけで僕はお暇させていただきます」
「はいよ」
そして、命の部屋には誰もいなくなった。
命は風呂に入り、寝巻きに着替える。
しかし、寝付けなかったのか、数十分呻き屋上へ行くことにした。
そして、そこには
闘々龍 萌九頭が居た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
萌九頭は、屋上に布団を敷き空を眺めているようだった。
「・・・・・・よう」
「・・・誰だ」
「俺だよ」
「命さんか・・・」
「隣、いいか」
「寝付けないのか」
「そういうことだな」
「ふ、俺と同じか」
「なんだ、君もだったのか」
「ああ」
命は、萌九頭のすぐ隣に布団を敷く。
「命さんは――」
と、萌九頭から喋りかける
「命さんは、どうして眠れなかったんだ?」
「・・・どうして?」
「いや、ただ話してみたくなっただけだ」
「・・・」
「あなたは、その、どこか、俺と似ている」
「・・・俺が?」
「どこかに共通点があるはずだ」
「・・・俺は、自分の苗字っていうことが気になっただけだよ」
「やはり、そうか」
「やはりって、まさか」
「命さん」
ここで萌九頭の声が真剣味を増した
「俺の過去を聞いてくれるか?」
「・・・・・・」
命は、少し戸惑い
「ああ、聞こう」
と、真剣に聞きに行ったのであった
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