引きこもりの場合(上)
「・・・ヒロ君、ご飯・・・・・・ここに置いとくね」
扉の向こう側から声が聞こえた。
妹、かな。
「・・・・・・」
しかして今はそんな気分じゃない。
でも、結局そんな気分にはなりはしないのだろうけど。
「・・・・・・」
・・・・・・
あ、
「・・・・・・」
やっとアクセスできた。
ここ、だよな
「・・・・・・」
パソコンの明かりのみが部屋を照らす。
眩しくは、ない。
部屋にクリックの音が響く。
うるさくも、ない。
「・・・・・・」
・・・これか。
早速、crackしますか。
「・・・・・・」
黒い板に、次々と白い文字が浮き出る。
キーボードは四つ目だ。
丁寧に扱わなければ。
「・・・・・・」
・・・・・・
案外簡単だったな。
証拠隠滅も完了。
「・・・・・・」
あとはこのプログラムを・・・
ん?
ああ
なんだ
ウィルスか
「・・・・・・」
プログラムを持ち帰るとついてくるオマケみたいな物か
こんなに貰って嬉しくないオマケは初めてだ。
「・・・・・・」
ああ、待て
使えるかもしれない。
「・・・・・・」
やっぱり、結構有力なプログラムじゃないか。
人間で言えば拳銃みたいな物か。
一応、入れておこう。
「・・・・・・」
黒い板を一旦閉じる。
青いデスクトップが浮かび上がる。
「・・・・・・こんばんわ」
おれはマイクに向かい喋りかけた。
『お、こんばんわー!どうっすか!?イイ物手に入りましたか!?』
この画面の中に本物の人間が入っているのではないかと思うくらいの声で
陽気に出てきたのは
「ああ、そっちは何かあったかい?KOI」
おれが作ったAI
人工知能だ。
『んー、残念ながら公式に出されているサイトから得られる情報は少ないですからね』
「全くだな」
『ところで、一体何が手に入ったんです?』
「自分で見ろよ、お前の方がそっちでは動きやすいだろ」
『おっしゃる通りで』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
「・・・・・・」
『・・・いかがなされましたかぁ?』
「腹減った」
『えー、さっきはあんなにカッコイイこと言っていたのにっすかぁ?』
「言ってない」
『あ、サーセン』
「じゃあ飯取ってくるから」
『勝手に開けといていいっすね』
「どうぞ」
ヒャッホウ、という叫び声がヘッドフォン越しに聞こえた。
「・・・ラーメンか」
ガチャリ、と重い扉を開ける。
ラーメンの入ったおぼんを手に取り、パソコンへと向かう。
「・・・・・・」
おれは醤油が好きなんだけどな
『ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと!!!!!なんですかこの膨大な量のプログラムは!うわ、えげつないウィルスが牙を抜かれてるッ!!かわいそうに・・・同類として同情します・・・』
「お前はウィルスじゃねぇだろ」
『あ、そうでした。細菌はオートさんでしたね』
「うるせぇ黙ってろ」
『へーい』
「それで、使えるか?」
『黙ってます』
「質問に答えろ」
『もぅ、黙れー、とか、喋ろー、とかいちいちうるさい人ですねぇ』
「今なら全自動ゴミ箱を発動させることができるが」
『はぅう!やめてくださいよぅ、それはトラウマって言うんです!!』
「・・・」
『はっ、はい!えーと、ですね・・・ほぼ9割+10割使えますね』
「へー、取ってきたかいとうのがあったな」
『感謝しています』
「とてもそうには思えないが」
『本当ですよぅ!』
ラーメンを食べ終え、扉の向こう側におぼんを置く。
そうだな、暇だから自己紹介でもしよう。
おれは一昨年 日露璃
現在16歳。性別は男。
引きこもり、だ。
「・・・・・・」
『・・・?なんすか?そっちに何かあるんすか?』
「なんもねぇよKOI」
『へんなのー』
こいつは俺のパソコンの中に居るAi
性別の設定は女にしてある。
『何ジロジロ見てんすかこの変態』
「だからなんもねぇよって」
『・・・・・・』
「だぁー、わかった!なんでもいいからもってこいや!!」
『わーい、オートさん大好きー』
「ちっ」
オートは、一昨年、からなる呼び名の一つで、おれが、まだ学校に居たときはそう呼ばれていた
「ったく・・・」
『ねぇオートさん。似合うぅ?』
「似合わねぇよ、お前は・・・もっと、こうだ、な」
『ふえぇッ!?ちょ、ちょっとやめてください!シャクシュアルハラスメントで訴えますよ!!!』
「お前にそんな権利は無い」
『うぅぅぅ』
「あっ、おい!!暴れんじゃねぇよ!!」
『あーれー、お代官様ー』
「・・・・・・」
『あっ、あひゃっあひゃっふっうっひひふっひひひひひひひひひひぅひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!』
「・・・・・・」
『オッ、オートっさんッ!!やめ、て・・・うふひひふ、やめてくださいいいいいいいい』
「・・・・・・」
『はぁはぁはぁはぁ、いきなり何するんですか!もう』
「久々に堪能させていただきました」
『あぁ!もう!いいデザインがこんなになっちゃいましたぁ』
「またコピってくればいいだろ」
『そうでしたね』
「・・・全く」
おれは、外に出る気など無かった。
KOIと一緒にいるのが楽しいから
でも、そんな思想は、ある英雄たちの手で破られることになる




