間話(4)
「そして跪け」
監視長は続ける。
「私はどこに行くつもりも無い。監視長は、どこにも行かない」
「・・・・」
「・・・・」
「だから、もう何を言っても無駄」
「ね、ねぇ監視長さん――」
「私がいつ発言を許可した?」
「えっ」
「現在、ここは私の支配下にある。私は絶対だ。私が許可をするまで誰も何をすることはできない」
「・・・」
「・・・」
「私が、ルールだ」
「うーん」
「・・・」
「何か言いたそうな顔ね」
「発言してもいいかい?」
「いいでしょう」
「ねぇ、監視長さん。君がどうしてそこまでこの『黒鳥の砦』に執心するのか聞かせてくれる?」
「そこまで説明する義理など、私にあるとは思えません」
「言えてるね、でも――」
「でも・・・?」
「俺たちによる『黒鳥の砦』についての依頼はいくつかあるんだよ」
「・・・」
「1つは、さっきの『ペタカトル=ホワイトアウト』さんからの依頼」
「2つ目は、私の勧誘かな」
「ご名答」
「その口ぶりから、これだけとは思えませんね」
「そうだね。3つ目は、この施設を綺麗さっぱり消すこと」
「―――ッ!?」
「びっくりした?そりゃそうだよね。いきなりだもんねー」
「だっ、誰がッ!誰がそんなことを!!」
「ここの囚人全員だよ」
「――――――ッ!!??」
「まぁ言っても罪人だから優先はされないけど、見方によれば立派な依頼人だからね」
「・・・・・・」
「俺たちが、この施設をぶっ壊す権利ってのは――確かに存在するんだよ」
「・・・・・・」
「意外だったかな。実際俺も驚いたよ。まさか囚人が囚われている刑務所を消すことを依頼するなんて」
「うっ、ううううううう」
「焦らないで。俺たちもやりたくはない。こちらの要求に従ってくれれば施設自体には何もしない」
「・・・・・・」
「・・・どうかな」
「くっ・・・条件を、飲みましょう。では、要求の内容の説明を要求します」
「・・・さっき言った通り、君がどうして『黒鳥の砦』にここまで執心するのか」
「ここは、私の家です」
「家・・・?」
「父、『ペタカトル=ホワイトアウト』から逃れるための、家です」
「・・・」
「それに、存在を守らなければならない人もいます」
「・・・誰?」
「・・・・・・案内しましょう」
蒼と狐は無言のまま立ち上がり、彼女についていく
さらに奥。
奥の奥に存在していた階段を下りる。
そこには、一つの独房があった。
「・・・ご機嫌よう。『狂兵器』」
「・・・」
「・・・」
二人は、唖然とした。
一切汚れていない囚人服。
手には6つの手錠、片足に直径1mほどの鉄球が繋がれている。
何よりも驚いたのは、独房の中。
まるでスプレーでも吹き付けたかのような赤。
そして、床に転がっている肉塊。
『狂兵器』と呼ばれたそれは、ゆっくりと顔を起こす。
「・・・ご機嫌よう。『夢喰い』」
と、酷く枯れた声で言った。
「喉が、乾いた・・・カラカラだ・・・・・・飲み物をくれ」
「そうね・・・」
パチン、と指を鳴らす。
独房の隅から、水が流れ出た。
「・・・」
「・・・」
二人は動かない。
否、動けない。
『狂兵器』と呼ばれたそれが発する、殺気のせいで
「彼の名は、闘々龍 萌九頭。彼が、私がここから離れられない理由の一つ」
「・・・萌九頭・・・・・・」
萌九頭は、流れ出ている水を浴びている。
独房の中の赤が流れる。
「やっぱり・・・」
血だ
「もしも、貴方たちが彼も一緒に引き取るのなら、私は貴方たちについていくわ」
「・・・」
「・・・・・・いいだろう」
「いいのか蒼?」
「いいさ、大勢の方が楽しいだろう?」
「そういう考えができるのが羨ましい」
――少なくとも僕には出来ないな
と思った海
「生き返ったよ」
と、独房の檻のすぐそばに居た萌九頭
「・・・・・・」
無言のまま、蒼と狐を見つめる萌九頭。
「『夢喰い』・・・誰だ」
「私たちの新しい居場所よ『狂兵器』」
「居場所・・・か・・・」
「だから、出してあげる」
「そうか・・・・・・」
がちゃり、と独房の扉が開く。
蒼が、息を止めた
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ほら、挨拶しなさい」
「・・・今回は奪わないのか」
「・・・・・・ええ。彼らは受け入れてくれたわ」
「・・・・・・」
萌九頭は蒼と狐の方を見て、頭を下げた。
「・・・ありがとう。恩に着る」
「いや、別に」
「新しい家族・・・嬉しい」
「・・・こちらこそ、よろしくね」
「それでは、制裁探偵事務所とやらに案内させていただきましょうか」
「よろしいのですね」
「ええ」
「・・・」
「では、参りましょうか」
■ ■
後日、監視長と萌九頭は制裁探偵事務所へと入所した。
しかしこれが、最悪のルートへの選択だったということは、誰も知らない
四人目 監視長
五人目 闘々龍 萌九頭




