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監視長の場合(下)

「あ、これ、つまらない物ですが・・・」


(ブルー)が話を切り出した。



裏の刑務所『黒鳥の砦』の地下深くに存在する個室。


そこに、三人の人間が対峙している。



「あら、どうも。饅頭ですか」

「よく分かりましたね」

「知っていましたので」

「はぁ」


パイプ椅子に座る三人。

(ブルー)(フォックス)、そして、監視長。


「では、要件をお聞かせ願います」

「あぁ、えーと、『ペタカトル=ホワイトアウト』という方からの依頼で―――」


「お断りします」


「え・・・?」

目つきが変わる監視長

「相変わらずですね。あの方は・・・どうせ、拉致でもする気でしょう?」

「拉致だなんて、物騒ですよ。ただ単にご同行願いたいのです」

「ですから、お断りします」

「それでは、力ずくでも」


「それじゃあ拉致じゃないですか」


やっと、ようやっと緊張が解れたのか、(フォックス)が話に入った。


「えーと、監視長。何か理由があるのですか?それだけでも聞かせて欲しいのですが・・・」

「何ですかこの生意気な子供は」


プッツゥン


「あーあー、あーあーあーあー言っちゃったな。言っちゃったなおいテメェこの野郎。生意気な子供か、はん、まぁ確かにそうだよな。あんたみたいなどこぞの学級委員長タイプの石頭さんは人を見かけでしか判断できませんものねぇ。そうですよね、そうですとも。なぜか。今現にあなたおっしゃったじゃないですかぁ、ああ?子供、子供、KODOMO!だから何だってんだ!テメェぶち殺されてえのかコラァ!!生意気なのはそっちだろうが!初対面でいきなり上から物を言ってんじゃねぇぞ!こっちが下にまわりゃあいい気になりやがってよぉ、俺がその気になればテメェなんか一瞬で肉塊に早変わりだからな!!三分クッキングならぬ三秒キリングだよ!!!」


「・・・・・・」

「・・・・・・」


どうやら『生意気な子供』プラス『上から目線』プラス『初対面』の組み合わせは(フォックス)にとっては爆弾なのだろう。と(ブルー)は悟った。


「ま、まぁまぁ(フォックス)。落ち着きなよ。監視長さんも悪気があったわけではないですよね?」

「え、えぇ。まさかここまでキレられるとは思いもしませんでした。それに、そんな小さなところにコンプレックスを抱いていただなんて・・・あ、今のは『小さい』と『身長』をかけたわけではありませんよ」

「知っとるわボケェ!!」

「・・・」

「ねぇ、監視長さん・・・改めて聞くけど、何かあるんですか?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「監視長さん」

「はっ、はいなんでしょう!味噌汁は赤味噌派ですが!?」

「聞いてないです」

「はっ、私ってばなんてことを・・・」

「そんな重要なことなんですか・・・」

「いっ、いえいえ!ところで・・・何でしたっけ」

「ですから、改めて、何かあるんですか・・・?」


「ああ、それですか・・・。彼は、『ペタカトル=ホワイトアウト』という人物は、私の敵です」


「敵・・・ですか」

「えぇ。それとも、『父親』とも言うべきでしょうか」

「・・・」

「私とペタカトルは、全てにおいて違っていました」

「違って、いた・・・」

「物の見方や人の扱い方、頭脳、行動力など・・・」

「・・・」

気づけば、(フォックス)は静かに話を聞いていた


「方向の違いで、敵に」

「そういうことです。初対面の方に言うセリフでは無いですよね。謝罪させてください」

「いえいえ」

監視長の言葉に反応した(フォックス)だったが、表情が伺えない。

「そうですか・・・少し待っていていただけますか、上の者に連絡を」

「あ、はい。申し訳ありません」

「いえ、お気になさらずに。これも仕事に一貫です」


そして席を立つ(ブルー)

その場に残されたのは、監視長と(フォックス)のみとなった。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・あ、あの」

「はい」


発言をしたのは、意外にも監視長だ。


「先ほどは、本当に申し訳ありませんでした。心から、謝罪いたします」

「別にいいよ、気にしてない」

「え、気にしてないというのは私の発言ですか?それとも身長ですか?」

「・・・君、さては天然だな」

「て、んねん・・・?って何ですか?」

「いや、別にいいよ」


はぁ。


「ところで、監視長さん。貴方には、ロマンがありますか?」

「ロマン・・・ですか」

不意の質問に戸惑う監視長。

その姿に、(フォックス)は少なからず愉悦を感じていた。


「ロマン・・・と言えば、私はこの部屋の通り、拷問器具にロマンを感じます」

「・・・そうですか」

「それが何か?」

「・・・あれ、これって僕が説明しなきゃいけないのかな?」

「?」

「いいですよ、説明しましょう」



~スタイルなどの説明中~



「―――っ信じられるわけがないでしょう!!そんな馬鹿げた話!」

「デスヨネー」

「そっそんなのが私にもある可能性があるというのですかッ!?」

「え・・・?」


ソワソワしている。

期待している。

まさか


「・・・少なくとも僕にはあります。証拠は、実際にご覧入れましょう」

「・・・お、お願いします」

「・・・」


なんだこれ。

めちゃくちゃ楽しい!


「えーと、じゃあ・・・」


(フォックス)が向かったのは部屋の隅にある『電気椅子』だ。


「座るんですか?」

「んあわけあるかいッ――!」

的確にツッコミを入れ、『電気椅子』の前に二人が座り込む。


そして、


「見ていてください」

「・・・はい」


(フォックス)は取り出したマイナスドライバーを『電気椅子』の繋ぎ目にそっと置いた。


3秒。

3秒で、『電気椅子』は全てのパーツに分解され、原型を留めてはいなかった。



「・・・ふぅ」




3秒。

3秒で、『電気椅子』のありとあらゆるパーツ組み立て、原型を作り出した。


「・・・」

「す、ご・・・」

唖然とした声が耳元で囁かれる。

ん?

耳元・・・?


「すっごい、すごいじゃないですか!狐さん!!」

「ありがとうございます・・・って、狐さん・・・とは」

「それは、『フォックス』って日本語で狐でしょう?」

「そうですけど・・・」

「私は感動しました!!」

「そうですか」


このタイミングで、個室のドアが開いた。


「あー、やっぱ地下って圏外だったよ。地上まで出るの大変だったー」

(ブルー)が、扉を開けて見たものは、


(フォックス)に抱きついている監視長だった。


「・・・やるなこの色男」

「違います。断じて」


(フォックス)は監視長に断ってから、(ブルー)の元へ


「それで、何か言われましたか」

「標的にスタイルが無ければ撤退。あれば勧誘」

「そうですか」

「でも、後者のほうが確率が高いね」

「なんでですか」

「だって、ほら」



(ブルー)が指差したのは、さっきとはまるで別人の監視長だった。



「あれ、スタイル以外で説明できる?」

「できるとすれば、キレたか、多重人格か」

「でも、見なよ」


「何をコソコソと話しているんですか?男ならハッキリと堂々と面を向かって喋ったらどうです」


「・・・」


「聞きなさい」


そんなことを言って、(ブルー)達の正面にあるパイプ椅子に登り




「私は監視長。その他の誰でもない。『断愛監視ノット・ラブ・モニター』の『黒鳥の砦』総合監視長だ」




「・・・・・・」








「とりあえず、屈しろ」








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