罠師の場合(下)
「・・・っ!」
時が止まったかに感じた
「お、お前・・・が・・・」
そこに居たのは、ゴスロリの衣装に身を包み、ぺたんと尻餅をついている・・・美少女だったからだ
「わな、し・・・か」
安定した口調が戻ってこない
「―――くっ!!」
ばっ、と勢いよく飛び出し、そのまま逃走した
「あっ、おい!!」
バウゥン
「逃がすか子兎」
紅の助けが入った
「う・・・うぅぅ・・・」
泣き出しそうな声になった
「ううううぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・なんてね」
右手にあったスイッチを押した
「よっ――」
罠師はそのまま茂みに消え去った
そこから、大変だった
紅に向け、矢が飛んでいく
難なく打ち落とすが、次は左右同時に
一つしか打ち落とすことができず、一つは肩をかすめた
「紅ッ!!」
「案ずるな、気を抜くなッ!!!」
俺のスタイルの使用条件は整っているけど・・・
「・・・英雄、やばいぞ」
「ええ」
「私のスタイルが使用できないッ!」
「・・・たぶん大丈夫です」
「ああ?」
「紅、俺の盾になってください」
「・・・は?」
そう言って紅の後ろへ周り、抱きしめた
「だ、大胆だな・・・」
「こうするしか、ないようですッ!!」
もう紅の体の支配権は俺にある。
だから、
「全ての矢を、躱しますッ!!!」
「・・・できるのか」
「ごちゃごちゃ言ってる暇はないでしょう!!」
見れば、四方八方にギラリと光る矢が
恐らく、一斉に飛んでくる
「行きます」
「待て」
「え?」
「こうした方がいいだろう」
「え、ちょちょっと」
紅がくるりと体を回転させる
俺と彼女が、面を向かって抱き合う形になった
「お?照れてんのか?ウブだなぁ」
「ちょっとうるさいです」
「はん」
集中する
「・・・飛びますよ」
そう言った後、すぐに始まった
両手を繋いだまま、俺は無数に飛んでくる矢に足を付き、飛び跳ねる
「すげぇじゃねぇか」
「あなたほどでは、ないですよ」
初の試みである。
成功するかどうかは、五分五分だ
「紅、罠師はどこへ行きましたか」
「南南東」
「分かりました」
一度地面に足をつく
そして、思いっきり踏ん張り
跳んだ
ざっと、70Mは跳んだ
「ひゅ~、かっくいい」
「恐縮です」
「じゃあ行くぞ、いつまで抱きしめてんだ」
「あ、すみません」
恥ずかしかった
「ふん、ガキのくせに」
「何か言いましたか」
「なんにも~?」
歩く
そこからは、罠は一つも見られなかった
「そういえば紅」
「なんだよ」
「どうして罠師の居場所とか逃げた方向とか分かるんですか」
「私はサバゲーが好きなんだよ」
「そうですか」
「ところで英雄」
「なんですか」
「お前よくあんなに跳べるよな」
「今はあれで精一杯ですよ」
「そうなのか」
「鍛えれば100行くかもしれませんね」
「末恐ろしいこった」
お互いに質問を一通りぶつけ合った後、森をぬけた
いや、正確には更地に出た
中心に、小屋を見つけた
「あそこだな」
「危険ですよ」
「だーいじょうぶ」
「はぁ」
「もっしもーし!?どなたかいらっしゃいませんかーー!!」
ドンドンと大げさにも程がある力で扉をノックする
ギシギシと扉が悲鳴をあげていた
「入るぞこの野郎ッ!!」
ガタン、ガタン
開かない
「ッ!こ、の、や、ろッ!!」
ガタコン、ガタコン
開かない
「なんで開かないんだこの!!」
と、紅が力任せに扉を蹴ろうとしたとき
「その扉はスライド式ですよ」
と、声が聞こえた
その声の通りに扉を右へ押す。
しかし、開かない
今度は左に押す。
しかし、開かない
「やっぱり蹴り破るか」
「いや・・・」
俺は扉の下に手を掛ける
そして、思い切り持ち上げた
ガララ
簡単に扉は開いた
「・・・」
「・・・」
「・・・いらっしゃい。お茶でも出しましょう」
案の定、そこにいたのはゴスロリの衣服に身を包んだ、美少女だった




