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「よーし!」
黄瀬がパンッと手を叩く。
「衣装合わせも終わったことだし!」
「最後にみんなで記念写真撮ろうぜ!」
「賛成!」
青嶌さんが元気よく手を挙げる。
「文化祭前日って感じする!」
「では、先生にお願いしましょう。」
小紫さんが北条先生へ声を掛ける。
「先生。」
「写真をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「おう、任せろ。」
北条先生は笑いながらスマートフォンを取り出した。
「じゃあ並べ並べ!」
北条先生が手を叩く。
「男子後ろ!女子前!」
「先生!」
黄瀬が勢いよく手を挙げる。
「俺、青嶌さんの隣がいい!」
「……は?」
青嶌さんが思わず聞き返す。
「なんでよ。」
「ん?」
黄瀬はキョトンとした顔をすると、悪びれもせず答えた。
「好きだから?」
「はぁ!?」
青嶌さんは思わず一歩後ずさる。
「そんなサラッと言う!?」
「え?」
「ダメだった?」
「ダメとかじゃなくて!」
「もっとこう……あるでしょ!」
「段階とか!」
黄瀬は腕を組んで真剣に考える素振りを見せる。
「なるほど。」
「じゃあ、友達からお願いします。」
「そういう問題じゃない!」
教室中がどっと笑いに包まれる。
北条先生は呆れたようにため息をついた。
「黄瀬。」
「写真撮るだけで何を告白してる。」
「いやぁ、つい。」
「つい、じゃない!」
青嶌さんは顔を真っ赤にしながら黄瀬の背中を軽く叩いた。
「もう!」
「写真終わるまで喋んな!」
「えー。」
「それは困る。」
「困っとけ!」
再び教室に笑い声が響き渡った。
「よーし、いい写真撮れたぞ!」
北条先生がスマートフォンを確認しながら満足そうに頷く。
「みんないい笑顔だ。」
「文化祭が終わったら、この写真もクラスの思い出として配るからな。」
「やったー!」
教室から歓声が上がる。
「それじゃあ今日はここまで!」
「戸締まりだけ確認したら解散!」
「「「はーい!」」」
俺たちは最後の片付けを始めた。
机や椅子の位置を整え、忘れ物がないかを確認する。
教室の照明を消すと、夕日に照らされた大正喫茶だけが静かに浮かび上がっていた。
「いよいよ明日かぁ。」
黄瀬が大きく伸びをする。
「なんか緊張してきた!」
「黄瀬君が緊張することなんてあるんですね。」
小紫さんが少し驚いたように言う。
「あるある!」
「失敗して追い出されたらどうしよう!」
「それは黄瀬君ならありそう。」
青嶌さんがさらっと言うと、
「ひどっ!」
黄瀬が大げさに肩を落とす。
神白さんも口元に手を添えながらくすりと笑う。
北条先生は教室のドアを閉めると、俺たちへ振り返った。
「今日は早く帰ってしっかり休め。」
「明日は朝から忙しいぞ。」
「「「はい!」」」
俺たちは職員室前で先生と別れ、それぞれ荷物を持って昇降口へ向かう。
夕焼けに染まる校舎を背に、六人で校門を出た。
「いやぁ、いよいよ明日っスね!」
黄瀬は大きく背伸びをしながら笑う。
「楽しみすぎて今日寝られるかな!」
「寝坊だけはしないでくださいね。」
小紫さんがくすりと笑う。
「大丈夫大丈夫!」
「俺、こう見えて本番には強いから!」
「その自信はどこから来るのよ。」
青嶌さんが呆れたように肩をすくめる。
「日頃の行い!」
「それを自分で言う?」
そんな他愛もない会話を交わしながら、俺たちは神白さんの屋敷へ向かう。
文化祭前日ということもあり、どこか皆の足取りは軽かった。
屋敷へ到着すると、大きな門がゆっくりと開く。
「皆さん、本日もありがとうございました。」
近衛さんが穏やかな笑みで俺たちを迎えた。
「いえ、いつも通りですから。」
俺が答えると、近衛さんは小さく頭を下げる。
神白さんも俺たちへ向き直った。
「皆さん。」
「明日はいよいよ文化祭ですね。」
「はい。」
「皆さんと一緒に迎えられることを、とても楽しみにしています。」
そう言って柔らかく微笑む。
「俺も楽しみ!」
黄瀬が真っ先に手を挙げる。
「絶対成功させような!」
「はい。」
神白さんは嬉しそうに頷いた。
「それでは、また明日。」
「あぁ。」
「また明日。」
神白さんが屋敷へ入っていくのを見届けると、俺たちは再び歩き出した。
「さて!」
黄瀬が両手を頭の後ろで組む。
「明日は大忙しだ!」
「今日は早く寝るぞー!」
「黄瀬君がそれを守れたら奇跡ですね。」
小紫さんがさらりと言う。
「ひどくない!?」
「俺だって寝る時は寝る!」
「その言葉、信用できないなぁ。」
青嶌さんが笑い、またいつもの賑やかな空気が戻る。
夕焼けに染まる帰り道。
明日への期待を胸に、俺たちはそれぞれの家路へと向かった。




